【IR映画ガイド】ラスベガスの新旧の魅力を存分に味わえる映画「ラスト・ベガス」

二上葉子

統合型リゾート(IR)の舞台をめぐる映画連載第5回目は、ラスベガスの新旧の魅力を存分に味わえる映画「ラスト・ベガス」を紹介する。*ネタばれあり

「ラスト・ベガス」(2013年 アメリカ)
https://movie.walkerplus.com/mv55213/

 この映画のすごさは、何と言っても、マイケル・ダグラス、ロバート・デ・ニーロ、モーガン・フリーマン、ケヴィン・クラインという4人のレジェンドたちの豪華共演だ。全員アカデミー賞受賞俳優で、経歴は説明するまでもないのだが、彼らが映画でビリー、パディ、アーチー、サムという幼い頃からの大親友を演じるのだから、見応えがある。
 
 4人のうち唯一独身を貫いてきたビリー(マイケル・ダグラス)が若い女性と結婚することになり、独身最後の夜を同性の友人と祝うバチェラー・パーティーをラスベガスで開催するため、4人は久しぶりに再会する。60年来の親友と会い、少年時代に戻ったように羽目を外すのだが、パディ(ロバート・デ・ニーロ)だけは浮かない顔。実は、4人組の幼馴染でもあったパディの妻の葬儀にビリーだけが来ず、今も腹を立てている。さらに旅行中に出会った歌手のダイアナ(メアリー・スティーンバージェン)にビリーとパディの両方が恋心を寄せることになり、ますます対立が深まってしまう。といっても、ラスベガスが舞台ということで、カジノでの大勝あり、プールやクラブでのパーティーありの賑やかな展開で、コメディタッチで描かれている。

 

ラスベガスのストリップ地区とダウンタウンの両方を楽しめる

 映画では、ラスベガスの新旧のスポットが登場するので、最新式と旧式のカジノホテルの雰囲気を比較しながら楽しめる。

 まずは新しいラスベガスだが、彼らの宿泊先となるのは、ラスベガスのストリップ地区にあるMGMリゾーツが運営する最新型IRの「アリア」。2009年に開業したアリアは、自然光を多く取り入れたモダンでスタイリッシュな建築が特徴で、プール、スパ、ショッピングモールなどを備えた巨大施設だ。ビリーが結婚式を挙げる予定のチャペルも施設内にある。

 ラスベガスといえば、ギラギラしたネオンのイメージがあるが、アリアはオールドタイプのカジノとは一線を画しており、また1990年代にラスベガスで流行した、エジプト、ニューヨーク、パリなどをテーマとしたコンセプト型のIRとも異なる、新しいタイプのIRだ。カジノ利用をメインとしない客が多く訪れる施設内には、コンテンポラリーアートが飾られ、洗練された大人向けのIRと言える。

アリアのショッピングモール


 このIR内で、劇中たびたび登場するのがプールサイド。ラスベガスの最も暑い季節は6月から 9月中旬まで続き、1日平均の最高気温は35度を超える。毎日快晴でうだるような暑さなので、アクティビティとしてプールは欠かせない。途中、なぜか4人が水着コンテストのゲスト審査員となるシーンがあるのだが、ゲスト出演したお祭り男レッドフー(元LMFAO、ラッパー・DJ・ダンサー)のハイテンションなMCと名優たちの弾ける笑顔が印象に残る。コロナ前は、実際に昼間からプールでのDJイベントが多く開催され、アッパーな雰囲気が漂っていた。

 一方、4人組と歌手のダイアナと出会いの場となるカジノは、ダウンタウンにある創業1951年の老舗カジノの「ビニオンズ」。最新型IRとは異なり、カジノだけのシンプルな造りだ。劇中ではホテルは改装中とされているが、実際には2009年でホテル営業を停止した。ダイアナ演じるメアリー・スティーンバージェンのけだるく甘い歌声が、カジノフロアにある落ち着いたバーに馴染んでいて、魅力的に映る。

 ダウンタウンは20世紀初頭、砂漠のオアシスとして誕生し、カジノで繁栄していたが、大規模リゾートの時代に入り、ラスベガスの中心地はストリップに移った。今も古いラスベガスの面影を残す場所として、多くの観光客が訪れる。物語では、ダイアナに会いたさに、パディ、ビリーはそれぞれ宿泊しているストリップ地区からダウンタウンへタクシーを飛ばす場面があるが、実際にタクシーで行くとなれば片道15~20分ほど。恋心からわざわざ駆け付けていることが相手にも明白なあたりは微笑ましい。

