九州・長崎IRの立地自治体である佐世保市は、長崎県と歩調をとり、10年以上前からIRの実現に注力してきた。人口減少に悩む一地方都市である佐世保市から見たIRはどのような存在なのか? 佐世保・長崎の魅力、カジノ・オーストリア(CASINOS AUSTRIA INTERNATIONAL JAPAN)の計画概要などを含め、佐世保市役所 IR推進室 室長 堀居 隆二氏に話を聞いた。(以下、敬称略 インタビュアー JaIR編集委員 玉置泰紀)
玉置:まずは佐世保とIRの関わりについてお聞かせください。
堀居:IRは、2007年に地元経済界が中心となって西九州統合型リゾート研究会が発足されたことがきっかけです。2007年はちょうど朝長則男佐世保市長が初当選された年ですので、まさに地元経済界と一体となって進めてきた経緯があります。
ほとんどの先進国でカジノは合法化されていますし、海外の観光客を誘致するには、やはり世界共通の娯楽産業が必要になってきます。今で言うインバウンドやナイトタイムエコノミーといった観光のトレンドに乗るためにも、IRは必要な観光資源だと思っています。
玉置:MICEもきちんと計画に入っていますね。
堀居:最大6000人規模の大会議場を中心に、トータル1万人以上の方が参加できる日本一クラスの国際会議場が提案されています。展示場に関しても、2万㎡以上の広さが実現すれば、九州一です。先だって長崎には出島メッセというMICE施設がオープンしたのですが、こちらは九州・長崎IRと比べるとコンパクトですので、両者を連携することで、長崎県内でさまざまなイベントが開催できるはずです。
効果に関しては雇用や集客といった面もありますが、一番大きいのは地元の子供たちが国際規模のMICEを身近に感じられるところだと個人的に思っています。地方で大きな国際イベントを体感・体験できることが、子供たちの視野を世界に広げ、未来につながるはずです。
玉置:予定している敷地はハウステンボスの一部ですね。
堀居:はい。実を言いますと、ハウステンボスはすでに完成された日本有数のテーマパークですので、当初はハウステンボスにカジノを足せば、充分IRとして機能するのではないかと考えていました。しかし、国の制度設計において大規模なMICEや宿泊施設が必要となったため、今回はハウステンボスの敷地の一部を譲り受けて、国の制度にあうIRを作っていこうという計画になりました。
ハウステンボス、そして親会社であるH.I.Sも、佐世保のために、そして未来のために経営として大きな決断をしてくれたと思っています。
玉置:あくまで両者は別物ですが、両者で連携するというイメージですね。
堀居:ハウステンボスとIRはおそらくお客様の入場口は別々になると思いますが、両者でうまく連携してもらいたいと思います。
ご存じのとおり、ハウステンボスも過去2度ほど経営的に厳しい時期がありましたが、今年30周年を迎えます。今まではあくまで国内標準の観光施策でしたが、このIRをきっかけに世界標準の観光にシフトするターニングポイントになると考えています。
玉置:今回のIR誘致に至る佐世保としての課題感を教えてください。
堀居:佐世保はもともと造船のまち。大手の造船所があったため、基幹産業として市を支えてきた時代もあります。しかし、国際的な競争も激しくなっており、産業構造も変わってきています。
地方都市はどこでもそうですが、人口減少が喫緊の課題。長崎県も毎年1万人以上の人口が流出しており、特に若年層の転出超過は深刻な問題です。こうした若い人たちに戻ってきてもらうための仕事がまずは必要になるんです。今回、佐世保市が観光という分野で光明を見いだしたのがIR。日本で最大3箇所しかできない、差別化できる観光コンテンツにチャレンジしようというわけです。
玉置:既存の施策をより強化するための観光コンテンツですね。
