統合型リゾート(IR)の担当官庁である国土交通省観光庁は、10月9日に「特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針(案)の修正版などを公示、意見募集(パブリックコメント、パブコメ)が始まっているが、今回の修正版のポイントの一つが、「新型コロナウイルス感染症を踏まえた感染症対策」である。海外IRで既に始まっている感染症対策を整理したうえで、日本型IRに求められる感染症対策について考えていきたい。
そして、事業者の評価基準の1項目「IR事業運営の 能力・体制」の中に、新たに「IR区域・施設に係る 安全の確保、感染症対策」が加わった。区域整備計画の認定審査の評価基準に、「事業を安定的・継続的かつ安全に運営できる能力及び体制」(太字は修正部分)とあり、具体的には以下の通り示された。
申請する事業者には、今まで求められていた防災・減災の取組に加えて、海外IR施設の取組例やガイドラインを踏まえた感染症対策が必須となるのだ。現在の世界を取り巻く状況を踏まえたアップデートは当然のことと言えるが、世界中から人を集めるための巨大施設の運営と、一方で接触を極力避ける必要のある新型コロナ感染症対策の両立は非常に難しい課題である。加えて、感染症対策のためのコスト増、そもそもビジネスの環境変化による収支設計の見直しも必要だろう。それは、2021年に延期開催となった東京オリンピック・パラリンピックの抱える課題とも共通するが、一時的なスポーツイベントとは異なり、IRの場合は恒常的な施設であるため、考慮すべき要素はさらに多い。
以下、カジノ管理委員会の9月3日開催の委員会資料中の「諸外国でのカジノ施設における感染症対策例」の分類をベースとし、「従業員への取組」「顧客への取組」「ゲーム機器・ゲームテーブルの対応」「ゲーミングエリアの収容人数」「ソーシャルディスタンス」「消毒」「その他」について、JaIRが独自にリサーチした。
また参考として、IRのある主要エリアでのIR施設の閉鎖~再開状況を列記しておく。ラスベガスでは、今年3月に全施設閉鎖、6月4日カジノ再開後、非ゲーミング施設を含め順次再開を拡大している。マカオでは、全カジノ施設が2月5日から19日まで閉鎖、2月20日から再開。シンガポールでは、4月7日からIR全体が閉鎖、7月1日にカジノや一部の観光施設を再開、7月17日にIRのホテルが再開している。韓国では、外国人向けカジノは3月から閉鎖、4月中旬~5月上旬に再開、感染再拡大により一部施設の再閉鎖もあったが、現在は再開している。韓国の唯一国内客向けの江原ランドは、2月23日から閉鎖し、5月8日にVIPエリア限定でカジノが再開したが、その後の感染拡大で閉鎖が続いていた。10月現在はVIPエリアと特定のマスゲーミングエリアが再開している。
基本方針案の修正版に追加された「安全や健康・衛生の確保」
観光庁からの3つの意見募集のうち、新型コロナ感染症対策が関係するのは、「特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針(案)」(※修正部分のみ)に関する再意見募集である。修正版の基本方針(案)の概要には、IR整備の意義として「IR整備に当たっては、①IR区域・施設に係る安全や健康・衛生の確保、②カジノ事業収益の公益還元、③都道府県等によるギャンブル等依存症対策の充実、④IR事業者等との接触ルールの策定、IR事業者のコンプライアンスの確保が極めて重要な前提条件」(太字は筆者)とあり、前提条件の筆頭として新たに「安全や健康衛生の確保」が挙げられている。そして、事業者の評価基準の1項目「IR事業運営の 能力・体制」の中に、新たに「IR区域・施設に係る 安全の確保、感染症対策」が加わった。区域整備計画の認定審査の評価基準に、「事業を安定的・継続的かつ安全に運営できる能力及び体制」(太字は修正部分)とあり、具体的には以下の通り示された。
防災・減災のための取組並びにIR区域及びIR施設に係る安全の確保のための取組が適切に講じられるとともに、災害その他のリスク事象について、発生時における来訪者への情報提供や救援物資の提供その他の適切なオペレーションや、損害に備えた保険の付保などが適切に講じられることが求められる。また、新型コロナウイルス感染症の発生も踏まえ、感染症対策その他の健康・衛生の確保のための取組が適切に講じられることが求められる。特に感染症対策については、IRは様々な機能を持つ施設が一体となった施設であることから、先行する諸外国のIRにおける取組例や、感染症の発生の状況に応じて定められる、IRを構成する各種施設における感染防止のためのガイドラインなども踏まえ、対策内容や実施体制を定めた計画を策定し、発生時に適切な対策が講じられることが求められる。
※太字は修正部分
※太字は修正部分
申請する事業者には、今まで求められていた防災・減災の取組に加えて、海外IR施設の取組例やガイドラインを踏まえた感染症対策が必須となるのだ。現在の世界を取り巻く状況を踏まえたアップデートは当然のことと言えるが、世界中から人を集めるための巨大施設の運営と、一方で接触を極力避ける必要のある新型コロナ感染症対策の両立は非常に難しい課題である。加えて、感染症対策のためのコスト増、そもそもビジネスの環境変化による収支設計の見直しも必要だろう。それは、2021年に延期開催となった東京オリンピック・パラリンピックの抱える課題とも共通するが、一時的なスポーツイベントとは異なり、IRの場合は恒常的な施設であるため、考慮すべき要素はさらに多い。
海外IRの新型コロナ対策は?
海外のIR施設は、新型コロナウィルス感染症の流行で閉鎖を余儀なくされたが、施設再開後はどのような対策を行っているのだろうか。対策を分類して事例を紹介したい。以下、カジノ管理委員会の9月3日開催の委員会資料中の「諸外国でのカジノ施設における感染症対策例」の分類をベースとし、「従業員への取組」「顧客への取組」「ゲーム機器・ゲームテーブルの対応」「ゲーミングエリアの収容人数」「ソーシャルディスタンス」「消毒」「その他」について、JaIRが独自にリサーチした。
また参考として、IRのある主要エリアでのIR施設の閉鎖~再開状況を列記しておく。ラスベガスでは、今年3月に全施設閉鎖、6月4日カジノ再開後、非ゲーミング施設を含め順次再開を拡大している。マカオでは、全カジノ施設が2月5日から19日まで閉鎖、2月20日から再開。シンガポールでは、4月7日からIR全体が閉鎖、7月1日にカジノや一部の観光施設を再開、7月17日にIRのホテルが再開している。韓国では、外国人向けカジノは3月から閉鎖、4月中旬~5月上旬に再開、感染再拡大により一部施設の再閉鎖もあったが、現在は再開している。韓国の唯一国内客向けの江原ランドは、2月23日から閉鎖し、5月8日にVIPエリア限定でカジノが再開したが、その後の感染拡大で閉鎖が続いていた。10月現在はVIPエリアと特定のマスゲーミングエリアが再開している。