世界中で新型コロナウィルスの影響を受けて、各国では出入国制限や都市封鎖がなされてきたが、徐々に制限の緩和が始まっている。日本型IRビジネスレポート(JaIR)では、IRがある主要な地域の新型コロナウィルス関連の動向を配信。韓国、ラスベガス、マカオに引き続き、今回はシンガポールの最新状況をレポートする。
3月に外国人労働者専用宿舎で新型コロナウィルスの大規模クラスターが発生し、政府方針により毎日数千単位で居住者全員の感染検査が進められてきたが、集団検査は8月第1週で一部の隔離対象者を除き完了することが発表された。新型コロナウィルス抑え込みに注力する一方、熱帯感染症であるデング熱の流行の兆しも見られ、二重の感染症対策が強いられる。
デング熱は、ネッタイシマカなどの蚊によって媒介されるデングウイルスによる感染症で、感染すると高熱や関節炎が発症し、重篤化して死に至る場合もある。7月25日までの1週間に1,793人のデング熱症例が報告されたが、この数字は、シンガポールでこれまでに記録されたデング熱症例の最大数である。国家環境庁は「今年のデング熱感染者数は2013年に記録した過去最多(2万2,170人)を上回るだろう」と警告している。
ラスベガス・サンズが運営するマリーナベイ・サンズ(MBS)では、ホテルを「段階的に」再開していくとし、7月14日発表のプレスリリースでは、ホテルの復帰について「7月17日より、お客様へのより高い保証とケアを確保するために、当社の象徴的なホテルを段階的に再開」「タワー1の客室数を制限し、一般予約が可能」とした。その後、8月1日には、第2、第3ホテルタワーも再開した。また、宿泊施設以外にもバンヤンツリースパなど、ホテルに関連する非ゲーミング施設も7月17日に営業を再開、サンズ・スカイパークの屋上エリアにある他の2つの飲食店「CÉ LA VI」および「Lavo Italian Restaurant & Rooftop Bar」を8月4日に再開する。これらの再開にあたり「安全な距離とゲストの管理対策」が実施されるとコメントした。
ゲンティン・シンガポールが運営するリゾート・ワールド・セントーサ(RWS)では、宿泊施設としてエクエリアス・ホテル、ホテル・マイケル、クロックフォードタワー、ビーチ・ヴィラ、オーシャンスイート、ツリートップロフトが再開した。
また、シンガポール政府観光局は、7月22日、中小企業支援を目的に、セントーサ島などでの、政府機関と共同した国内観光事業奨励予算を4500万シンガポールドル(約35億円)に設定したと報告。「地元の需要を促進するための最大のキャンペーン」と説明された。新しいキャンペーンは地元企業との共同で実施し、「地元住民のためのユニークでお得な体験、パッケージ、プロモーション」であるとした。これには、RWSなどのホテルや観光スポットとのコラボレーションも含まれている。
LVSはテナント支援のため、シンガポールとマカオの施設で、2020年上期のショッピングモールのテナント賃料のうち約1億7,000万ドル(約178億円)を免除すると発表した。LVSの最高財務責任者であるパトリック・デュモン氏は、第2四半期決算の中で「我々はモールを非常に重要な資産として、私たちの顧客の経験のために非常に重要であると考えている。私たちは、世界でもアジアでも有数のブランドとの関係を持っていて、そして、これらの関係の継続性を確保したいと考えています」とコメントした。
また、リゾート・ワールド・セントーサの7月15日報告によると、IRオペレーターであるゲンティン・シンガポールが、観光業の苦境の中でスタッフの解雇を実行することに言及した。「過去数ヶ月間、すべての費用を見直し、非必要な支出を除去し、30%まで管理の給料を減らした」「最新の見直しで労働力の合理化を実施するという困難な決定を下した」「慎重な審議と協議」の後に行われたとコメント。規模については言及されていない。
なお、シンガポール保健省の接触追跡報告によると、7月17日、マリーナベイ・サンズで2件、リゾート・ワールド・セントーサで3件、新型コロナウィルス感染者が訪問したことが判明した。当局は、両施設での感染者数までは明らかにしていない。