堀居:佐世保の観光はやはりハウステンボスと九十九島がツートップになると思うのですが、これまで観光施策で地元にお金が落ちる仕掛けにならなかったのも事実です。その点、IRという仕組みは佐世保の観光施策とも合ってますし、IR整備法の理念にも合致するものです。客単価が上がらないというインバウンドの課題に対して、長期滞在を実現する仕組みとしても期待しています。
玉置:他の地域と違うのは、九州全体という広域の支持を得ていることです。
堀居:長崎県と佐世保市でIRを進めて行くにあたって、最初から共通していたのは「九州全体から支持していただく」というメッセージです。これはまさに自然発生的に生まれたものじゃないでしょうか。県知事にご尽力いただいて、九州の知事会で合意形成し、九州戦略会議の場では九州経済連合会からの支持を受けることができました。九経連の麻生泰名誉会長からも「長崎と佐世保ががんばっているんだから、みんなで応援してやろうじゃないか」というありがたいお言葉もいただきました。
ほかにも九州商工会議所連合会や九州県議会議長会などからもご賛同いただき、昨年の4月には九州IR推進協議会(KIRC:カーク)を設立することができました。九州全体で応援していただける土壌ができたのは非常に大きいと感じますし、現時点では、他の候補地では真似のできない連携だと考えております。いままさに、このKIRCで、IRにお越しになる観光客の皆様に、九州をいかに周遊していただくか、九州独自のキラーコンテンツを作っていくかなどを議論しています。
玉置:空路や電車はもちろんですが、九州内はとにかく高速道路網が充実しているので、便利ですよね。私も福岡に住んでいたので、九州は車でどこにでも行けるなあと思った記憶があります。
堀居:長崎は入口でもよいですが、出口でもいい。長崎のIRで遊んで、大分の温泉を楽しんで、鹿児島で観光して帰るとか、逆に熊本で観光して、IRで楽しんで長崎から帰るとか。九州は歴史も食も自然もありますので、テーマ性を持って楽しめると思います。
もう1つ大きいのは、九州としての地元調達や地産地消をどのように進めていくのか?です。総事業費で3500億円規模、年間のべ来訪者数840万人という規模のIRとなると、佐世保市や長崎県だけで受け止めるのは難しいのも事実です。地元調達100%というカジノ・オーストリアの目標に対して、オール九州で応えられるような形が望ましいと思います。
30周年を迎えるハウステンボスとIRで世界標準の観光にシフト
玉置:まずは佐世保とIRの関わりについてお聞かせください。
堀居:IRは、2007年に地元経済界が中心となって西九州統合型リゾート研究会が発足されたことがきっかけです。2007年はちょうど朝長則男佐世保市長が初当選された年ですので、まさに地元経済界と一体となって進めてきた経緯があります。
ほとんどの先進国でカジノは合法化されていますし、海外の観光客を誘致するには、やはり世界共通の娯楽産業が必要になってきます。今で言うインバウンドやナイトタイムエコノミーといった観光のトレンドに乗るためにも、IRは必要な観光資源だと思っています。
玉置:MICEもきちんと計画に入っていますね。
堀居:最大6000人規模の大会議場を中心に、トータル1万人以上の方が参加できる日本一クラスの国際会議場が提案されています。展示場に関しても、2万㎡以上の広さが実現すれば、九州一です。先だって長崎には出島メッセというMICE施設がオープンしたのですが、こちらは九州・長崎IRと比べるとコンパクトですので、両者を連携することで、長崎県内でさまざまなイベントが開催できるはずです。
効果に関しては雇用や集客といった面もありますが、一番大きいのは地元の子供たちが国際規模のMICEを身近に感じられるところだと個人的に思っています。地方で大きな国際イベントを体感・体験できることが、子供たちの視野を世界に広げ、未来につながるはずです。
玉置:予定している敷地はハウステンボスの一部ですね。
堀居:はい。実を言いますと、ハウステンボスはすでに完成された日本有数のテーマパークですので、当初はハウステンボスにカジノを足せば、充分IRとして機能するのではないかと考えていました。しかし、国の制度設計において大規模なMICEや宿泊施設が必要となったため、今回はハウステンボスの敷地の一部を譲り受けて、国の制度にあうIRを作っていこうという計画になりました。
