真夏のIR映画座談会 連載担当3人がIR映画の魅力を語る (1/2)

大谷イビサ(JaIR編集部)

 今回は連載「JaIR特選!IRを実感できる映画ガイド」の番外編として、連載担当による座談会をお届けする。IRについて効率的に学べるIR映画の効能や連載各回の読みどころ、楽しみ方を連載担当の3人が語り尽くす。*ネタばれあり

登場人物
塚田:KADOKAWAのIR担当でありながら、映画も大好きなので参加させてもらってIRの勉強をしています。
玉置:「バグジー」を見た直後にラスベガス旅行。縁を感じる映画&IR好きです。
二上: 世界のIRを巡るJaIRライター。エンタメ、スポーツビジネスが専門分野で、映画と海外ドラマ好き。海外セレブ事情にも興味あり。

IRを学び、追体験できるIR映画の魅力

―改めてなぜIRと映画の連載を始めたかを教えてください。

玉置:IRはなにかを学ぼうと思ったら、本当は直接IRに行くのが一番いい。でも、コロナ渦の中、おいそれとIRに足を運ぶのは難しいですよね。じゃあ、どうしようかと考えたとき、IRにまつわる映画を観てもらうのがよいのではないかということで始めました。だから、僕らは映画紹介をやりたかったわけではなく、映画から引っ張れるIRのキーワードをどれだけ膨らませられるかを主題に書いています。

そもそも映画とIRが結びついたのは、ラスベガスについて調べているときに、ラスベガスを舞台にした映画がいっぱいあることに思い当たったから。人に説明したり、記事を書くときも、映画をイメージすると説明しやすい。だから、僕にとっては最初から歴史ありきです。

塚田:確かに玉置さんの話を聞いていると、映画の話がよく出てくるので、「じゃあ、コラムでも書いてよ」ってお願いしたら、なかなか出てこない(笑)。とはいえ、話を聞いてみると、確かに1回ですっぱり書ける内容でもないんです。「だったらJaIRで連載にしてよ」ということで、それがリレー形式に発展して私も参加させてもらうことになりました。

―IRの歴史を映画でイメージしながら学ぶんですね。

二上:私は歴史ではなく、むしろ現代から入っています。有名なDJのライブやスポーツイベントが数多くラスベガスで開催されてきたので、それらの場所がどのように描かれているのかを映画で学んで、理解が深まったという感じです。

塚田:私は玉置さんに誘われて連載を書き始めたわけですけど、とても勉強になっています。単に映画を観るだけではなく、膨らませようと思った部分を調べて、書かなければならないので、IRの本質や課題がいっぱいわかってきます。だから、連載を読んで映画を観てもらうのも重要ですが、わからないことを自分で調べてみるのがよいと思います。

IR映画はフィクションなのに限りなくドキュメンタリー?

―連載で紹介した映画の舞台としては、やはりラスベガスが圧倒的に多いです。

塚田:まあ、ラスベガスは歴史も長いですからね。1920年代くらいから歴史が始まり、1945年くらいからザ・ストリップ周辺に街の中心が移動し、今に至るまでざっくり100年。期間も長いし、マフィアの抗争とか、IRの勃興とか、カジノの舞台裏とか、ネタは満載ですよね。

玉置:僕は今のラスベガスの基盤を作ったベンジャミン・バグジーを描いた「バグジー」を第1回として書いたのですが、これはもともとオンタイムくらいに観たあとに、家族でラスベガスに行ったので、とても印象深い映画です。第6回で書いた「ゴッドファーザー」は以前から好きな映画なのですが、シチリア島からの移民のマフィアの話として観ていたけど、JaIRに関わるようになって、改めてこの映画を観ると、これってIRの映画だと思って合点がいくんです。

バグジーの舞台となった現在のフラミンゴ・ラスベガス

第1回「バグジー」ーラスベガスを作った男の華麗で危険な香りいっぱいのロマンスを描く
https://jair.report/article/323/

第6回「ゴッドファーザー」ー映画史に残る傑作はIR映画だった!?
https://jair.report/article/361/

あと、有名な「007シリーズ」には、ほぼ全作で世界中のカジノが出てきますが、「ダイヤモンドは永遠に」は舞台がまさにラスベガスで、途中のカーチェイスがストリップの大通りで行なわれています。これくらい大掛かりなラスベガスロケを敢行しているのって、ほかには「クレイジーキャッツの黄金大作戦」くらいなので画期的。あと途中に出てくる大富豪がどう見てもハワード・ヒューズです(笑)。

