新型コロナ感染症によるIR基本方針案の修正点と海外のコロナ対策例 (3/3)

二上葉子

公衆衛生対策を継続的に実施するための課題

 ラスベガスやマカオ、シンガポールといった主要なIRを見ると、IRを管理する行政機関がガイドラインを示し、事業者はガイドラインに従って運営し、さらに必要性を感じれば、ガイドライン以上の独自の対策を取っている。現在は、新型コロナの感染拡大となれば、IR施設の一時閉鎖という最悪の事態に逆戻りとなるため、対策は十分に取られているが、このような措置をいつまで続ける必要があるのか、対策のコスト負担はどうなるのか、別の感染症が発生した場合はどうなるのか、など、世界的にも結論の出ていない問題も横たわっている。

 いずれにしても、感染症等に関して政府の方針を反映したガイドラインをIR管理側が速やかに事業者へ共有し、事業者で対応できる体制を整えておく必要がある。リスク時の地元自治体との連携も必須となるだろう。

 最後になるが、事業者の評価基準の大項目「事業を安定的・継続的かつ安全に運営できる能力及び体制」の中には、新型コロナ感染症対策で大きく修正となった小項目の一つ前に、「財務面からみて安定的であり、業績が下振れした場合にも適切に対応し、長期的に事業を継続できることが求められる」との項目がある。

 今回の再パブコメで発表された国土交通省告示案の、区域整備計画の法9条2項4号に掲げる事項として定める事項のうち、財務に関する項目として、新たに「⑩財務の状況が悪化した場合における措置に関する事項」が加わった。これは新型コロナ感染症の流行を背景とした変更であり、公衆衛生対策を実施するためにも、そもそも、事業が継続できるだけのリスクに備えた財務体制であることが事業者に求められている。


■関連資料データベース
特定複合観光施設区域整備法第5条第1項の規定に基づく「特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針(案)」(※修正部分のみ)に関する再意見募集

 意見募集要領 https://jair.report/archive/361/
 【別紙】基本方針案(修正部分) https://jair.report/archive/362/
 【参考資料1】基本方針案(概要)https://jair.report/archive/359/
 【参考資料2】基本方針案(本文) https://jair.report/archive/360/

カジノ管理委員会・第22回(令和2年9月3日)配布資料 「最近の主な諸外国のカジノ施設の状況」
https://jair.report/archive/346/

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カジノ管理委員会の7~9月の活動内容を読み解く
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