統合型リゾート(IR)誘致を目指す長崎県の事業提案(RFP)に向けて、県による事業者説明会が6月19日まで開催された。前段のアイディア募集(RFC)に提案をした3社、香港資本のカレント‐ソフィテルマカオ・アットポンテ16&ゲットナイスホールディングス(以下、カレント)、同じく香港資本のオシドリ・インターナショナル・デベロップメント(以下、オシドリ)、そしてカジノ・オーストリア・インターナショナル(以下、CAI)を含め、「参加は多数」であったとされている。7月初旬、海外メディアGGRAsiaの調査に対して、カレント、オシドリ、CAIは、ともに長崎のRFPに参加の意向を示した。
長崎県の今後の応募スケジュールは、7月末にRFPの手続きを開始、8月末から9月頃が応募期間で秋に締切、12月から2月に事業者選定と想定されているが、今月のRFP手続き開始を前に、RFP参加意向を見せている3社についてレポートする。
カレントは長崎IRのため、ゲット・ナイス・ホールディングス(Get Nice Holdings、香港上場)、 サクセス・ユニバース・グループ(Success Universe Group、香港上場)、広東グループ(Guangdong Group)、 ITCプロパティ・グループ(ITC Properties Group、香港上場)との資本提携を発表。各社の事業は、ゲット・ナイス・ホールディングスはエンターテインメント・金融サービスなど、サクセス・ユニバース・グループは観光・不動産・サテライトカジノ(ポンテ16)など、広東グループはジャンケットなど、 ITCプロパティ・グループは不動産・ゴルフレジャー・金融などである。
この提携先のうち、6月30日発表によると、ゲット・ナイス・ホールディングスは長崎IRに向けて、SRC グループに対して総額2,500万香港ドル(約3億4,764万円)をまず手付金として支払った。2019年1月16日発表のSRCグループとゲット・ナイス・ホールディングスの2社間での覚書によれば、2020年9月30日までの合弁会社設立を目指すとしている(覚書締結時は、静岡県牧之原市のIRに向けての合弁会社設立を目指していたが、後に場所を長崎に変更)。
RFPに向けては、カレントは以前から災害時にシェルターとなる「防災型IR(リジリエンスIR)」を目指すと述べ、IR施設を、地震、台風、洪水などの災害時に、地域の被災者のシェルターとして提供しようとしている。また、船舶やバスで長崎空港と繋ぐエンターテインメント機能を備えた交通インフラ回遊を構想。統合型エンターテインメントリゾートを目指し、美しい夜景の演出を検討している。2020年2月のIRセミナーにて、「県内の観光地や島々をIR施設と連携させ、世界に発信する」と発言した。3月にはJR九州・長崎駅の新駅舎に広告を掲出し、アピールしている。
■SRCグループ ホームページ
https://srcgroup.jp/about/
オシドリは長崎IRへ参画するにあたって、2019年6月にフォーラムを開催して強い意欲を見せ、2019年11月時点では、ケリー・ヤム最高経営責任者(CEO)が、4,000億円規模の投資をすると明言している。2020年2月のイベントでは、長崎IRにおいて、フランスのカジノオペレーター、パルトゥーシュ・グループ(Groupe Partouche)との提携を発表した。なお、パルトゥーシュは、フランスではバリエール・グループ(バリエールは和歌山IRに意欲を見せるもRFPには不参加)に次ぐ二番手である。
RFCではオシドリは、スマートシティーを掲げ、最先端技術とローカライズをアピールしている。また最先端医療の施設も検討中だ。計画には、海洋水族館とモノレール、ヘリポートなども含まれる。
RFPに向けては、オシドリは元MGMリゾーツのイエメンジアン氏をトップに迎え、同氏のIR業界の豊富な経験を生かし、「日本の長崎で、高級ホテル、カジノ、コンベンション施設、エンターテイメント施設、ショッピング、レストランなどを含むフルサービスの世界クラスの統合型リゾートプロジェクトを所有し、運営するための入札を指揮し、監督する」と述べた。また、同氏が「IRプロジェクトの提案要求入札プロセスを成功裏に完了させるための戦略を策定し、IRプロジェクトの全体的な運営を管理するための支援を行う」と付け加えている。
■オシドリ・インターナショナル・ホールディングス ホームページ
http://www.oshidoriinternational.com/eng/index.html
■関連記事
オシドリ、長崎IRのRFPに向けてアレハンドロ・イエメンジアン氏の役員就任を発表
https://jair.report/article/336/
※8月4日追記
長崎IRでのオシドリとパルトゥーシュ・グループの提携が5月に終了していたことが発表された。