感染者の施設訪問に関し、ゲンティン・シンガポールは、「すべての一般的なエリアと高い接触点の洗浄と消毒の頻度」を高め、「立ち見客による賭けを受け入れない」と発言。マリーナベイ・サンズは、「各ゲームテーブルの立ち見客の数には制限があるが、電子ゲーム機とスロットの座席は少なくとも1メートル(3.3フィート)離れている」とコメントした。
カジノ産業のWEBメディア、GGRAsiaによると、ラスベガス・サンズのゴールドスタイン氏が、7月22日シンガポール市場について「私たちが最初に必要とするのは、空輸である」と語った上で、マレーシアとの国境が開く可能性があり「第4四半期にはレジャー旅行が始まるかもしれない」とコメントした。
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・海外版・IR記事まとめ
7/22~7/28 https://jair.report/article/394/
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7/8~7/14 https://jair.report/article/376/
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6/24~6/30 https://jair.report/article/352/
・シンガポール、7月1日にカジノ再開 https://jair.report/article/355/
・各地の新型コロナのIRへの影響レポート
シンガポール 6月18日版 https://jair.report/article/339/
新型コロナ軽症者が増加、併せてデング熱大流行の兆しも
シンガポールでは、新型コロナウィルス感染者数が減少傾向にあることから、6月28日にカジノを始めとした観光施設13か所を再開することを発表し、2か所のカジノは7月1日に再開した(ニュース記事「シンガポール、7月1日にカジノ再開」参照)。7月上旬、一時は新規感染者が100人台まで減少していたが、7月中旬以降緩やかな増加が見られ、1日の新規感染者は200~500人台を推移している。8月2日現在の新規感染者は313名、感染者累計は52,825人(回復者46,926人、死亡者27人)。感染者数は増えているものの軽症者が多く、ICU利用を重篤患者数はゼロ、死亡率も0.06%程度と低い数値である。3月に外国人労働者専用宿舎で新型コロナウィルスの大規模クラスターが発生し、政府方針により毎日数千単位で居住者全員の感染検査が進められてきたが、集団検査は8月第1週で一部の隔離対象者を除き完了することが発表された。新型コロナウィルス抑え込みに注力する一方、熱帯感染症であるデング熱の流行の兆しも見られ、二重の感染症対策が強いられる。
デング熱は、ネッタイシマカなどの蚊によって媒介されるデングウイルスによる感染症で、感染すると高熱や関節炎が発症し、重篤化して死に至る場合もある。7月25日までの1週間に1,793人のデング熱症例が報告されたが、この数字は、シンガポールでこれまでに記録されたデング熱症例の最大数である。国家環境庁は「今年のデング熱感染者数は2013年に記録した過去最多(2万2,170人)を上回るだろう」と警告している。
IRのホテルが再開、「ステイケーション」の国内需要を狙う
7月1日にカジノが再開し、7月17日にはマリーナベイ・サンズ(MBS)、リゾート・ワールド・セントーサ(RWS)のホテルが再開した。国外からの観光客誘致ができない状況の中、MBSとRWSはともに、自宅近くで普段より贅沢に休暇を過ごす「ステイケーション」での国内需要を狙っていくという。ラスベガス・サンズが運営するマリーナベイ・サンズ(MBS)では、ホテルを「段階的に」再開していくとし、7月14日発表のプレスリリースでは、ホテルの復帰について「7月17日より、お客様へのより高い保証とケアを確保するために、当社の象徴的なホテルを段階的に再開」「タワー1の客室数を制限し、一般予約が可能」とした。その後、8月1日には、第2、第3ホテルタワーも再開した。また、宿泊施設以外にもバンヤンツリースパなど、ホテルに関連する非ゲーミング施設も7月17日に営業を再開、サンズ・スカイパークの屋上エリアにある他の2つの飲食店「CÉ LA VI」および「Lavo Italian Restaurant & Rooftop Bar」を8月4日に再開する。これらの再開にあたり「安全な距離とゲストの管理対策」が実施されるとコメントした。
