カジノ管理委員会の7~9月の活動内容を読み解く

JaIR編集委員 玉置泰紀

 カジノ管理委員会は今年の1月7日に発足以来、23回の委員会を開催しているが、7~9月の直近3か月にも6回開催されている。IR整備法の公布から2年の7月26日までに策定・公布されると見られていた基本方針は現状、無期延期になっているが、この基盤になるものの一つがカジノ管理委員会規則だ。カジノライセンスや、カジノで可能なゲームの種類、クレジット制度など運営ルールをここで決めて、これに基づいて基本方針も固まっていく。9月3日の委員会では、海外のコロナ対策が討議されており、今の状況に沿ったアップデートがされているようだ。

直近では、アメリカ、アジアの新型コロナ感染症対策も討議されている

 カジノ管理委員会は、内閣府の外局として設置された合議制の行政委員会である。内閣総理大臣の所轄下になる。委員会は、委員長と委員4人(うち2人は非常勤)で、任期は5年で再任が可能。委員長と委員は、衆・参両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。委員長は元福岡高等検察庁検事長の北村道夫氏。

 カジノ管理委員会は発足直後の1月10日に第1回が開催され、1月に3回、2月に3回、3月に4回、4月に1回、5月に2回、6月に4回、7月に3回、8月に1回、9月に2回の計23回開催されている。

 注目は9月3日に開催された第22回で、「最近の主な諸外国のカジノ施設の状況」について、総務企画部長から、最近の新型コロナの世界的な感染拡大の中での主な諸外国のカジノ施設の状況についての報告があり、意見交換が行われている。基本方針の策定の延期について、現在の新型コロナ感染症対策を織り込んだものになると言われており、委員長、各委員に対して、最新情報をインプットする意味があったと思われる。

 当日は、「最近の主な諸外国のカジノ施設の状況」という4ページの説明資料が配られていて、米国とアジアに分けてそれぞれ1ページの説明があり、最後の1ページはまとめた表になっている。

カジノ管理委員会ホームページで公開されている9月3日開催の委員会で配布された資料から

 8月31日現在の資料になっており、米国編では、ネバダ州、ニュージャージー州、マサチューセッツ州をピックアップしつつ、新型コロナウイルスによる営業停止や営業再開の情報が載せられている。アジア編は、マカオ、シンガポール、韓国がピックアップされており、同様の情報が日付入りで紹介されている。最後のページは「カジノ施設における感染症対策の主な取組例(米国・マカオ)」という纏めの表になっていて、ネバダ州、ニュージャージー州、マサチューセッツ州、マカオの新型コロナ対応について、従業員・顧客への取り組み、ゲーム機器・ゲームテーブルの対応、ゲーミングエリアの収容人数、ソーシャルディスタンス、消毒などについて紹介されており、今後の日本のIRのあり方の参考になるようになっている。

 今のところ、9月10日に開催された第23回が最後で、50分間と短めだった。監督調査部長より、カジノ事業等の規制の論点整理(カジノ行為業務の状況等の報告、事業者等に作成・保存を義務付ける記録の保存期間及び保存方法、カジノ事業の免許等の欠格事由)の説明があった。

 23回のカジノ管理委員会の公表されている開催状況を見ている限りでは、総理大臣交代やIRの担当官庁の観光庁の人事異動などもありながら、着実に進められていることが分かるが、やはり、基本方針策定に向けて作業ペースが上がっている感じは受けない。菅義偉内閣のIRの優先順位もあるだろうが、今しばらくは様子見が続くのではないだろうか。


■カジノ管理委員会ホームページ 委員会開催状況
https://www.jcrc.go.jp/activity/holding.html

■関連資料データベース
https://jair.report/archive/

カジノ管理委員会・第23回(令和2年9月10日)議事主旨
https://jair.report/archive/348/

カジノ管理委員会・第22回(令和2年9月3日)配布資料
https://jair.report/archive/346/

カジノ管理委員会・第22回(令和2年9月3日)議事主旨
https://jair.report/archive/347/

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