長崎IRの第二次審査対象は残る3グループ オシドリ、カジノ・オーストリア、NIKIの戦略は?

JaIR編集部

 長崎県のおこなう、九州・長崎特定複合観光施設(IR)設置運営事業にかかる事業者の公募は、第一次審査の結果、3月中旬に、応募者は5グループから3グループに絞られた。次の第二次審査書類の受付期限は6月まで(予定)となっている。県は、第二次審査に参加する応募者の選定(第一次審査)及び設置運営事業予定者の選定(第二次審査)にあたり、客観的な評価を行うために、有識者等からなる審査委員会(以下「審査委員会」という。)を設置し、審査委員会から設置運営事業予定者審査基準及び評価内容等についての意見を聞くこととしている。

 審査結果の公表は8月(予定)で、ここで長崎IRの事業者が決定し、都道府県・政令市から国へのIR区域整備計画の認定申請を、10月1日~2022年4月28日に行う。

 長崎県は、IRの各候補地の中でも飛びぬけて多い5グループが手を挙げて、審査は二段階で行われている。現在、第一次審査を通過し、第二次審査の対象となっている3グループについて、コンセプトや会社概要を改めてご紹介する(以下、五十音順)。

■第一次審査通貨グループ名 *五十音順

・オシドリ・コンソーシアム
(代表企業名:Oshidori International Holdings Limited)

・CASINOS AUSTRIA INTERNATIONAL JAPAN
(代表企業名:CASINOS AUSTRIA INTERNATIONAL JAPAN 株式会社)

・NIKI Chyau Fwu(Parkview) Group
(代表企業名:株式会社 THE NIKI)


長崎IRの予定地は、佐世保のハウステンボスと隣接するエリア ©ハウステンボス/J-19501
 

一次審査通過の3グループの提案コンセプトと会社情報

【オシドリ・コンソーシアム】

 オシドリ・インターナショナル・デベロップメント合同会社は、香港の総合金融サービス会社オシドリ・インターナショナル・ホールディングス(香港証券取引所上場)を親会社に持つ、長崎県佐世保市の統合型リゾート開発を目的として設立された日本法人。オシドリ・インターナショナル・デベロップメント合同会社の会長兼社長兼CEOのアレハンドロ・イエメンジアン氏は、MGMリゾーツの元社長及びMGMスタジオの元CEOで、IR事業に豊富な経験を有し、IRのデザイン、設計、運営を総合的に行う。

 1月28日には、統合型エンターテイメント・リゾート(IER)の総合開発を世界各地で展開するモヒガン・ゲーミング&エンターテイメント(本社:米国コネチカット州アンカスビル、CEO:マリオ・コントメルコス氏、以下モヒガン)とのパートナーシップ締結を発表。モヒガンは統合型エンターテイメント・リゾート開発企業。代表施設には米国コネチカット州アンカスビルの「モヒガン・サン」、韓国インチョンの「インスパイア」(工事中で、2023年始めに開業予定)、カナダ・ナイアガラの「カジノ・ナイアガラ」などがある。コネチカット、ニュージャージー、ワシントン、ペンシルバニア、ルイジアナの米国各州と北アジア、カナダ・ナイアガラの世界各地で統合型エンターテイメント・リゾートを所有、開発、運営している。

 会長兼社長兼CEOのイエメンジアン氏は、「オシドリは、アジア最高のIRとして、リゾートをつくるだけではなく、IR事業を通じて、長崎・九州に対する社会的責任を果たすこと、IRを起爆剤として、新しい社会を地元の皆さんと一緒につくることを自らのルールとしている」、「長崎地域の豊かな文化と多様性を強調することを目指し、このプロジェクトが九州全域にポジティブな影響を与えることを期待しています」などの発言をしている。