パルトゥーシュ・グループ、長崎IRでのオシドリとの提携終了を事後発表
https://jair.report/article/405/
CAIは、2014年時点では沖縄IRへの進出を表明していたが、沖縄県のIR見送りにより、現在は長崎IRへの進出を検討している。CAIの日本支社社長は林明夫氏。林氏は、再生医療分野で株式会社TESホールディングスとバイオス株式会社の代表取締役も務めている人物だ。
2020年2月開催の九州でのイベントにて、CAIは、建築家の隈研吾氏との協業を発表した。独自色としては、オーストリア首都ウィーンと日本の「和洋折衷」を挙げている。
■カジノ・オーストリア・インターナショナル ホームページ
https://www.casinosaustriainternational.com/
現状では、長崎IRの開業時期は2025年4月から2026年3月とされ、大都市圏のIRに比べると若干早く完成する可能性がある。国の認定までのスケジュールが予定通り進むかどうかが、他地域との競争という意味ではカギを握る。
■関連記事
長崎県のRFP事前説明会が終了、今冬にIR事業者を決定へ
https://jair.report/article/350/
アジアに近い長崎県のIR、パートナー探しはつねにオープンに
(長崎県 企画部 IR推進課 國廣 正彦氏インタビュー)
https://jair.report/article/331/
【新型コロナのIRへの影響レポート】日本 7月10日版
https://jair.report/article/373/
長崎県の今後の応募スケジュールは、7月末にRFPの手続きを開始、8月末から9月頃が応募期間で秋に締切、12月から2月に事業者選定と想定されているが、今月のRFP手続き開始を前に、RFP参加意向を見せている3社についてレポートする。
【カレント】資本提携先との合弁会社準備を進める、IRは防災型をアピール
長崎IRに対して参加表明している香港資本のカレント株式会社は、SRCグループ子会社にあたる。SRCグループは、これまで各国でのIR事業投資、不動産投資、金融投資、エンターテインメント観光事業投資等を主に行ってきた。カレント株式会社(長崎)以外には、子会社としてSHOTOKU株式会社(横浜)、RINALDO株式会社(静岡)の2社がある。カレントは長崎IRのため、ゲット・ナイス・ホールディングス(Get Nice Holdings、香港上場)、 サクセス・ユニバース・グループ(Success Universe Group、香港上場)、広東グループ(Guangdong Group)、 ITCプロパティ・グループ(ITC Properties Group、香港上場)との資本提携を発表。各社の事業は、ゲット・ナイス・ホールディングスはエンターテインメント・金融サービスなど、サクセス・ユニバース・グループは観光・不動産・サテライトカジノ(ポンテ16)など、広東グループはジャンケットなど、 ITCプロパティ・グループは不動産・ゴルフレジャー・金融などである。
この提携先のうち、6月30日発表によると、ゲット・ナイス・ホールディングスは長崎IRに向けて、SRC グループに対して総額2,500万香港ドル(約3億4,764万円)をまず手付金として支払った。2019年1月16日発表のSRCグループとゲット・ナイス・ホールディングスの2社間での覚書によれば、2020年9月30日までの合弁会社設立を目指すとしている(覚書締結時は、静岡県牧之原市のIRに向けての合弁会社設立を目指していたが、後に場所を長崎に変更)。
RFPに向けては、カレントは以前から災害時にシェルターとなる「防災型IR(リジリエンスIR)」を目指すと述べ、IR施設を、地震、台風、洪水などの災害時に、地域の被災者のシェルターとして提供しようとしている。また、船舶やバスで長崎空港と繋ぐエンターテインメント機能を備えた交通インフラ回遊を構想。統合型エンターテインメントリゾートを目指し、美しい夜景の演出を検討している。2020年2月のIRセミナーにて、「県内の観光地や島々をIR施設と連携させ、世界に発信する」と発言した。3月にはJR九州・長崎駅の新駅舎に広告を掲出し、アピールしている。
■SRCグループ ホームページ
https://srcgroup.jp/about/
【オシドリ】4000億規模の投資を明言、元MGM幹部をトップに迎え、RFPに臨む
