MICEやライブ、グルメ、ショッピング、ナイトクラブまで網羅するシーザーズのIR (2/4)

文●柳谷智宣 写真●シーザーズ・エンタテインメント

 

2027年まで9000万ドル分の予約が埋まりつつある
IRを支える柱の一つ「MICE」

 IRとMICE施設は切り離せない関係にある。MICEとは、Meeting(会議)、Incentive Travel(招待旅行)、Convention(国際会議)、Exhibition/Event(展示会/イベント)の頭文字を繋げた造語。国際会議などでは、数千人から数万人が来場し、数日間滞在することもあり、大きなお金が動く。ラスベガスには大きなMICE施設が多数あり、アメリカの中でも最も大規模な開催都市となっている。

 シーザーズ・パレスのカンファレンスセンターも大きく、2万7870平方メートルの施設に5000人以上を収納できるボールルームをはじめ、25個の小会議室を備えている。会議に特化しており、カジノとは完全切り離されている。真面目なカンファレンスをしているときに、パーティをしている人たちが迷い込んでくるようなことはないという。

現在、最大の面積を持つボールルーム。5000人以上を収容できる


役員会などに使われるエグゼクティブルーム

 年間約17000件の会議やカンファレンスが開催され、来場者は約200万人。売り上げは6700万ドルにのぼる。さらに現在「シーザーズ・フォーラム」を建造中で、来年3月21日にオープンする予定。5万1000平方メートルのコンベンション・センターとなり、現在の2倍の規模。1万㎡の世界最大の無柱宴会場が2カ所備わる予定だという。すでに2027年まで予約が入り始めており、9000万ドル分が予約済みとのこと。

 Amazonがイベントを開催するときは2万人くらいが泊まることになるそう。その規模の人たちに、シーザーズ・エンターテインメントの各ホテルに泊まってもらい、前出のLINQプロムナードをすべてを貸し切りにしたりして遊ぶこともできる。2000人入るボーリング場&レストランを貸し切りだけでも驚いていたのに、もう想像を絶する世界だ。

 いやらしい話だが、個人旅行の場合、当然自分の財布からの出費となるが、ビジネスで来る場合は会社持ちなので気兼ねなく大きい金額を消費してくれるという。景気のいい話でうらやましい限り。

 コンベンション・センターでは料理を出すことも多い。数千人分の食事を用意するのだから、その規模も大きい。あちこちにホテル規模の厨房が用意されており、多数の料理人が働いていた。

 朝早くに朝食を設定したため多くの人が寝坊したり、2000人の食事を用意したのに500人しか参加しなかった、という場合、大量の食材が余ってしまう。そんな時は、すぐに包装し、慈善事業に提供しているという。施設から出すゴミも可能な限り、リサイクルに回し、環境保護も意識しているそうだ。

大規模な厨房がいくつもあり、余り物やゴミのリサイクルなどの仕組みも構築されている

 2017年の国際会議開催統計(ICCA)の発表によると、日本の国際会議数はアジアでトップ、世界でも第7位となっている。日本でIRを展開する際、このMICE事業のパワーは確かに魅力的だ。
 

世界を代表するアーティストがコンサートを行う「コロシアム」

 シーザーズ・パレスの中心にあるシアター「コロシアム」は2003年、セリーヌ・ディオンのために建設された。古代ローマのコロシアムを現代的な解釈で再現した場内には4300席を備え、5000席以下の劇場では、チケットセールスで世界一となっている。

シーザーズ・エンターテインメント部門の社長であるジェイソン・ガストワース氏が案内してくれた

 セリーヌ・ディオンは、ラスベガスで長期にわたって定期公演を行うレジデンシー公演というビジネススタイルを確立。その後のエンターテイメントに大きな影響を与えた。先日、16年間の公演を終え、千秋楽を迎えている。他にもエルトン・ジョン、ロッド・スチュアート、マライア・キャリーと言った大物がショーを行なっている。


本物のコロシアムと違い、観客との距離が近いのが特徴だ

 今年の夏に大規模な改装工事が予定されており、それが終わったら秋からはマドンナの公演が始まる予定となっている。マドンナはとても劇場にこだわるタイプだが、彼女がコロシアムを選んだことは光栄だとガストワース氏。音響や照明には最新のテクノロジーを採用し、100フィートのLEDスクリーンも用意。ラスベガスではVIP扱いをされたい客が多いので、そこにも力を入れていくという。