ハウステンボス、そして親会社であるH.I.Sも、佐世保のために、そして未来のために経営として大きな決断をしてくれたと思っています。
玉置:あくまで両者は別物ですが、両者で連携するというイメージですね。
堀居:ハウステンボスとIRはおそらくお客様の入場口は別々になると思いますが、両者でうまく連携してもらいたいと思います。
ご存じのとおり、ハウステンボスも過去2度ほど経営的に厳しい時期がありましたが、今年30周年を迎えます。今まではあくまで国内標準の観光施策でしたが、このIRをきっかけに世界標準の観光にシフトするターニングポイントになると考えています。
幅広い観光の需要にオール九州で対応する
玉置:今回のIR誘致に至る佐世保としての課題感を教えてください。
堀居:佐世保はもともと造船のまち。大手の造船所があったため、基幹産業として市を支えてきた時代もあります。しかし、国際的な競争も激しくなっており、産業構造も変わってきています。
地方都市はどこでもそうですが、人口減少が喫緊の課題。長崎県も毎年1万人以上の人口が流出しており、特に若年層の転出超過は深刻な問題です。こうした若い人たちに戻ってきてもらうための仕事がまずは必要になるんです。今回、佐世保市が観光という分野で光明を見いだしたのがIR。日本で最大3箇所しかできない、差別化できる観光コンテンツにチャレンジしようというわけです。
玉置:既存の施策をより強化するための観光コンテンツですね。
堀居:佐世保の観光はやはりハウステンボスと九十九島がツートップになると思うのですが、これまで観光施策で地元にお金が落ちる仕掛けにならなかったのも事実です。その点、IRという仕組みは佐世保の観光施策とも合ってますし、IR整備法の理念にも合致するものです。客単価が上がらないというインバウンドの課題に対して、長期滞在を実現する仕組みとしても期待しています。
玉置:他の地域と違うのは、九州全体という広域の支持を得ていることです。
堀居:長崎県と佐世保市でIRを進めて行くにあたって、最初から共通していたのは「九州全体から支持していただく」というメッセージです。これはまさに自然発生的に生まれたものじゃないでしょうか。県知事にご尽力いただいて、九州の知事会で合意形成し、九州戦略会議の場では九州経済連合会からの支持を受けることができました。九経連の麻生泰名誉会長からも「長崎と佐世保ががんばっているんだから、みんなで応援してやろうじゃないか」というありがたいお言葉もいただきました。
ほかにも九州商工会議所連合会や九州県議会議長会などからもご賛同いただき、昨年の4月には九州IR推進協議会(KIRC:カーク)を設立することができました。九州全体で応援していただける土壌ができたのは非常に大きいと感じますし、現時点では、他の候補地では真似のできない連携だと考えております。いままさに、このKIRCで、IRにお越しになる観光客の皆様に、九州をいかに周遊していただくか、九州独自のキラーコンテンツを作っていくかなどを議論しています。
玉置:空路や電車はもちろんですが、九州内はとにかく高速道路網が充実しているので、便利ですよね。私も福岡に住んでいたので、九州は車でどこにでも行けるなあと思った記憶があります。
堀居:長崎は入口でもよいですが、出口でもいい。長崎のIRで遊んで、大分の温泉を楽しんで、鹿児島で観光して帰るとか、逆に熊本で観光して、IRで楽しんで長崎から帰るとか。九州は歴史も食も自然もありますので、テーマ性を持って楽しめると思います。
もう1つ大きいのは、九州としての地元調達や地産地消をどのように進めていくのか?です。総事業費で3500億円規模、年間のべ来訪者数840万人という規模のIRとなると、佐世保市や長崎県だけで受け止めるのは難しいのも事実です。地元調達100%というカジノ・オーストリアの目標に対して、オール九州で応えられるような形が望ましいと思います。