MGM・オリックスコンソーシアムの提案内容を見る

JaIR編集委員 玉置泰紀

 2021年9月28日、大阪府・市が夢洲地区のIR(統合型リゾート)の設置運営事業予定者として選定したMGM・オリックスのコンソーシアムだが、同時に提案概要も公表されているので、中身を一望しておこう。
全景のイメージパース

総延床面積約77万㎡に展開するWOW(新鮮な驚きや感動)

 事業方針・コンセプトは以下の通り。水都大阪という街の特性を活かし尊重しつつ、経済の大きなハブ・エンジンにしていこうという意思が伝わる。
 
■ビジョン:大阪・関西に ”WOW" Nextを
・WOW(新鮮な驚きや感動)の体験。
・”世界最高水準”の”成長型”IRを地域とともに創り育てる。

■開発コンセプト:”結びの水都” 
・あらゆるものを結ぶ結節点としての大阪IR(結び)
・水都大阪の伝統・文化・精神を継承(水都)

■日本の観光先進国化と持続的な経済成長への貢献
■「アジアの中心となる国際競争力のあるグローバル都市・大阪」を実現するエンジンとなる。


 続いて事業効果は以下になる。経済波及効果はIR基本構想を上回る見込みで、建設時が約1兆2,400億円で、運営時約7,600億円/年を超える効果があると見ている。
 
・初期投資額  約1兆800億円(税抜き)
・年間来場者  約2,050万人(国内約1,400万人、国外約650万人)
・年間売上   約5,400億円(ノンゲーミング約1,100億円、ゲーミング約4,300億円)
・雇用者    約15,000人
・納付金・入場料(府市合計) 約1,100億円/年(納付金約770億円/年、入場料約330億円/年)

 施設概要は以下の表に示されていて、会議場、展示施設はIR基本法を満たした規模で、展示施設には「関西イノベーション・ラボ」という研究施設もある。また、魅力増進施設には、「ガーデンシアター」「三道体験スタジオ」「関西アート&カルチャーミュージアム」といった興味深い名前が挙がっている。
施設概要

 MICE施設は、世界最高水準のオールインワン施設として、グローバルなセールス・プロモーション活動に活用することを想定している。魅力増進施設は「日本の観光魅力のショーケース」形成を目指し、送客施設は約1.4万㎡からなり、関西ツーリズムセンター、バスターミナル、フェリーターミナルから構成される。VRなどの先進技術を活用したショーケース機能、専用人材やテクノロジーを駆使したコンシェルジュ機能を持たせる。
 宿泊施設は、約28.9万㎡、客室約2,500室からなり、エンターテインメントホテル、多世代型アクアリゾートホテル、VIP向け最高級ホテルの3タイプを想定している。
宿泊施設のイメージパース
 エンターテインメントやそのほかの施設でも、MGMの実績のある世界水準のショーはもちろん、大阪IRならではのオリジナルコンテンツの創出も図っていく。施設全体の要のような、中心部の結びの庭では、非日常を体験できるリゾート空間を考えているようだ。
結びの庭
 また、2025年の万博後の開業なので、万博のレガシーを継承して、脱炭素・循環型社会の実現やSDGs達成に貢献できる世界で最もサステイナブルなIRを目指す。エネルギーの地産地消や環境負荷の軽減、観光ICT、IoTを活用した防犯防災、モビリティや交通の高度なマネジメントを実現していく。

 提案概要では、ギャンブル依存症や治安・地域風俗環境対策、危機管理・防災、感染症などの懸念事項についても積極的に対応することを明記。2020年代後半には、公民連携して早期開業すると結んでいる。
 

MGMとオリックスもコメントを発表

 今回の設置運営事業予定者選定についてMGMとオリックスはそれぞれコメントしている。まずはMGMリゾーツ・インターナショナルの社長CEOであるビル・ホーンバックル氏だ。

「大阪にワールドクラスの統合型リゾートを開発するという目標を達成するために、大阪府および大阪市が包括的で熟考された選定プロセスを実施し、私たちが大阪のパートナーに選ばれたことを大変光栄に思います。

 日本ほど、ツーリズムとホスピタリティの未来が明るく、楽しみな場所はなく、大阪はその未来の始まりにふさわしい場所です。大阪をワールドクラスの観光地として確立し、ゲートウェイとしてのIRを通じて、日本の豊かな文化と歴史を世界にアピールできる機会に一歩近づけたことは、非常に喜ばしいことです。

 今後、大阪府および大阪市と緊密に連携し、大阪の皆様が誇りに思うことのできる、象徴的なIRの実現に向けて尽力してまいります」

 オリックスもWebサイトでコメントを寄せている。

「オリックス株式会社(本社:東京都港区、社長:井上 亮)は、本日、MGMリゾーツ・インターナショナル(本社:米国ネバダ州・ラスベガス、社長:Bill Hornbuckle、以下「MGM」)とともに中核企業として形成するコンソーシアムが、大阪府および大阪市が実施する大阪・夢洲地区特定複合観光施設設置運営事業(大阪IR)における事業者選定手続きにおいて、設置運営事業予定者に選定されましたので、お知らせします。

 オリックスとMGMは、本事業を通して、関西地域、ひいては国の観光および経済の持続的成長に貢献していきたいと考えております。MGMとのパートナーシップのもと、事業実現に向けて今後のプロセスに尽力してまいります」

 NHKなどによると、大阪府の吉村洋文知事は、(これまで)「暗さが目立ったベイエリアで2025年に万博が行われ、その後は世界最高水準のIRを整備する」とコメント。湾岸地域の活性化により、「高い経済波及効果が見込まれ、成長のエンジンとしたい」と期待を述べている。

■関連サイト

報道発表資料 大阪・夢洲地区特定複合観光施設設置運営事業 設置運営事業予定者の選定について
https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/irsuishin/0000545519.html

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