 1月15日に、同社の最高執行責任者(COO)として中谷圭吾氏の就任を発表。また、一次審査通過後の3月30日には、4月1日付けで、執行役員CSR担当としてコミュニティメディアNEXTWEEKEND代表の村上萌氏が就任することを発表した。最高執行責任者(COO)の中谷氏は、博報堂に入社後、観光分野やクールジャパン関連業務、日本産品の海外展開に関わる業務に従事し、カリブ海を含む北米、欧州、アジア各国のIRにも明るく、世界各国のIRの事情に通じている人物。執行役員CSR担当の村上氏は就任にあたって、「地域課題の解決に貢献できるIR開発、およびその先にある理想のまちづくり」を目指しているとコメントしている。また、地域貢献においては、2月10日に、日本プロサッカーリーグに加盟するプロサッカークラブであり、長崎県全域をホームタウンとする「V・ファーレン長崎」とオフィシャルパートナー契約を締結したことを発表している。

・コンセプト
これまでの発表の中では、明確な長崎IRのコンセプトは示されていない。オシドリの会長兼社長兼CEOのイエメンジアン氏は「長崎地域の豊かな文化と多様性を強調」することを目指すと発言している。



【カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン(CAIJ)】

 カジノ・オーストリア(CA)は、1934年にオーストリア政府により設立された国営IR事業者で、カジノ・オーストリア・インターナショナル(CAI)は100%子会社。オーストリア政府は34%の株を持っている。

 CAは、多くのカジノやロトくじ、宝くじ、オンラインゲーミングなどを運営しており、子会社CAIは、スイス(ルツェルン)、オーストラリア(ケアンズ)、セルビア(ベオグラード)、ベルギー(ブリュッセル)の4か所でカジノリゾートを運営しており、世界35か国に300か所のカジノプロジェクトを展開している。CAIの日本支社、CAIJの社長は林明夫氏。林氏は、再生医療分野で株式会社TESホールディングスとバイオス株式会社の代表取締役も務めている。

 2020年2月開催の九州でのイベントにて、CAIは、建築家の隈研吾氏との協業を発表した。ハウステンボスの世界観と調和したヨーロッパ型の街並みとともに、”湯治場”を思わせる和風の空間も共存する空間を考えていくとしている。

・コンセプト
スクラップ&ビルドではなくストック&リノベーションの開発を目指すとしており、元々オランダの景色や建物を精密に再現したハウステンボスに作られるIRであることから、候補事業者の中で唯一のヨーロッパの事業者であり、ウィーンやザルツブルグでの実績やオランダでの実績などをもとに、東洋と西洋文化の融合を謳っており、真の「和洋折衷」を目指すとしている。



シュロスクレスハイムのカジノ・オーストリアが運営するカジノ・ザルツブルク、クレスハイム宮殿。Matthias Kabel CC BY 2.5


【NIKI Chyau Fwu(Parkview) Group】

 NIKI & Chyau Fwu (Parkview) Groupは、二期リゾートが運営してきた二期倶楽部を源流とする日本企業、株式会社THE NIKIと、1950年代に台湾で設立された先進的な建設・開発企業であるチャウフー(Chyau Fwu)社を起源とするコングロマリット企業、チャウフー (パークビュー) グループのコンソーシアム。

 二期倶楽部は、「自然と文明、東洋と西洋の融合を通じ、最高のおもてなしをする」というコンセプトで、リゾート・ホスピタリティ施設を運営。株式会社THE NIKIは、二期倶楽部(栃木県那須)の2017年秋までの30年以上に及ぶリゾート運営の経験と、THE NIKIという新たなブランドによるホスピタリティ・サービス提供を目的に設立されている。

・コンセプト
同グループのホームページに掲載されているコンソーシアム紹介には、長崎IRの目指す方向として、IR ×スーパーシティ=自律型スーパー・スマートシティというコンセプトが掲げられており、「IRにより市場(交流人口増)と資金(カジノ税収等)を獲得し、スーパーシティ構想を推進します。地方であっても、IRを原動力に、スーパーシティ構想を自律的に拡大することが可能になります」と説明している。



NIKI & Chyau Fwu (Parkview) Groupのホームページより


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