【横浜市】IR反対派の山中竹春市長が当選しIR推進室の作業を停止
IR(統合型リゾート)の是非が、コロナ対策とともに大きな争点となった横浜市長選挙が2021年8月22日、投開票が行われ、過去最多の8人が立候補する中、元横浜市立大学教授でデータサイエンスや公衆衛生の専門家である山中竹春氏が、前国家公安委員長で元衆議院議員の小此木八郎氏、IR推進派である現職の林文子氏らを抑えて、初当選を果たした。
横浜IRには、ゲンティン・シンガポール(以下ゲンティン)とセガサミー・ホールディングス(以下セガサミー)などからなるグループと、メルコリゾーツ&エンターテインメント(以下メルコ)と大成建設などが作るグループ(未公表)の2者が応募していて、夏には確定する予定だったが、山中市長は、当選後の会見で、IR推進室の機能を停止する事を明言し、事業者の選定作業を中止する考えを示した。これらの流れから、横浜市は、国のIR区域整備計画の認定申請からは離脱することになった。
JaIRの取材に対して、観光や経営の観点でIRを研究している東洋大学国際観光学部国際観光学科の佐々木 一彰教授/博士(地域政策学)は、以下のようにコメントしている。
「横浜市はIRの誘致には困難な状況になったのでIRに代わる税収を上げる代替手段を考え、実行しなければならなくなりました。今後の労働可能人口の減少とそれに伴う所得税の減少による財政の悪化を、いかに食い止めるかについて次の首長は考えなければならなくなったということです」
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【和歌山県】全国に先駆けて、優先権者のクレアベストと協定を締結
和歌山県は2021年8月25日、和歌山県は和歌山県特定複合観光施設設置運営事業に係る優先権者、クレアベストニームベンチャーズ株式会社及びClairvest Group Inc.のコンソーシアム(以下、クレアベスト)と基本協定を締結した。これにより、県とクレアベストが共同して、国へのIR認定の申請期限である2022年4月28日までに、区域整備計画の作成を行う事が正式に始動した。今後の流れは、県とクレアベストが共同して、地域振興に大きく寄与し、国の観光立国政策に貢献する優れた区域整備計画を作成し、申請期限である2022年4月28日までに国への申請を行う。その際、和歌山県はクレアベストに対し、提案内容の更なるブラッシュアップ、事業実施体制の強化などを求めるとともに、地域経済の発展や地元雇用の創出に寄与するため、県内事業者が広く参画できるオール和歌山の体制づくりを求めていく。
また、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえながら、説明会等を実施することで、県民に対し、IRに関する正しい情報や和歌山県がIR誘致を推進する理由を発信していくことを求めていく、と言う。
横浜市長選では推進派の現職が敗れ、反対派の市長が誕生したが、仁坂吉伸知事は2021年8月24日の記者会見で、「IRを良くないと思う人が増えるかもしれないが、和歌山県は意味もなくIRを推進しているわけではない。今後の発展を考えたら、衰退を食い止めるために、かなりの投資をしないといけない」と指摘、IR推進の方向に変更はないことを明言。「東京や横浜のように、栄えている地域であれば推進しない」と、和歌山県の立場を説明した。
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【長崎県】8月にカジノ・オーストリアを選定、協定締結
長崎県は2021年8月6日、九州・長崎特定複合観光施設設置運営事業募集要項に規定する設置運営事業予定者(以下「優先交渉権者」)にCASINOS AUSTRIA INTERNATIONAL JAPAN(代表企業名:CASINOS AUSTRIA INTERNATIONAL JAPAN 株式会社。以下、カジノ・オーストリア)を選定し、8月30日付で、基本協定を締結し、設置運営事業予定者として決定した。提案内容は以下の通り。
【開業総事業費】3,500億円(想定)
【延べ来訪者数】840 万人/年(想定)
【コンセプト】
<東洋文化と西洋文化の融合 -真の和洋折衷を実現->
九州・長崎の歴史文化を継承し、オーストリア国有企業グループの強みを活かした伝統的で高級感のあるIR施設。長崎を拠点として「観光産業革命」を実現し、九州、日本、アジア、世界、全てが融合する世界都市を目指す。
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JaIRの2021年2月の取材に対して、カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン代表取締役社長の林明男氏は、オーストリアの国営企業ということで、きわめて厳しい監査を経て事業を運営しているのが大きい、と説明。たとえば、贈収賄防止マネジメントシステムの世界標準規格であるISO37001を世界のカジノグループで唯一取得している。また、2008年、2009年、2011年、2012年にヨーロッパで最高の権威を持つ「国際ゲーミング賞」、2010年には「責任あるゲーミング」でのオペレーター賞、2015年にも欧州のゲーミングオペレーターの最高賞もとっている、と指摘。過去多くのカジノユーザーへ対処してきた実績を元に、ギャンブル依存症対策も欧州での知見を活かせるという。
また、カジノ・オーストリアは国営企業としてオーストリアの持つ有形・無形の資産を十分に活用できるという強みがある、と言う。たとえばウィーン少年合唱団やウィーン室内管弦楽団など世界最高峰の音楽団体、世界中にファンを持つクリムトやココシュカ、エッガーなどの美術コレクションとのコネクションも持っている。長崎新聞などによると、世界で高級ホテルを展開する「ハイアット」(米国)がカジノ・オーストリアに参加する事が新たに分かった、と言う。
次点になったOshidori International Development合同会社(本社:長崎市、以下オシドリ)と、NIKI Chyau Fwu (Parkview) Group(以下NIKI)は、長崎県から「廉潔性調査に懸念がある」と言われたことを公表し、長崎県のRFPプロセスが「倫理的かつ公平公正に実施されていない」と異議申し立てをしているが、長崎県は以下のように説明をしている。
〇長崎県は、募集要項に沿って、公平かつ公正な手続きで進めております。
〇公募プロセスの途中なので、応募者との特定なやり取り等はご説明できませんが、長崎県は今日現在いかなる応募グループからも辞退の連絡などは受け取っておりません。
長崎新聞などによると、候補地のハウステンボスのある佐世保市の朝長則男市長は8月27日の定例記者会見で、横浜市長選で山中氏の当選について、「長崎IRが優位になる話ではない。県やIR事業者と一体となって進める」と述べ、カジノ・オーストリアについては、「ハウステンボスとの整合性を重視し、懸案事項対策もしっかりとした考えを持っている」と評価した。
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