アジアに近い長崎県のIR、パートナー探しはつねにオープンに

大谷イビサ(JaIR編集部)

 年間300万人の来場者を誇る佐世保のテーマパーク「ハウステンボス」の隣接地域にIRの誘致を進めている長崎県。コロナウイルスの影響もあり、遅れ気味のスケジュールの中ではあるが、事業者公募に向け、さまざまな施策と情報発信を進めている。長崎県 企画部 IR推進課の國廣 正彦氏に誘致活動の最新動向を聞いた。
佐世保のハウステンボス ©ハウステンボス/J-19501

世界のIRオペレーターに対してお見舞いとメッセージ


 着実にIR誘致のプロセスを踏んできた長崎県だが、政府の基本方針の発表が延び、コロナウイルスの影響も大きい状態で、RFP(事業者公募申請)の実施は当初予想していた春より遅れている。國廣氏は、「RFPの準備は確実に続けてきましたので、数ヶ月以内には実施しようと思っています。事業者選定は冬頃を目指したいです」と語る。6月1日からは事業者に向けた実施方針の説明会もスタートしており、テレビ会議を使って県の考え方を説明しつつ、事業者からの質問も受けるという。

長崎県 企画部 IR推進課 國廣 正彦氏

 5月22日には九州7県・沖縄・山口県の知事と九州経済連合会会長、九州商工会議所連合会等の代表者から構成される「九州地域戦略会議」として、世界各国のIRオペレーターにメッセージを発信した。福岡市や北九州市の一部でIR誘致の動きもあったが、九州としては「長崎ファースト」でIRを誘致する方針となっている。

 この中では新型コロナウイルスが世界やIRオペレーターにもたらしている困難な状況に対するお見舞いに加え、「九州は一つ」の理念が共有されていることがアピールされている。また、IRオペレーターに対して、九州域内での周遊と食材の調達、九州を元気にする企業間の連携や地域づくりへの積極的な関与を求めている。「九州地域戦略会議に設置されたPTの事務局として、ホームページへの掲載とあわせて、日本型IRに関心をもたれているオペレーター宛に送付しました。九州知事会、九州経済界においても、九州・長崎IRへ期待してもらっています」と國廣氏は語る。
 

地方型IRの有力候補となりうる3つのメリット


 昨年末、北海道がIR誘致から撤退した段階で、長崎県と和歌山県は地方型IRの候補地として有利な立場に躍り出ているのは間違いない。市民の反対の声の多い横浜市、夢洲整備でコスト負担の重い大阪府・市など都市型IRの候補地と比べても、長崎県の優位点は大きいと言える。

 他地域と比較する立場にはないことを明言しつつ、國廣氏は「観光客の多いアジアから近い」「自然や歴史・食など九州の豊富な観光資源がある」「県・市議会議員の9割が賛成しており、地元との対話も進んでいる」など、長崎県の3つのメリットを改めて挙げる。また、新型コロナウイルスで厳しくなりつつあるIRオペレーターの懐具合からしても、都市型IRに比べて投資金額が抑えられる点は魅力的と言えるだろう。

 一方、課題になっている長崎県自体の知名度に関しては、昨年に比べて海外への情報発信を積極的に進めるようになったという。九州地域戦略会議のプレスリリースに関しても、海外の専門メディアに掲出されるようになっているとのこと。また、空港からの予定地への交通に関しても、「課題は十分認識している。官民一体で解決していく予定」とのことで、IRオペレーターや地元企業などとの連携が期待される。


長崎県 特定複合観光施設(IR)
https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/kanko-kyoiku-bunka/kanko-bussan/ir-tougougatarizo-to/