IR映画の座談会再び エンタメ、カジノ、テクノロジー、コロナ禍まで語る (2/3)

大谷イビサ(JaIR編集部)

IR映画としても秀逸な「名探偵コナン」 異色のIR映画「リアル」


玉置:エンタメだったり、セキュリティだったり、MICEだったり、IRの未来が全部詰まっているのが「名探偵コナン」だったりします。2018年の「名探偵コナン ゼロの執行人」では、東京湾の埋め立て地に造られた統合型リゾート「エッジ・オブ・オーシャン」が事件の舞台。一方、2019年に公開された「名探偵コナン 紺青の拳」はマリーナベイ・サンズがあるシンガポールが舞台です。

シンガポールのシンボルであるマーライオンとマリーナベイ・サンズ


塚田さんが記事を書きましたが、ずいぶん多くの人に読まれましたね。僕はシンガポール行ったことないのですが、あの記事を読んでいると行きたくなりますね!

第19回「名探偵コナン ゼロの執行人」「名探偵コナン 紺青の拳」ー日本アニメの影響力をきちんと認識しておこう
https://jair.report/article/473/

大谷:私もシンガポールは言ったこと何回かありますが、湾内での花火を聴衆が観ている感じとか、マリーナベイ・サンズでパトカーが止まる植え込みとか、湾に入ってくる大型船と建物の縮尺とか(笑)、映画はとてもリアルですよね。

塚田:リアリティを追求しつつ、あくまでフィクションというアニメという表現のすごさを改めて実感しました。

マリーナベイ・サンズの屋上のプール部分が海上に落下してしまうなんて、実写だと生々しすぎて許されないと思うのですが、アニメだからできたのかなと。たぶん日本の会社だったら、広報が「屋上部分が海に落ちるなんてありえないですよ」と止めるんですよ(笑)。

二上:そこらへんの振り切った表現に協力したシンガポール政府観光局やマリーナベイ・サンズの懐の深さを感じます。実際に観光キャンペーンもやっていましたし、昨年マリーナベイ・サンズを取材したときも、「コナンを観てマリーナベイ・サンズに来た」という観光客は明らかに増えたとうかがいました。

塚田:確かに「マリーナベイ・サンズのプール部分っていつか落ちるんじゃない?」って、いろいろなところで書かれていますけど、それを実際にやってしまうぶっ飛び方がすごいなあと。

二上:あと、プロモーションという意味だと、私が第17回で書いた「リアル」という韓国映画が参考になるかもしれません。言っていいのかわかりませんが、映画自体はすごく難解で、あらすじがわかりづらい。最後まで観て一度で理解できる人は少ないと思います。

大谷:記事読めばなんとなくわかりますが……(笑)。

第17回「リアル」ー韓国でのIR開業とそのプロモーションについて学ぶ
https://jair.report/article/466/

二上:ただ、主人公がカジノ経営者という設定で、映画自体もインチョン(仁川)のパラダイス・シティの開業に会わせて製作されたという点が興味深いです。華やかなカジノとその裏側をノワール調で描き、そこにイケメンが登場するみたいな感じ。

主人公のキム・スヒョンはそのままパラダイス・シティのアンバサダーになったので、それでIRを認知したファンは多いと思います。ただ、パラダイス・シティもそのまま使ったわけではなく、コストをかけて別途でセットを組んで、そこで派手にドンパチやっています。

玉置:カジノエリアの撮影って、やはり難しいんですよね。

爆破はラスベガスの華 そしてコロナ以降はどうなる?


大谷:コナンの映画でもIRが爆破されますが、ラスベガスでは実際にIRの爆破がショーになっているという話も連載で出てきます。この「爆破ショー」ネタを書くために「コン・エアー」を持ってきたという塚田さんの豪腕ぶりがすごいです。

塚田:「名探偵コナン ゼロの執行人」では東京湾岸にあるIRが爆破されるので、この爆破ネタを書いていたんです。でも、途中からやはりアニメの影響みたいなストーリーに振った方がいいかなと思って、爆破ネタの原稿いったん捨てたんですよ。

玉置:もったいない!

塚田:なので、「コン・エアー」でそこらへんは書きました。もともとは老舗のデューンというホテルをトレジャーアイランドの前にある大砲で爆破させるというショーが皮切りで、映画で使われるリヴィエラやサンズの爆破はその後なんですよね。YouTubeでもホテル爆破の映像ってけっこう残っているんです。正直、日本のサイトにはここらへんの情報がほとんどなくて、英語のサイトを当たって苦労しながら書いてみました。

第22回「コン・エアー」ー爆破解体! 最後の瞬間までショーアップするラスベガス魂の研究
https://jair.report/article/493/

二上:ピラミッド型のホテルとして有名なラスベガスのルクソールもいずれ爆破されるのではないかという噂がちらほら出てますね。

 

「スターダスト」の解体イベント。屋上から花火が打ち上げられ炎に包まれる(Andrew Ferguson/CC BY-SA 4.0)


大谷:いくら豪華で広いとは言え、ラスベガスのホテルはやはり老朽化してきているので、ちょうどリニューアルのタイミングかなと思います。

二上:新型コロナウイルスを予言した映画なのではないかと一部で話題になっているスティーブン・ソダーバーグ監督の「コンテイジョン」という映画も連載で取り上げています。映画の中では感染症の発生地が、マカオのIRという設定になっています。映画ではカジノが感染症と結び付いてしまいましたが、現在、各IRオペレーターはコロナ対策に力を入れています。

第23回 実はIRやカジノが登場する映画「コンテイジョン」「夜に生きる」「マイ・ブルーベリー・ナイツ」「LOGAN/ローガン」
https://jair.report/article/500/

塚田:コロナの影響でIRは元に戻るのか?という課題に関して言うと、完全に元には戻らないけど、違う形で復活するのではと、個人的には楽観視しています。やっぱり広いところでライブみたいよねという欲求はおさえられないと思うので、安心・安全になればみんな行くのではないですかね。

二上:オンラインカジノやスポーツベッティングのような市場も勃興しつつあるので、そのうちこれらをテーマとした映画も出てくるかもしれませんね。

玉置:コロナ以降はリアルとバーチャルをいかに融合していくのかが重要。IRの予定地でもある大阪の夢洲で開催される万博はテクノロジーを使って、リアルとバーチャルをいかに作っていくのか、クラウド(群衆)コントロールをどのようにやるのかの試金石になると思います。

 「リービング・ラスベガス」で紹介したような、夢の街でひたすら落ち込んでいるような人たちも当然いるわけで、ネガティブな側面への対応も大事ですね。

第21回「ラスベガスをやっつけろ」「リービング・ラスベガス」ー超変わり種映画でラスベガスの奥深さを知る
https://jair.report/article/486/