IR区域整備認定申請受付の9か月延期で各自治体の動き

JaIR編集委員 玉置泰紀

 国土交通省観光庁が9日、IR(統合型リゾート)区域整備計画の認定申請期間(都道府県・政令市から国への申請)を、昨年公示した期間(2021年1月4日~2021年7月31日)から、2021年10月1日~2022年4月28日まで9か月延期することを盛り込んだ公示を行いパブコメ募集を開始した。ようやく、具体的な道筋が見えてきたともいえるが、確実にスケジュールが後ろ倒しになることも明確になったため、各自治体の明暗も浮かび上がってきた。
 
 

IR申請表明中の4自治体がそれぞれコメントを発表、明暗分かれる状況

 観光庁の公示を受けて、IR申請の表明をしている4自治体の反応を地元メディアなどが伝えてきている。提案審査書類(RFP)を開始している大阪府・市和歌山県は、提出期限をさらに遅らせる。まだ、開始できていない横浜市長崎県にとっては、時間的な余裕ができたともいえる。大阪都構想の住民投票や横浜市長選などの政治日程もにらみながら、政府の日程が明確になったことから、ポストコロナの経済対策も踏まえて取り組みの再構築が急がれる。


◎大阪府・市 「妥当な判断」「ありがたい」
 吉村洋文・大阪府知事は、NHKなどによると、「新型コロナウイルスの影響によるものなので、1年程度の延期は妥当な判断だ。国が新たに定める期間で必要な手続きを進めたい。(開業時期について)2025年の大阪・関西万博と同時開業だと相乗効果があると思ってきたが、準備期間を考えると難しい。それよりも1年から2年程度、遅れることになると思う。長期的な成長戦略として、世界最高水準のIRをぜひ大阪に誘致したい」とコメント。松井一郎・大阪市長も延期について「ありがたい」と受け止めた。

 元々、大阪府・大阪市IR推進局は、提案審査書類(RFP)の提出期限について、「当面の間延長する」ことを発表しており、MGMリゾーツ・インターナショナル、オリックスとの交渉もほぼ停滞していることから、今回の延期は織り込み済みと思われるが、政府の態度が保留されていた状態から、はっきり日付が出たことを前向きに受け止めている。

 大阪府・市では、「大阪都構想」の是非を問う住民投票が12日、告示されており、投開票は2020年11月1日。可決されると、2025年1月1日に政令指定都市の大阪市が廃止され、「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」の4つの特別区に再編される。今回は前回の住民投票で敗れた橋下徹氏(当時の大阪市長)のように、即時引退することは吉村知事も松井市長も市内で任期を全うすると表明しているが(松井市長は負けたら任期終了後引退するとしている)、今後のIRの進展にも大きく影響する住民投票となる。


◎横浜市 「市民の皆さまにもご理解をいただき」「取り組みを進める」
 林文子・横浜市長の任期満了は2021年8月29日で、今回、認定申請期間が2021年10月1日からになったことで、在任期間中に申請することは出来なくなった。仮に、次の市長選挙にも打って出ることになれば、IRは大きな争点になるだろう。

 林市長のコメントは「国から示されたスケジュールはタイトだが、市民の皆さまにもご理解をいただき、横浜におけるIRを実現できるよう取り組みを進める」。今回の観光庁の公示については「自治体や事業者などの状況を踏まえ総合的に判断したもの」と受け止めていて、コンセプトの提案があった事業者に対する追加のヒアリングを行っていく。やはり、「明確なスケジュールが出た」こと自体は前向きにとらえているようだ。


◎和歌山県 「大変不満で遺憾」「万博までに完成できると思っていたが」
 和歌山県はRFP提出締切を49日延期して、10月19日にRFP提出締切、2021年1月に事業者決定を予定していたが、今回の延期の公示で、「基本方針(案)の修正を踏まえた実施方針及び募集要項等の修正や、それに応じた民間事業者の提案内容の修正機会を確保するための期間が必要なこと、また、基本方針の確定までにはなお一定の期間を要することなどを踏まえ」、提出期限の延期を発表した。新たな提出期限は、「基本方針(案)の内容を精査した上で、後日、発表」するとしている。

 和歌山・仁坂吉伸知事は、関西テレビなどによると、「大変不満で遺憾。このタイミングで延長し、(基本方針の)中身も4つくらい追加するだろうということになって、それなら(国に)『早くやってよ』と」とコメントしており、落胆を隠せない。

 紀伊民報などによると、仁坂知事は「国が定めた手続きに従ってやるしかないので、変えられた手続きに沿ってやるしかない。約束したら、その通りきちんとやってください。何度も繰り返すようでは困る」とコメント。和歌山県が他の候補地に比べて有利であった早期の開業については、2025年の大阪・関西万博開業前に間に合う唯一のIRとなる可能性があったが、「認定されれば、万博までに完成できると思っていたが、クエスチョンマークが付いてきた。日本にとっても残念なことではないか」と話している。


◎長崎県 「準備を着実に進めてまいります」「より一層丁寧に説明」
 長崎県から公式に出ている中村法道・長崎県知事の公式コメントは以下の通り。
「令和3年1月4日から7月30日までとされていた区域整備計画の認定申請期間を令和3年10月1日から令和4年4月28日までとする変更案が示されました。また、IR事業者との接触ルールや感染症対策などのIR区域・施設の安全確保に向けた対策の強化についての考え方も示されたところです。 現在、本県では、IR事業者の公募・選定に向けた準備を進めているところであり、今回の変更内容も踏まえ、改めて事業者の意見も伺いながら、区域認定申請に向けた準備を着実に進めてまいります」

 また、NHKなどによると、候補地のハウステンボスのある佐世保市の朝長則男市長は「政府は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うIR事業者への影響や各自治体の状況などを丁寧に確認し、慎重に判断したのだと拝察する。今回の変更内容を踏まえ、県が進める事業者の公募・選定の準備に協力するとともに、市民に対してより一層丁寧に説明し、理解を得ながら引き続き誘致に向けた取り組みを推進していく」とし、政府の予定が明確化したことから、より着実に進めていくことを表明している。


◎検討中の自治体
 上記4エリアのようにIRに関して申請を表明している自治体以外にも、検討中の自治体はいくつかあり、中でも注目は東京都愛知県。今回、9か月延期になったことで、出遅れていた自治体も巻き返すチャンスが出てきたともいえる。現在は新型コロナ感染症対策に追われているが、防疫と経済のバランスは常に問われている。中長期で考えたときに、従来と同じわけにはいかないかもしれないが、インバウンドや富裕層ビジネスなどは改めて検討される課題になる。


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