長崎県がIR区域整備計画素案を公表 県議会の承認と国の認定申請の土台

JaIR編集委員 玉置泰紀

 長崎県は2021年12月10日、長崎県議会の総務委員会にて、同委員会で2021年9月に配付したカジノ・オーストリアの事業者提案概要書を踏まえた九州・長崎IR区域整備計画素案を、長崎県とカジノ・オーストリアジャパンの連名で公表した。
新デザインを反映したパース

概要から施設の配置やデザインを変更 海上交通の新プランも

 素案は、2021年8月に設置運営事業予定者を決定したことに伴い、これまで示してきた主に行政施策に係る取り組みの方向性に加え、設置運営事業予定者が担う「事業基本計画部分」を追加したものを区域整備計画(素案)として示したもの。県議会などでの承認と、国に対する認定申請の土台となるものになる。

 今回公表された素案は事業者概要書と大きく方向性が変わるわけではないが、施設の配置や外観のデザインなどが一部変更されている。

 また、長崎空港からのアクセスのため、海上交通の新しいプランも示された。大村港(長崎空港)周辺の港湾施設などのインフラ整備やハウステンボス線などの周辺道路整備に係る費用、IR施設に必要となる上下水道などの生活インフラ費用の一部である約147億円をカジノ・オーストリアが拠出するとされている。早岐港のハーバー・マリーナ周辺敷地(約1ヘクタール)が加わったことで、敷地総面積も約32ヘクタールに修正され、総床面積は約55ヘクタールになる。

 長崎県は本素案をたたき台に、議会で出た意見などを踏まえて、2022年2月に公聴会を開き、定例県議会での議決を得たうえで、国の区域整備計画への認定申請を、2022年4月28日までに終える予定だ。
 

カジノ・オーストリアが提案する「真の和洋折衷」

 区域コンセプトは、「Accept, Devise, Creation 様々な文化を受け入れ、融合し、新しい価値を生み出す街。」となっている。

 目指す姿として、「九州・長崎の独自性ある強み、設置運営事業予定者が持つオーストリア・ウィーンの特長を融合し、唯一無二の誘引力あるエリアを創り上げることで、九州・長崎を日本の象徴にまで押し上げて、世界中から多くの観光客を誘客~日本全国へ送客を果たし、「観光産業革命」を実現すること」を挙げる。さらに九州・長崎IRの魅力を「東洋文化と西洋文化の融合、伝統的なものと革新的なものの融合を果たし、時代を超え、距離を超え、広く受け入れ、取り込んで、新しく生み出していく。これこそがこの九州・長崎IRの魅力・価値である『真の和洋折衷』です」と記述している。

 具体的な目標としては、改めて以下の4点を掲げた。

・施設内雇用者数:約1万人、雇用誘発効果:運営時 約3万人
・来訪者数:約840万人/年
・経済波及効果:運営時 約3,200億円/年
・県納付金・入場料納入金:約300億円/年

 素案では、これまでの流れや今後の予定も含めたロードマップを改めて整理しているが、ここには手続きの透明性を示す狙いがあると思われる。この日の総務委員会では、総事業費3500億円の資金調達の状況について質問が出たが、県は「企業活動の機微に関わる」と答えている。また、市民団体が提出したIR誘致の中止を求める請願を審査したが、賛成少数で不採択となった。

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