長崎IRへ参加表明をしているのは、香港上場の投資会社オシドリ・インターナショナル・ホールディングス(Oshidori International Holdings、威華達控股有限公司)の子会社、オシドリ・インターナショナル・デベロップメント(Oshidori International Development)である。長崎県鳥に由来して社名を「オシドリ」に変更した。先日6月9日に、この子会社のCEOとして、元MGM幹部のアレハンドロ・イエメンジアン氏が就任することが発表された。オシドリは長崎IRへ参画するにあたって、2019年6月にフォーラムを開催して強い意欲を見せ、2019年11月時点では、ケリー・ヤム最高経営責任者(CEO)が、4,000億円規模の投資をすると明言している。2020年2月のイベントでは、長崎IRにおいて、フランスのカジノオペレーター、パルトゥーシュ・グループ(Groupe Partouche)との提携を発表した。なお、パルトゥーシュは、フランスではバリエール・グループ(バリエールは和歌山IRに意欲を見せるもRFPには不参加)に次ぐ二番手である。
RFCではオシドリは、スマートシティーを掲げ、最先端技術とローカライズをアピールしている。また最先端医療の施設も検討中だ。計画には、海洋水族館とモノレール、ヘリポートなども含まれる。
RFPに向けては、オシドリは元MGMリゾーツのイエメンジアン氏をトップに迎え、同氏のIR業界の豊富な経験を生かし、「日本の長崎で、高級ホテル、カジノ、コンベンション施設、エンターテイメント施設、ショッピング、レストランなどを含むフルサービスの世界クラスの統合型リゾートプロジェクトを所有し、運営するための入札を指揮し、監督する」と述べた。また、同氏が「IRプロジェクトの提案要求入札プロセスを成功裏に完了させるための戦略を策定し、IRプロジェクトの全体的な運営を管理するための支援を行う」と付け加えている。
■オシドリ・インターナショナル・ホールディングス ホームページ
http://www.oshidoriinternational.com/eng/index.html
■関連記事
オシドリ、長崎IRのRFPに向けてアレハンドロ・イエメンジアン氏の役員就任を発表
https://jair.report/article/336/
※8月4日追記
長崎IRでのオシドリとパルトゥーシュ・グループの提携が5月に終了していたことが発表された。
パルトゥーシュ・グループ、長崎IRでのオシドリとの提携終了を事後発表
https://jair.report/article/405/
【CAI】世界唯一の国営IRである強み、ウィーンとの「和洋折衷」IRを
カジノ・オーストリア(CA)は、1934年にオーストリア政府により設立された世界唯一の国営IR事業者で、長崎IRに参入意思を示しているのはその100%子会社、カジノ・オーストリア・インターナショナル(CAI)である。親会社CAは、多くのカジノやロトくじ、宝くじ、オンラインゲーミングなどを運営しており、子会社CAIは、スイス(ルツェルン)、オーストラリア(ケアンズ)、セルビア(ベオグラード)、ベルギー(ブリュッセル)の4か所でカジノリゾートを運営している。CAIは、2014年時点では沖縄IRへの進出を表明していたが、沖縄県のIR見送りにより、現在は長崎IRへの進出を検討している。CAIの日本支社社長は林明夫氏。林氏は、再生医療分野で株式会社TESホールディングスとバイオス株式会社の代表取締役も務めている人物だ。
2020年2月開催の九州でのイベントにて、CAIは、建築家の隈研吾氏との協業を発表した。独自色としては、オーストリア首都ウィーンと日本の「和洋折衷」を挙げている。
■カジノ・オーストリア・インターナショナル ホームページ
https://www.casinosaustriainternational.com/
コロナ禍で長崎IRを取り巻く状況にも変化、国の認定スケジュールは守られるか
コロナ禍により、長崎IRを取り巻く状況が変化してきている。長崎は、東京、大阪、横浜という大都市圏に比べると、日本のリゾート地として最も華やかで有利な場所というわけではないかもしれない。しかし、大都市圏でのIR開発は1兆円規模という法外なコストが予想されるため、新型コロナウィルスでオペレーター各社も厳しい状況にある中では、長崎IRの投資規模40~50億ドル(4280億~5350億円)は比較的乗り出しやすい額とも言える。現状では、長崎IRの開業時期は2025年4月から2026年3月とされ、大都市圏のIRに比べると若干早く完成する可能性がある。国の認定までのスケジュールが予定通り進むかどうかが、他地域との競争という意味ではカギを握る。
■関連記事
長崎県のRFP事前説明会が終了、今冬にIR事業者を決定へ
https://jair.report/article/350/
アジアに近い長崎県のIR、パートナー探しはつねにオープンに
(長崎県 企画部 IR推進課 國廣 正彦氏インタビュー)
https://jair.report/article/331/
【新型コロナのIRへの影響レポート】日本 7月10日版
https://jair.report/article/373/