佐世保市から見たIRへの期待と未来 IR推進室室長に聞く (2/2)

大谷イビサ(JaIR編集部) 写真提供●(一社)長崎県観光連盟

多様なアクセス手段を検討 地方都市を維持するための経済振興策としてのIR


玉置:課題と言われているIRへのアクセスについてはどうお考えですか?

堀居:IRの基本方針にもありますが、やはり交通の利便性がよいところが理想的な立地です。今回のIRの計画は、近接地域への送客も重視されますので、入るだけではなく、出やすさも重要です。

佐世保は日本の西の端にありますので、国内での足の良さを考えると、確かに関東や関西地区には見劣りします。でも、アジアとの近接性を考えると、このロケーションはむしろチャンスです。飛行機で2時間圏内に約10億人が背後人口としており、長崎空港や福岡空港、佐賀空港など九州の各国際空港に容易にアプローチできます。近隣にこれだけ国際空港があるというのも、佐世保の隠れたポテンシャルだと思います。最西端が最先端になります。
多くの船舶が就航する佐世保港

いったん空港に着いてしまえば、そこからIRのあるハウステンボスまではすぐにアクセスできます。バスや車はもちろんですが、香港からマカオのように、長崎空港から船舶を使ったアプローチが可能になれば、より短時間でアクセスできます。長崎新幹線もまもなく開業しますし、交通インフラの面ではかなり充実してきています。

玉置:地元にどのような影響を期待していますか?

堀居:事業者の計画によると雇用は直接雇用で1万人、誘発効果を含めて3万人を見込んでいます。佐世保市としては、今回のIRを人口減少に対する方策の1つ、地方都市を維持していくために必要な経済振興策と考えています。ですから、直接雇用にあたる1万人の人たちが快適に過ごせる、働きやすい環境を用意しなければならないと思っています。

雇用に関しては、単に人数が増えるというだけではなく、多様性が重要です。シンガポールのIRでは900種類の職種があると言われますが、さまざまな仕事を選べるというのが望ましい。多様な雇用という点でもIRへの期待は大きいです。
 

ハウステンボスとの親和性を重視 ヨーロッパ文化の発信拠点という強み


玉置:今回のカジノ・オーストリアの提案について、印象をお聞かせください。

堀居:一番重要視したのは、ハウステンボスとの親和性だと思います。お隣様になるので、ハウステンボスとIRがどのようにシナジーを起こせるかが注目ポイントでした。

今回、唯一ファシリティ面での条件として出したのが、ハウステンボスを象徴するホテルヨーロッパとパレスハウステンボスの景観を活かしてほしいという点。事業者としては、当然いろいろな制約もあったと思いますが、それを汲んで提案をいただきました。

IRはハウステンボスとの親和性を重視
その点、ヨーロッパの国有企業であるカジノ・オーストリアはオランダをイメージしたハウステンボスと調和のとれた提案をしていただきました。ヨーロッパ文化の発信拠点というコンセプト自体が、日本にも、アジアにもありませんので、圧倒的な強みになると思っています。

玉置:ヨーロッパはカジノのイメージも、ラスベガスやマカオとずいぶん違いますよね。やはり歴史が長い分、洗練されているというか。

堀居:カジノに関しては、やはり大人の社交場として市民の方にはお伝えしています。市民の方がイメージされるような派手なカジノとは違って、安心できる格調高いカジノができます。いろいろな意味で差別化されたIRになると思います。

玉置:最後に佐世保・長崎とIRとの相性についてご意見いただけますか?

堀居:長崎はご存じの通り、出島があり、鎖国の中で唯一海外の文化を受け入れてきました。今回のIRの候補地も国内に最大3箇所だけということで、制度設計自体もなんだか似ていると思うんです。また、地元のある方から、人工のまちであるハウステンボスがあって、長崎新幹線も来るし、IRが誘致できれば、世界最大のリゾートタウンになったラスベガスみたいだねと言われて、不思議な類似性を感じました。

佐世保には古くは鎮守府が置かれ、米海軍佐世保基地もあるので、いい意味で外からの影響を受けてきたまちです。数年前に国内シンクタンクによる成長可能性都市の調査があったのですが、佐世保の持つ多様性を受け入れる風土が高く評価されました。IRのような新しい文化を受け入れることで、佐世保はさらに新しいまちに成長できると思います。

■関連リンク

特定複合観光施設(IR)誘致の取組について(佐世保市)
https://www.city.sasebo.lg.jp/kikaku/irsuishin/ir.html

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