 途中、パディとダイアナが、ダウンタウン中心のフリートモント・ストリートにあるベンチで語らう場面は、一見何気ないシーンだが、ダウンタウンらしいカジュアルな雰囲気がよく表れている。アーケードで覆われたストリートは観光客で賑わい、通りの両サイドにあるカジノは昼間でもネオンが灯っている。通りには飲食のテイクアウト店やおみやげ屋が並ぶ。映画の場面は昼だが、夜にはストリート・パフォーマーによる演芸や、ライブステージでのバンド演奏などがあり、遅くまで楽しめる場所だ。


ダウンタウン地区の中心にある老舗カジノ「ビニオンズ」

ダウンタウン名物の電飾アーケード 「フリーモント・エクスペリエンス」
 
 

ラスベガスのナイトタイムといえば「クラブ」 有名DJが多数契約

 コロナ以前の話になるが、今どきのラスベガスのナイトタイムといえば「クラブ」だ。撮影当時、アリア内で営業していたナイトクラブ「ヘイズ《HAZE》」へ4人組が繰り出すシーンがある(ヘイズは映画公開同年の2013年に閉店。現在は同じ場所に有名ナイトクラブ、ハッカサン・グループの「ジュエル《Jewel》」が営業)。

 ラスベガスには、世界的なレストラン・クラブのハッカサン・グループ(ロンドン)やマーキー(ニューヨーク)などが、IR事業者と提携して設置した大型のナイトクラブが数多くある。高級ホテル内にあるに相応しく、ゴージャスで巨大なダンスフロアを誇り、世界的なDJとレジデンシー契約を結んでいることが多い。エレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)界の超大物の多くがラスベガスを拠点に活動しており、EDMの聖地となっている。絢爛豪華なフロアに音楽とダンス、24時間眠らない街にぴったりのエンターテイメントだ。


ハッカサン・グループが手掛けるナイトクラブ「オムニア」(シーザーズ・パレス)には、重さ1トンの巨大なシャンデリアが飾られている


 特に金曜夜ともなれば、有名DJ目当てに大勢の若者がクラブを訪れるが、週末のクラブ入場に付き物なのが行列。映画でも4人組は1時間以上待たされるが、彼らをよそ目に、常連か関係者と思しき女性は即入場を許される。腹を立てた4人はクラブのスタッフに詰め寄り、結局VIPシートを購入して入場することになる。その価格は1人1,800ドル(約20万円)を4人分。クラブの仕組みをよく知らない4人の驚愕ぶりが面白いが、価格は映画だから大袈裟にしているわけでもなく、ラスベガスの相場だ。むしろ金曜夜に空いているシートがあって、よかったと言えるかもしれない。
 
 疲れ知らずの4人はナイトクラブを楽しんだ翌日、今度は宿泊中のペントハウス・ヴィラでのオリジナルのパーティーを企画する。ペントハウス専従のバトラーの助けで準備をおこない、滞在中に知り合った人々を招待する。参加者の中には、当時アリア内で定期公演をしていたシルク・ドゥ・ソレイユのダンサーたちの姿も。ラッパーの50セント(本名:カーティス・ジェームズ・ジャクソン3世)本人もカメオ出演。大勢いる中でも、オーダースーツでドレスアップした名優4人の存在感はさすが、格好よく決まっている。

 このハイテンションなパーティーのさなか、パディ、ビリーの確執が決定的になってしまう場面が訪れる。そこからの展開は、人生の酸いも甘いも噛み分けた彼らだからこそ選んだ結末なので、ぜひ見届けてほしい。物語は終始笑える場面が多いのだが、最後は友情にホロリときてしまうはずだ。

 

「ラスト・ベガス」から、変化するラスベガスの魅力を考える

 ウィズコロナ時代になり、劇中に登場したような、ナイトクラブやパーティーはどうなるのだろうか。大勢が密着して踊ることが難しいとすれば、ナイトクラブの在り方、楽しみ方も変容せざるを得ない。コロナでの自粛期間中、リアルな場でのDJ活動は困難だったが、動画配信や、人気ゲーム「フォートナイト」の仮想空間内でのDJなど、デジタルの世界に可能性を見出したケースもある。だからといって、今後すべてのDJ活動がオンラインに置き換わるとは思えず、リアルの場はより価値の高いものとなるに違いない。

 コロナ後の視点で「ラスト・ベガス」を見返すと、コロナ前は当たり前だと思っていたラスベガスの日常を切り取った、幸せな1コマのように思える。「ラスト・ベガス」に映し出された、古い街、新しい街はともに魅力的で、両方あることで歴史の厚みが感じられるが、今後もラスベガスは時代に合わせて変化を続けていくことだろう。



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ラストベガス(字幕版)

【JaIR特選!IRを実感できる映画ガイド】は毎週金曜日にアップします。次回、7月3日は「ゴッド・ファーザー」です。

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