<IR用語集・基礎知識> 和歌山県

JaIR編集部

2018年7月に全庁横断の「和歌山県IR誘致推進プロジェクトチーム」が設置され、国土交通省が2019年8月上旬から9月上旬に実施したIR意向調査には「申請予定または検討」と回答。近接する大阪府・市と同様に、早期からIRの誘致活動を進めてきた。候補地は、和歌山市内の人工島である和歌山マリーナシティのうち23.61haのエリア。関西国際空港や観光資源が集積した京阪神に近く、高野山や熊野古道、白浜など、山や海に囲まれた豊かな自然を生かした「滞在リゾート型IR」を目指す。和歌山県としては、「都市型IR」となる大阪府・市とはコンセプトが異なり、IR間の移動も容易のため、観光客が2つのIRを回遊することで相乗的に経済効果を発揮すると強調。IR推進派である仁坂吉伸知事のみならず、県議会もIRを支持するなど政治的にも安定している。

2018年の投資意向調査では国内外で33社から応募があり、大阪や横浜などの大都市と異なる事業者が関心を示していた。しかし、2020年2月に和歌山県IRの実施方針案が公表され、事業者公募(RFP)の受付がスタートすると、最終的にはサンシティグループホールディングスジャパン株式会社(香港のサンシティ系)、クレアベストニームベンチャーズ株式会社(カナダのクレアベスト系)の2社が参加資格を取得した。

その後、新型コロナウイルス感染症が日本国内にも蔓延し、2021年5月、コロナによる業界への甚大な影響と、日本のIR区域認定手続の不透明さを理由としてサンシティがRFPから撤退した。翌6月にクレアベストがコンソーシアム優先権者候補に決定。事業者選定委員会による総合評価はサンシティより低かったものの、適格性を確認するための予備調査も踏まえた結果として発表された。クレアベストには、カジノ運営のオペレーターがいないことが問題視されていたが、優先権者候補に決定後、コンソーシアムにGroupe Partouche(パルトゥーシュ)とAMSEリゾーツジャパンが新たに参加することが明らかになった。

7月には、クレアベストを中心とするコンソーシアムが正式に優先権者となり、8月に和歌山県とクレアベストは基本協定を締結。さらに、2019年8月に日本での活動を中止していたシーザーズ・エンターテインメント・インコーポレーテッドが、コンソーシアムに参加することが9月に発表された。シーザーズは、2019年にエルドラドリゾーツと173億米ドル(2019年のレートで1兆8857億円)で合併されて以来、初めての国際展開になる。

今後、和歌山県はこれら事業者と共同で、国へのIR認定の申請期限である2022年4月28日までに区域整備計画の作成を行い、2023年春頃の土地の引き渡し、2026年春頃のIR開業を目指していく。

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(2021年10月19日更新)