【新型コロナのIRへの影響レポート】日本 7月10日版 (1/2)

JaIR編集委員・玉置泰紀

 7月5日の東京都知事選で、小池百合子知事が前回の291万票を大きく上回る366万票を獲得して再選を果たした。既に統合型リゾート(IR) への区域認定申請を表明している大阪府・市、横浜市、和歌山県、長崎県にとっても、メリットデメリットを検討しているとしてきた東京都の出方は大きな影響を与える。各自治体は、国の基本方針策定が遅れる中、RFPの提出期限や発表スケジュールを遅らせてきており、前回のレポート以降、各候補地、政府の動きをまとめた。

【政府】各自治体の発信あるも、国のIR受付日程は堅持!?

 第201回国会は、6月17日に閉会した。新型コロナウイルスの影響で、海外事業者が帰国して直接のミーティングなどが難しくなり、ラスベガス・サンズが日本でのIR事業から撤退するなど、全体にスケジュールが遅れつつある中、7月26日を基本方針策定・公布の期限としているIR整備法に関する動議が国会に出るか注目されたが、出なかった。

 赤羽一嘉国土交通大臣は4月13日の衆議院決算行政監視委員会で、新型コロナウイルスによるIRの整備スケジュールの変更はないと答弁。その際、各自治体から変更の要請が来ていないと説明しているが、通常国会閉会後、6月30日の定例記者会見では、昨年11月に公表された基本方針案に示された国への申請受付期間(2021年1月4日~7月30日)について各自治体に支障がないか問い合わせ中であると繰り返した。大阪府・市や横浜市、和歌山県、長崎県などは、折に触れて、国のスケジュールに触れているが(後述)、決定的な変更フェーズに入っているかは不明。

 基本的な流れでは、政府は1月7日、内閣府外局にカジノ管理委員会を設置。ここで、カジノ管理委員会規則を整備し、免許ライセンスや、カジノで可能なゲームの種類、クレジット制度など運営ルールが決まる。これに基づき、国土交通省は基本方針の策定・公表を1月中に行う予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期。当初3~4月にはという見込みが、いまだにできていないが、IR整備法の公布から2年を超えない7月26日までに、基本方針を策定し、政府のIR推進本部が決定することになる。6月30日の定例記者会見では、赤羽大臣はカジノ管理委員会との協議は最終決着していないと説明している。

 基本方針の策定・公布後は、IR区域整備計画の提出期限が閣議決定される。国土交通省は、IR区域整備計画の審議会を設置し、提出情報や認定の判断基準の詳細を年内に明らかにする。これを受けて、各自治体は最終的に一つの事業者(コンソーシアム)を選び、政府に対して認定申請を行う。 

 この「統合型リゾート(IR)の都道府県、政令指定市からのIR区域整備計画の認定申請の受け付け」の期間が2021年1月4日~7月30日。8月以降、出そろった各自治体・事業事業者の候補から最大3か所を選び、政府IR推進本部がIR区域整備計画を決定する。最終的に2025~26年をめどにIRが開業する予定だ。

 通常国会でIR整備法に関する動議が出なかったことから、7月26日が基本方針策定の期限になるが、昨年出された基本方針案にかなり具体的な説明がされており、このあたりの法的な解釈も焦点になりそうだ。確定した基本方針を待って各自治体の活動は本格的にスタートする事になるが、ぎりぎりの進行になっていることと、2021年の受付期間について延期を要望する声もあり、予断を許さない。

■カジノ管理委員会ホームページ
https://www.jcrc.go.jp/

 

【東京都】東京都知事選、小池知事圧勝。ついに東京が動くか!?

 圧倒的な経済規模、世界へのアクセスを誇る巨大都市、東京の動向は、IR申請を表明している4つの自治体も気になるところだろうが、7月5日の都知事選で、現職の小池百合子知事が圧勝したことにより、新型コロナウイルス対策に集中している状況ではあるが、経済対策も焦眉の急であり、湾岸再開発の軸の一つであるIRについても動きが出る可能性がある。

 小池知事は、統合型リゾート(IR)については、一貫して「メリット・デメリットを見ながら検討している」と発言してきたが、「国の計画が後ろ倒しになってきていることも注視している」とも指摘しており、国のIRの基本方針策定・公布の予定が見えず、全体にスケジュールが遅れつつある中、後発組になる東京がキャッチアップできる状況は整ってきている。

 東京都港湾局は、2014年度~2019年度に7回、IRについての調査を実施しており、2018、2019年からは東京都に立地した場合の影響調査に踏み込んでおり、2020年度も継続する。