ゲンティン・シンガポールが運営するリゾート・ワールド・セントーサ(RWS)では、宿泊施設としてエクエリアス・ホテル、ホテル・マイケル、クロックフォードタワー、ビーチ・ヴィラ、オーシャンスイート、ツリートップロフトが再開した。
また、シンガポール政府観光局は、7月22日、中小企業支援を目的に、セントーサ島などでの、政府機関と共同した国内観光事業奨励予算を4500万シンガポールドル(約35億円)に設定したと報告。「地元の需要を促進するための最大のキャンペーン」と説明された。新しいキャンペーンは地元企業との共同で実施し、「地元住民のためのユニークでお得な体験、パッケージ、プロモーション」であるとした。これには、RWSなどのホテルや観光スポットとのコラボレーションも含まれている。
サンズはシンガポール復活を楽観視、ゲンティンはスタッフ解雇を予定
マリーナベイ・サンズ運営のラスベガス・サンズ(LVS)は、第2四半期の売上高が97%減少した。MICE顧客がゼロで、特にラスベガス停滞の影響が強く出ての数字であるが、シンガポールでの回復はラスベガスよりは早いと見られている。第2四半期発表後のコメントによると、LVSのロバート・グレン・ゴールドスタイン社長は「幸いなことに、シンガポールには裕福な外国人が在住しているため、地元でのビジネスがある。シンガポールはビジネスを行うのに非常に優れた国であり、シンガポールの永住権を持ち、そこに住んでいる外国人の強い顧客がいることは非常に幸運なことだ」と発言している。LVSはテナント支援のため、シンガポールとマカオの施設で、2020年上期のショッピングモールのテナント賃料のうち約1億7,000万ドル(約178億円)を免除すると発表した。LVSの最高財務責任者であるパトリック・デュモン氏は、第2四半期決算の中で「我々はモールを非常に重要な資産として、私たちの顧客の経験のために非常に重要であると考えている。私たちは、世界でもアジアでも有数のブランドとの関係を持っていて、そして、これらの関係の継続性を確保したいと考えています」とコメントした。
また、リゾート・ワールド・セントーサの7月15日報告によると、IRオペレーターであるゲンティン・シンガポールが、観光業の苦境の中でスタッフの解雇を実行することに言及した。「過去数ヶ月間、すべての費用を見直し、非必要な支出を除去し、30%まで管理の給料を減らした」「最新の見直しで労働力の合理化を実施するという困難な決定を下した」「慎重な審議と協議」の後に行われたとコメント。規模については言及されていない。
なお、シンガポール保健省の接触追跡報告によると、7月17日、マリーナベイ・サンズで2件、リゾート・ワールド・セントーサで3件、新型コロナウィルス感染者が訪問したことが判明した。当局は、両施設での感染者数までは明らかにしていない。
感染者の施設訪問に関し、ゲンティン・シンガポールは、「すべての一般的なエリアと高い接触点の洗浄と消毒の頻度」を高め、「立ち見客による賭けを受け入れない」と発言。マリーナベイ・サンズは、「各ゲームテーブルの立ち見客の数には制限があるが、電子ゲーム機とスロットの座席は少なくとも1メートル(3.3フィート)離れている」とコメントした。
マレーシア国境の制限緩和への期待
シンガポールとマレーシア政府は7月14日、両国間の出入国制限を緩和すると発表した。8月10日からビジネスや公務に関わる人の行き来と、それぞれの国で働いているシンガポール人、マレーシア人の短期帰国を認める方針だ。まずは、ビジネス客に限っているが、今後、緩和拡大が期待されている。カジノ産業のWEBメディア、GGRAsiaによると、ラスベガス・サンズのゴールドスタイン氏が、7月22日シンガポール市場について「私たちが最初に必要とするのは、空輸である」と語った上で、マレーシアとの国境が開く可能性があり「第4四半期にはレジャー旅行が始まるかもしれない」とコメントした。
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7/22~7/28 https://jair.report/article/394/
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