東京23区と同程度の約720㎢の面積と、約564万人の人口(2018年・シンガポール統計局データ)を有する多民族国家で、日本からは約7時間で到着。イギリスの植民地からマレーシアの一部を経て、1965年に国家として独立。マレー半島の最南端に位置し、アジアにおける貿易、経済の中心地として栄えてきた。特に外資を活用し、ビジネス拠点としてのハブ機能を強化することで、産業の育成や高度化を図り、2015年にはGDPが世界第8位の高水準となった。
一方で天然資源に乏しく、観光を主要産業としてきたが、限界が見えてきたため、2005年にIRの導入を決断。カジノの収益を原資に単一IRオペレーターが統合的に施設開発・運営していくというIRの概念もこの時に作られた。IRの実現に向けて整えられていった徹底的なゲーミング規制は、シンガポールIRの大きな特徴となっている。21歳以上であれば自国民、外国人ともに入場可能だが、自国民には150シンガポールドル(約12,000円)の入場税が課される。IRオペレーターに対しては、開発総面積の比率でカジノエリアの面積を制限したり、一般エリアの境界を明確にすることでカジノへの入口は目立たない場所に設置することなどが義務づけられている。
政府はこれらのルールを厳格に適用し、2か所に限定された独占ライセンスを発行。2010年にはラスベガス・サンズ運営の「マリーナベイ・サンズ」と、ゲンティン・シンガポール運営の「リゾートワールド・セントーサ」がそれぞれ開業した。ノンゲーミングエリア=カジノ以外の施設もシンガポール型IRの大きな特徴で、街のアイコンとなる高層ホテルとMICEを備えるマリーナベイ・サンズ、ユニバーサルスタジオ・シンガポールや水族館等のファミリー向け施設が充実するリゾートワールド・セントーサ。この2つの施設は車で20分程度の距離にありながら、それぞれの個性を前面に打ち出すことで共存共栄している。
IRの実現により、シンガポールのインバウンド観光産業は150%の伸長を示している。カジノの売り上げもラスベガスに匹敵するまでに成長し、マカオとともに世界3大カジノの一角を占めるまでに成長した。2019年には、サンズおよびゲンティンは、ゲーミング以外の施設のために合計約7,400億円の投資をすることを決定。拡張用追加投資総額は初期投資の3分の2にも及ぶ。政府はこの追加投資を条件に、2社の独占ライセンスを2030年まで延長するなど、さらなる発展に向けた手を打ち始めている。
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(2020年8月18日更新)
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