<IR用語集・基礎知識> 長崎県

JaIR編集部

地方型では最大規模のテーマパーク「ハウステンボス」に隣接した約31haを候補地とする。2007年に発足した民間団体「西九州統合型リゾート研究会」が佐世保市で誘致活動を開始し、2014年に県知事がIR誘致を表明。長崎IRによる地域振興は、九州地方知事会や九州商工会議所連合会などで構成される「九州地域戦略会議」の議題の一つでもあり、2021年4月には「九州IR推進協議会」も発足するなど、九州全体で誘致活動を展開している。候補地はもともとハウステンボスの所有地だったが、区域認定後に佐世保市を経由し、事業者に譲渡されることが発表されている。

地理的に、中国などのアジア各国に近く、年間約250万人(2019年)の集客を誇るハウステンボスの隣という立地が売り。海上自衛隊佐世保基地・在日米海軍佐世保基地があり、海上防衛の重要な拠点である佐世保港を擁しているため、新型コロナウイルス感染症の流行以前はクルーズ船の寄港も多かった。また、IR誘致活動が長いこともあり、地元の合意形成が進んでいるのも大きな特徴で、県議会・市議会の9割がIRに賛成しているという。大阪府・市に比べて認知度は低いが、北海道がIR誘致を断念して以降、和歌山県とともに地方型IRの有力候補地となっている。

2019年12月には「九州・長崎IR基本構想(案)」等に対するパブリックコメントも開始。2020年1月にはRFCの募集を行い、香港のOshidori International Development合同会社(オシドリ)、オーストリアのCASINOS AUSTRIA INTERNATIONAL(カジノ・オーストリア)、マカオのIRに携わる長崎市のカレントの3事業者がコンセプトを提出した。同年春、コロナが世界的に流行し、国の区域整備計画の認定受付も2022年4月28日まで後ろ倒しになることが決まったが、長崎県のRFP開始前にピクセルカンパニーズ(日本)が応募を表明。さらに、2021年1月にRFPが開始されると、NIKI & Chyau Fwu (Parkview) Group(日本・台湾)も応募を表明し、長崎県の候補は全5事業者となった。

一次審査では主に運営能力と財務能力のチェックが行われ、オシドリ、カジノ・オーストリア、NIKI & Chyau Fwu (Parkview) Groupのみが残った。その後、コンセプト、アイコニックな施設、懸念事項対策、地域還元などが問われる二次審査の結果、8月6日付で、オーストリア共和国の国有企業で歴史あるカジノ・オーストリアが優先交渉権者に決定。8月30日付で長崎県と基本協定を結んだ。国が決めている期日の2022年4月28日までに、長崎県とカジノ・オーストリアは共同で区域整備計画の認定の申請を行い、開業は最短で2027年中頃を予定している。

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(2021年10月21日更新)