【新型コロナのIRへの影響レポート】日本 7月10日版 (2/2)

JaIR編集委員・玉置泰紀

【大阪府・市】大阪府・大阪市IR推進局がRFP提出スケジュールを当面延期

 大阪府・大阪市IR推進局は6月23日、令和2年(2020年)7月頃としていた提案審査書類(RFP)の提出期限について、「現時点において国の基本方針が策定されていない」ことと、「新型コロナウイルス感染症の影響を見極めていく必要があること」等を踏まえて、「当面の間延長する」ことを発表した。

 また、具体的な提案審査書類の提出期限については、国の基本方針の策定後に、「その内容及び新型コロナウイルス感染症の影響等を踏まえ」決定する、としている。

 大阪府IR推進局は今年3月には、新型コロナウイルスを考慮して、実施方針案、募集要項を修正。事業者選定の書類提出期限が4月から7月に、選定時期が6月から9月に延期していたが、提出期限がさらに延長されたことになる。土地の事業者への引き渡しも2021年秋から2022年春に延期され、「大阪・関西万博前の開業を目指す」(部分開業)の条項が削除された。万博後の開業でよいことになった。

 大阪市の松井市長は6月4日の定例記者会見で、記者から「~提案書類の書類提出期限は7月頃を予定していましたが、ここの期限は変わらないということなんでしょうか」と聞かれ、「当面、半年は延ばさないかんでしょうね」と答えている。

 同じ会見の中で、松井市長は、来年の1~7月に予定されている国の認定申請の受付期間についても、「国の申請期間も、これはちょっと延長されるというか、国の方も今そういう検討してると思いますよ」と指摘。

 大阪府市のIRに関して、「基本協定を取りまとめるのに、まず1年遅れるぐらいの話になってきてますので、全体的に1年から2年程度先送りということになるんじゃないかと、こう思ってると」と見込みを話していたが、まずは、直近に迫っている提案審査書類の提出期限を、時期を明示しないで、延期発表をしたわけだ。

 いずれにせよ、国の基本方針の策定・公布のIR整備法での期限である7月26日を見据えながら、発表内容に応じて、仕切り直したスケジュールを出していくことになる。提出者は、オリックス・MGMコンソーシアムに絞られているが、新型コロナウイルスに直撃された結果、2025年の大阪・関西万博後の開業という事になり、ソサエティ5.0、SDGsを踏まえた万博が切り開く、新しいリスク管理、MICE、観光、インバウンドを提案内容に上書きしていく必要が出てくるだろう。

 コンソーシアムのMGMの海外スタッフは本国に戻っている人が多く、会議などもリモートが中心の状況。ラスベガス、マカオのIRの運営も大きな打撃を受けており、大阪府市はそこも考慮をするとしている。オリックスも新型コロナウイルスの影響を踏まえつつ、RFPのまとめを進めている。

■大阪府ホームページ IR推進局
http://www.pref.osaka.lg.jp/bu_irsuishin/

■JaIR関連資料データベース
大阪府・夢洲地区特定複合観光施設設置運営事業に関する提案審査書類の提出期限延長を発表
https://jair.report/archive/295/

■関連記事
大阪のIRは延びるのか?6月4日の松井市長の記者会見を読み解く
https://jair.report/article/334/
 
 

【和歌山県】緊急事態宣言の49日間、スケジュールを延期に

 和歌山県・IR推進室は6月1日、「『和歌山県特定複合観光施設設置運営事業』提案審査書類の提出期限等の変更について」を発表。新型コロナウィルス感染拡大の影響により、提案審査書類の提出期限を当初予定の8月31日締切から、10月19日締切に変更。優先権者の選定を2020年11月中旬から、2021年1月頃と変更した。

 和歌山県は「新型コロナウイルスによる影響が拡がっていく中、4月7日に緊急事態宣言が出され、5月25日に解除されるまでの間は、都道府県間を跨ぐ移動の自粛要請等により、民間企業の事業活動に制限が生じていたところです。そこで、この事業活動が制限された期間を考慮して、緊急事態宣言が発令されていた期間、49日間についてスケジュールを延期することとしました」と説明している。

 5月14日に、RFP(IR事業者公募選定)の参加資格審査の結果を発表。カナダをベースとするクレアベストベンチャーズと、マカオをベースにするサンシティグループホールディングスジャパンの2社が審査を通過しており、この2社のいずれか、あるいは、その1社を代表企業とするコンソーシアムが選ばれる。

 なお、和歌山県は6月19日に、IR事業者選定委員会の委員変更を発表しており、委員会の構成は、全9人(委員長, 副委員長, 7委員)から8人(委員長, 副委員長, 6委員)に。石川耕治氏(弁護士, GT東京法律事務所・代表パートナー)が辞任している。

■和歌山県ホームページ IR推進室
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/020100/ir/top.html

■関連記事
和歌山県が目指すリゾート型IRと最新の誘致動向 
https://jair.report/article/367/

和歌山県・IRのRFP提案書類の提出期限変更を発表、事業者選定は2021年1月に
https://jair.report/article/325/

 

【愛知県】大きな動きは無し。調査研究は推進

 愛知県は前回の状況から変化はない。昨年12月に、「特定複合観光施設区域整備の事業可能性の検討に係る意見募集」(RFC)を告知しており、募集期間は当初、2020年3月末までだったが、2月5日に5月末までに延長した。国土交通省の基本方針の策定・公表の延期によるものだ。

 募集実施の概要は、検討対象地は、中部国際空港(セントレア)のある空港島の県有地など約50ha。愛知県はこれまで、「MICEを核とした国際観光都市」の実現を目指した調査研究を2017年からスタート、2018年には調査結果の報告、これに基づく民間事業者からのアイデア募集も行われている。今回のRFCは政府のIR整備法に基づく意見募集となる。

 求める意見、提案は、基本コンセプト、市場調査、全体計画、施設計画、事業スケジュール、事業計画・事業効果、事業実施体制、懸案事項対策、地域の魅力を高める取り組みの9項目となっている。河村たかし名古屋市長も、IRに関して積極的な発言をしており、三重県のナガシマスパーランドを候補地としてあげたりしているが、具体的な動きはあまり進展していない。
 
■愛知県ホームページ「特定複合観光施設区域整備の事業可能性の検討に係る意見募集について」
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/chiho-sosei/tokuteifukugokankoshisetsu.html