塚田:「007シリーズ」も、ギャンブルというより、きらびやかな大人の社交場としてカジノが出て来ますよね。

玉置:モナコとかまさにそうですが、蝶ネクタイで正装していく、かっこいい場所ですよね。

塚田:「カジノ」は以前も観たのだけど、改めて観たらずいぶん違う印象でした。いろんなところに細かくカジノのディテールが盛り込まれているなあと思って感心しました。

第7回「カジノ」ーその危うさをきちんと理解しておくことが、健全なIR作りの土台となる
https://jair.report/article/371/

玉置:確かにどこまでがフィクションで、どこまでがノンフィクションかわからない。調べていくと、ほとんどノンフィクションなのではないかと(笑)。

塚田:たとえば、カジノホテルの買収資金を全米トラック運転手組合から捻出してくるという話が出てくるのですが、当時は物流を担うトラックのドライバーが起こすストライキがマフィアの利権として存在してた時代で、実際に行政との癒着で収監されている人もいます。リアルティがあります。

僕は初めてラスベガスに行ったのは1986年なんですけど、「カジノ」の冒頭でデニーロの車が爆破されたのはその3年前にあたる1983年で、実はそんなに離れていない。ある意味、危ない時代にラスベガスに行っていたのかと思うと、すごく怖くなりました。

IRに不安を感じている方たちの中には、ああいった映画のイメージを強くお持ちの方がいらっしゃいます。確かにあんなマフィアが家の近所に来たらたまらないという気持ちもわかりますね。

玉置:ただ、1969年にカジノライセンス法ができ、1970~80年代にはマフィアは排除されていくんですよね。そのカジノライセンス法ができたきっかけが伝説の大富豪であるハワード・ヒューズだったりして、こうした反社会的勢力をどのように排除していくのかという流れに関しても映画で学べたりします。

塚田:「アビエイター」はヒューズの話なのだけど、肝心のラスベガスでの話の前までしか描かれていない。浄化するって映画のストーリーとしてはつまらないのかな(笑)。

今のラスベガスも、カジノはシステマチックになっているので、機械の中をのぞくみたいな味気なさがあるような気がします。いかさまや犯罪が原理的にあり得ない安全できらびやかな遊び場になっているので、舞台としてはともかく、映画の主題としてまともにIRを扱うと意外とつまらないのかもしれない。

玉置:ソダーバーグ監督が「オーシャンズ11」シリーズで一貫して描いているのは、最新のセキュリティを備えた最新のIRで本気で犯罪をやろうとしたらどうなるか? ということですよね。ソダーバーグはIRがかなり好きだと思います。

第2回「オーシャンズ11」ークールでイケイケの”ラスベガス像”を作った大ヒット映画
https://jair.report/article/321/

二上:ソダーバーグはラスベガスで定期公演していたピアニストを題材にした「恋するリベラーチェ」という映画も作っているので、ラスベガスやIRが好きなのは間違いないと思います。

-その点、二上さんは現在のラスベガスをテーマに扱っていますよね。

二上:私は「ハングオーバー!」と「ラストベガス」の記事を書いたのですが、たとえば友達とラスベガスにいったら、一日どうやって楽しむのかを追体験できました。カジノだけではなく、飲食を楽しんだり、クラブに行ったり、飲み過ぎちゃって騒動になるところまで含めて、ラスベガスの楽しみ方やIRの幅の広さを学べたと思います。

第3回「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」ーラスベガスらしさ全開の大ヒットコメディ
https://jair.report/article/335/

第5回「ラストベガス」ーラスベガスの新旧の魅力を存分に味わえる映画
https://jair.report/article/351/

あと、映画ではないですが、海外の人気ドラマで「ビッグバン★セオリー」というシリーズでは、LAに住んでいる主人公の彼女たちはことあるごとにラスベガスに遊びに行きます。「ハングオーバー!」もそうですが、われわれのように海を渡っていくのではなく、LAに住んでいる現地の人たちが友達とおしゃれして遊びにいく場所がラスベガスなんだなという感じがわかりますよね。

―MICEの「I」って「Incentive Tour(インセンティブツアー、報奨旅行)」じゃないですか。日本人にはやや理解しがたいですが、アメリカ人にとってラスベガスって、ビジネスでカンファレンスにも参加するけど、同時に遊んだり、飲んだり、羽目を外す場所でもある。映画を観ると、ラスベガスがそういう場所であることよくわかりますよね。