【IR映画ガイド】恋愛映画からラスベガスの結婚ビジネスを考える「ベガスの恋に勝つルール」 (1/2)

二上葉子

 統合型リゾート(IR)を学ぶ映画連載の第20回目となる今回は、ラスベガスの恋愛映画の有名作「ラスベガス万才」「ハネムーン・イン・ベガス」「ベガスの恋に勝つルール」を順番に取り上げる。その中でも「ベガスの恋に勝つルール」を通して、ラスベガスにおける結婚ビジネスについて考察してみたい。IRでの豪華結婚式についてもご紹介する。*ネタばれあり


「ラスベガス万才」(1964年 アメリカ)
https://movie.walkerplus.com/mv9514/

「ハネムーン・イン・ベガス」(1992年 アメリカ)
https://movie.walkerplus.com/mv10242/

「ベガスの恋に勝つルール」(2008年 アメリカ)
https://movie.walkerplus.com/mv37323/


 

恋愛映画の舞台となったラスベガス

 これまでIR映画ガイドの連載で様々な作品をご紹介してきたわけだが、ラスベガスを舞台にした映画ジャンルで忘れてはならないのは、「恋愛映画」だろう。ラスベガスには豪華なホテル、カジノ、バーやナイトクラブ、プールなど、スクリーン映えする場所がたくさんあって、また各地から人が集まってくる街なので、物語を描きやすいことは確か。きらびやかな街で現実にも恋愛ドラマは数々生まれているのだろうと想像が膨らむ。

 古いところでのラスベガスを舞台にした恋愛映画の有名作は、エルヴィス・プレスリー主演作の「ラスベガス万才」。エルヴィスの映画については、連載第11回でも扱ったが、この映画はラスベガスの明るく楽しいイメージを描き出している。特にラスベガスの街が印象的に切り取られている場面は、ひとめぼれした女性を探して街じゅうのホテルでショーを鑑賞するシーン、フラミンゴ・ホテルでのプールサイドでの一コマ、フレモント・ストリートからスタートするカーレースの場面など。サーキットやリゾートホテルを舞台にしたミュージカルで、健康的で爽やかな恋愛が描かれた。


Fremont Street 1952(パブリックドメイン)


 「ラスベガス万才」から時代は下り、1990年代のラスベガスでの恋愛映画は、ニコラス・ケイジの主演作「ハネムーン・イン・ベガス」(1992年)「リービング・ラスベガス」(1995年)の2作が有名だ。アルコール依存症の主人公と娼婦の恋愛を描く「リービング・ラスベガス」は、次回の連載で掘り下げるので、今回は詳しく紹介しないが、本作はラスベガスでは明るい恋愛映画が多い中で、破滅的な恋愛を扱った異色作である。

 もう1作「ハネムーン・イン・ベガス」は、ラスベガスを舞台にしたラブコメディ。残念ながら、「ハネムーン・イン・ベガス」は日本ではDVD化されておらず、配信もされていないので、見られるとしたらVHSビデオか海外のDVDのみ。当時、ニコラス・ケイジは、この作品でゴールデングローブ賞主演男優賞ノミネートもしたのだが、パッケージがビデオからアップデートされなかったため、日本ではめったに見られない作品となってしまった。相手役は若き日のサラ・ジェシカ・パーカー。その後、ドラマシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ」で、主人公のキャリー・ブラッドショーを演じて大ブレイクする前のサラが拝める貴重な作品だ。

 「ハネムーン・イン・ベガス」では、ニコラス・ケイジが、ラスベガスでエルヴィス・プレスリーのそっくりさんの一団と遭遇する場面があるのだが、ニコラスもエルヴィスの格好をして登場する。ニコラスのどや顔が印象的。ちなみにニコラス自身、エルヴィスのコレクターとして有名で、その後、エルヴィスの娘リサ・マリー・プレスリーと2002年に結婚、その2年後に離婚している。映画は映画で、ラスベガスらしさ全開のぶっ飛んだ展開なのだが、私生活の恋愛のほうがさらに驚きの展開である。

 映画の全編でエルヴィスの曲が使われ、ビリー・ジョエル、ボノら、豪華アーティストがカバーしていて、サントラは今も音楽配信で楽しめる。劇中、子ども時代のブルーノ・マーズがエルヴィスに扮してステージで歌う場面もあるので、音楽ファンも必見。人気歌手ブルーノ・マーズは影響を受けた人物としてエルヴィスを挙げていて、2021年にラスベガスでのレジデンシー・ショーも決定。エルヴィスもブルーノ・マーズも何かとラスベガスに縁がある(さらに言えば、ハワイにも)。映画のその後の展開としては、映画原作のミュージカルがブロードウェイで上演された。わかりやすいラスベガスらしさ、エルヴィスへのオマージュが詰まった作品である。


ニコラス・ケイジとリサ・マリー・プレスリー
 

酔った勢いで超スピード婚!? 結婚式の聖地ラスベガス

 さて、ラスベガスの恋愛映画の系譜に話を戻すと、次に取り上げたいのは、「ベガスの恋に勝つルール」(2008年)。失恋&失業の憂さ晴らしでラスベガスを訪れ、初対面で意気投合した男女が一晩で結婚してしまうところから始まる物語で、主演はアシュトン・カッチャーとキャメロン・ディアスという王道の恋愛映画だ。

 タイトルにベガスとあるので、全編ラスベガスの映画かと思いきや、実はラスベガスの登場は最初のあたりのみ。残りはほぼニューヨークが舞台となる。ラスベガスの場面では、主演の二人がそれぞれ親友を連れて、プラネット・ハリウッドのホテルに宿泊するのだが、ダブルブッキングして部屋で鉢合わせして大仰天。フロント係にクレームをつけると、最上階のペントハウススィートにアップグレードとなり、リムジン送迎のVIP待遇を勝ち取って、そこから一気にゴージャスでハイテンションな旅に様変わりする。ナイトクラブで浴びるようにお酒を飲み、キャメロン・ディアスはフロアで大暴れ。テンポよく、ご都合主義的な展開で、この先さらにラスベガスらしいあり得ない展開が続く。

 泥酔して翌朝目覚めると、二人は夜間に勢いあまって結婚してしまったことを思い出し、ひどく後悔。互いに離婚話を切り出すのだが、キャメロン・ディアスの25セントコイン(約25円)を、たまたまアシュトン・カッチャがスロットマシンに投入したことで、ジャックポットが大当たりして、一瞬にして300万ドル(当時のレートで約3億円)を手にし、この大金が夫婦の共同財産となったことから、事態がよりややこしくなる。その後、ニューヨークに舞台を移し、裁判所の判断による、二人の離婚を前提とした共同生活が始まる。