<IR用語集・基礎知識> インバウンド

JaIR編集部

インバウンド(Inbound/外から内に入る)とは、旅行業界では外国人が訪れてくる旅行のことを指し、日本においては「海外からの訪日旅行」を意味する。近年は中国や東南アジア諸国の経済成長、LCCの就航便数増加等を理由に、その数は2019年時点で3,188万2,049人(消費額4兆8,135億円)にものぼった。

日本型IRでは、インバウンド客、その中でも特に消費額の大きい富裕層を呼び込むことで、税収増と地域振興に寄与することを目指す。IR整備法では、日本におけるカジノIRの建物床面積の3%を超えないことが上限とした上で、IR全体は以下の施設から成る。

①国際会議場施設
②国際的な規模の展示会・見本市を開催する施設
③日本の観光の魅力を増進する施設
④日本各地の観光情報を提供し観光客の送客や宿泊などを一元的に行う施設
⑤高度化した需要や多様化に対応した宿泊施設

新型コロナウイルス感染症で人の移動が大きく見直され、インバウンドにおいては人の数よりも消費額という、「量より質」が政府によって強く求められる中、これらIR施設はインバウンド客を増やすための、さらには全国に送客し、リピーターになってもらうための重要拠点と位置付けられている。現代のIRの概念が最初に作られたシンガポールでも、IR開業前の2009年には968万人(消費額1兆円)だった外国⼈旅⾏客が、2014年には1,510万人(消費額1.86兆円)まで増加した。

日本政府は、2030年までにインバウンド客6,000万人(消費額15兆円)を達成する目標を掲げる。しかし、コロナで観光産業は未曾有の打撃を受け、2020年のインバウンド客は年間411万5,900人(7,446億円)にまで落ち込んだ。国際会議についても、開催件数222件(前年比94%減)、参加者総数96,271人(前年比95%減、うち外国人参加者数6,603人)と、現行基準での統計では過去最低に。アフターコロナを見据え、現在は受入環境の整備強化(Wi-Fi、多言語化等)をはじめ、インバウンド客を対象とした小規模分散型パッケージツアーの実施、アドベンチャーツーリズム(※)を軸とした日本の観光資源の海外への売り込みなど、様々な対策が検討実施されている。また、2020年6月には「上質なインバウンド観光サービス創出に向けた観光戦略検討委員会」も立ち上がり、産学官の連携を強めている。

※アドベンチャーツーリズムとは、「アクティビティ」「自然」「文化体験」のうち、2つ以上で構成される旅行を指す。

■参考記事
インバウンド回復の鍵は富裕層の取り込み 観光庁の報告書を読み解く
https://jair.report/article/685/