<IR用語集・基礎知識> マカオ

JaIR編集部

成田国際空港から約5時間、中国広東省南部、珠江(しゅこう)デルタの西南岸に位置し、面積29.9㎢、人口約69万6,100人(2020年・マカオ政府観光局データ)。1999年の中国返還までポルトガルの植民地だったマカオは、返還後50年間の現状維持が保証された中国の特別行政区であり、中国唯一のカジノの解禁特区になっている。長年ギャンブル業に依存していた経済構造であったが、全体に占めるギャンブル分野の比重は、2018年には50.5%まで低下し、展覧・催事業、金融業、漢方医療および文化産業といった非ギャンブル分野が50%近くを占めるようになった。香港国際空港を挟む形で東に香港、西にマカオという位置関係となっており、2018年末には香港=空港=マカオをつなぐ橋が開通したことで、空港から40分ほどで結ばれることになった。

長きに渡って「マフィアに支配された麻薬と博打と暴力で腐敗した街」のイメージが強かったが、第二次世界大戦後に、STDM(澳門旅游娯楽有限公司)に独占的にカジノライセンスを与えたことで変革が始まった。STDMの総帥スタンレー・ホーが、「食と娯楽の街」というイメージを前面に押し出すと同時に、港を作って香港からの高速船を就航させる等のインフラを整え、現在の繁栄を築いた。独占状態は約40年続き、マカオの税収の大半をSTDM関連が占めるという状態にまで成長した。

もともとマカオ半島の先端部に位置する旧市街がカジノの中心だったが、半島の南側の2つの島の間を埋め立てて作られたコタイ地区に、大規模なIR開発が持ち上がる。2002年、マカオ行政府は計画を加速するために、STDMの後継企業であるSJMのほか、ウィン・マカオとギャラクシー・エンターテインメントに新たにカジノライセンスを解放。さらにそれぞれのサブライセンスとして、サンズ・チャイナ(ギャラクシーのサブ)、MGMチャイナ(SJMのサブ)、メルコ・リゾーツ&エンターテインメント(ウィンのサブ)を認め、海外企業を含めた合計6社の自由競争が始まった。2006年には、全体の売り上げ規模(約2兆円)がラスベガスを抜いたとされたが、中国高官や富裕層の資金洗浄の疑いも指摘され、中国政府の規制強化とともに売り上げが沈静化。代わってファミリーで楽しめるエンターテインメントの街を前面に押し出し、成長を続けている。

2020年現在、6社がマカオで営業するカジノ施設は全41軒(うち22軒をSJMが運営)。コタイ地区では10のIRが開業し、今もなお建設が続いている。いずれの施設も自国民、外国人ともに入場無料。年齢制限は長年18歳以上だったが、2012年より21歳以上に引き上げられた。6社のライセンスは2022年6月末に更新期限を迎えるため、入れ替えがあるのか、この先の有効期限がどうなるのか等々が注目を集めている。

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(2020年8月18日更新)