 東京都は、2018年に「東京ベイアリアビジョン(仮称)の検討に係る官民連携チーム」の設置をしており、3回のワーキンググループを経て、昨年10月に最終提案「東京ベイエリアTowards2040 11カラーズ;未来創造域のデザイン」が提出されている。この11の提案のうち4番目が「MICE、IR、トランジットツーリズム」で、「世界に向けて『ここにしかない』ベイエリアツーリズムを展開する」として、イメージパースとともに、「東京の国際競争力強化『稼ぐ東京』のためにMICE、IR施設を整備して、国内外から人を集める」と謳われている。

 港湾局は昨年10月31日には、IRやMICEとは書かれていないものの、「青海地区のまちづくりに向けた民間事業者からの事業提案」の募集(サウンディング調査)の実施を発表しており、今年の1~2月に対面式で聞き取りを行っている。

 東京都は過去、IRについて、歴代都知事の石原慎太郎氏、猪瀬直樹氏、舛添要一氏が比較的、前向きに取り組んできた。しかし、猪瀬氏、舛添氏の立て続けの失脚で、都政の運営が弱体化し、チャレンジであるIR構想は「検討」課題になりトーンダウンした。今回、小池氏が選ばれたことにより、安定した都政が可能になり、「検討」で先延ばししてきたIR案件を、国の施策の新型コロナウイルスの影響による遅れもあり、後発組であることを逆に強みにして最適な提案を打ち出せる条件はそろってきている。

■東京都港湾局ホームページ 特定複合観光施設に関する調査分析報告書
https://www.kouwan.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/announcement/irchosa.html

東京都庁。その動向に全国の自治体、事業者が注目
 

【横浜市】6月30日の市会で「横浜IRの方向性(案)」について説明

 横浜市は6月中に実施するとしていた「横浜IRの方向性(案)」の説明を6月30日の市会で行ったが、同時に予定されていた「実施方針(案)」「募集要項(案)の骨子」の説明については、国の基本方針が策定されていなかったこともあり、見送られた。8月に延期するとされていた「横浜IRの方向性」「実施方針」「募集要項の骨子」の公表については、現状では変更なし。ここからRFPはスタートする。

 方向性(案)については、過去最多5,071件の意見が集まったパブリックコメントを反映させ、感染症への危機管理計画を定めることや、アジアを代表するMICE都市を目指すこと、ドレスコードなどが新たに加えられた。

 7月3日の定例記者会見で、林文子市長は、国のスケジュールが変わることはいいことではない、と指摘し、国土交通省に変更は要求していないと話した。ただし、国の基本方針策定が遅れた際は、横浜市の対応を考える必要がある、2021年の受付期間についても、厳しいスケジュールと話した。

■横浜市ホームページ IR(統合型リゾート)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/IR/

 

【長崎県】RFPの公表は7月末か!?国の受付期間も変更の要請は無し

 長崎県議会の6月19日、22日、26日の質疑で、統合型リゾートに関する質問があり、これに答える形で、これまでに発表されてきたRFP(事業提案)内容を確認、さらには、より詳しい答弁を幾つかしているのでまとめたい。

 非公開とされている19日に終了したRFP事業者説明会については、「参加は多数」であったと答えている。RFC(アイデア募集)に参加した、香港資本のカレント‐ソフィテルマカオ・アットポンテ16&ゲットナイスホールディングス、同じく香港資本のオシドリ・インターナショナル・デベロップメント、そしてカジノ・オーストリア・インターナショナルの3社を含めて多数の参加者があったという事で、手ごたえはあったようだ。
 
 また、事業者の選定を行う審査委員会を先月、5月13日に設置(この日、第一回の委員会を開催)、審査委員は各分野の専門家8人と明らかにし、今後の審査スケジュールや評価項目についても検討を進めている、という。
 
 RFPの開始については、中村法道・長崎県知事が18日、「県としては、全国3箇所を上限とする区域認定の獲得に向け、この夏にも事業者の公募・選定に着手した上で、概ね冬頃には事業者を決定することを想定し、しっかりと準備を進めてまいりたいと考えております」と答弁している。国の動き次第では、長崎県が先行する可能性もある、という。

 長崎新聞によると、国土交通省とは、電話で連絡を取っていて、国のIR申請受付期間については、現状の2021年1月4日~7月30日で準備が整うと回答している、とのこと。7月末にRFPの手続きを開始、応募期間は8月末から9月、提出書類を秋頃、12月から2月に事業者選定するという方向。
 
 段取りとしては、IR区域整備計画は、2021年6月議会で議決を得て、国に申請することになる。IR区域整備計画骨子の行政部分については、IR基本構想に則って先行作成するとしている。

■長崎県ホームページ IR推進課
https://www.pref.nagasaki.jp/section/ir-shitsu/

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(長崎県 企画部 IR推進課 國廣 正彦氏インタビュー)
https://jair.report/article/331/

長崎県・佐世保市IR推進協議会作成の九州・長崎IR基本構想より