【日本型IRの夜明け】ラスベガスで生まれ育ったオペレーターのプロフィール (2/2)

・ウィン・リゾーツ
　ラスベガスをテーマパーク化したとされるスティーブ・ウィンが作った会社です。ウィン氏は1989年に「ミラージュ」を作り、ホワイトタイガーをアイコンにしたジークフリート＆ロイのイリュージョン・ショーを成功させます。1993年に作った「トレジャーアイランド」のオープニング・セレモニーで同ホテルの前に浮かぶ海賊船から、マフィア支配時代の象徴だったホテル「デューンズ」を爆破してみせました。

　このパフォーマンスは全米の注目を浴び、ラスベガスの新時代の幕開けとされています。1998年には水をテーマにした「ベラージオ」を作りシルクドゥソレイユの「O」の常設公演を大成功させています。これらはほんの一部ですがテーマパーク化されたと言われる90年代の出来事の多くは彼によってもたらされています。2000年にはこれらのビジネスを丸ごとMGMに売却しており、上記のホテル群はMGMの傘下に収まっています。

　ウィン自身は2000年代に入り自らの名を冠したウィン・リゾートを立ち上げ、ラグジュアリー路線の高級ホテル「ウィンラスベガス」、「アンコールラスベガス」「ウィンマカオ」等々を次々に立ち上げていきます。天才と称されたウィンですが2018年の「Me Too」運動の流れでセクハラを告発され、自身は否定しながらもCEOを退いています。

　日本IRでは一時期横浜に強い関心を寄せていました。

・ラスベガス・サンズ
　シェルドン・アデルソン氏が1970年代に立ち上げたCOMDEX（コンピュータ関連の見本市）が源流…というのもおかしな話ですが、実はこの見本市をソフトバンクの孫正義氏に売却した資金で、マフィア時代の老舗カジノだった「サンズ」を買収し、隣接する土地にコンベンションセンターを建設しています。これが前回お話したMICEの原型にもなっています。

　アデルソンはサンズを立て替え1995年に「ザ・ベネチアン」をオープンさせます。建物の中でありながら映画の巨大セットのような運河のあるベネチアの街が再現され、そこにはゴンドラが浮かびレストランや商店が並ぶ姿は驚きをもって迎えられました。


　その後、シンガポールのマリーナベイサンズを設置運営、マカオにもサンズマカオをオープンさせるなど、アジアでも活発な動きを見せていました。トランプ前大統領とも密接な関係があるとされ、日本型IRにも大きな影響力を持つと目されてきました。当初横浜に名乗りをあげ、大阪に転身してみたりまた横浜に戻ったり、柔軟な動きを見せていました。昨年2021年にアデルソン氏が亡くなり、今後の動きに注目が集まっています。

・ハードロック・ホテル・アンド・カジノ
　アメリカには通常のカジノ運営のルールとは違う別の流れが存在しています。現代では先住民族カジノと言うべきかもしれませんが、長らくインディアンカジノと呼ばれてきたものです。乱暴に解説すれば不毛の居留地に追いやられた先住民族たちが生きていくための糧を得るために止む無く始めた賭博場の存在を容認しすることから生まれたルールです。

　全米に大小様々なインディアンカジノが存在しています。ギャンブルの運営は大きなリターンが期待できるとともに、大きなリスクがあり、破綻する部族も多かったようですが、そんな中で大成功を収めたのがフロリダのセミノール族でした。2006年彼らは豊富な資金を持って、世界的に有名ながら傾きかけていたハードロックカフェの事業を買い取り傘下に収めています。
　買収当時ハードロックはラスベガスで小規模なホテルとカジノを運営していましたが、セミノール族は自身の持つカジノ関連事業と合体させることで大きなビジネスへと発展させていきます。2021年にはギターの形のホテルを中心とした新たなカジノリゾートをフロリダ州にオープンさせています。また昨年末にラスベガスでもMGMからミラージュを買収し、同じくギター型のホテルの建設を発表しています。

　日本では先住民族つながりを強調し、北海道苫小牧のIR案に注力し、フロリダの施設同様のギターをかたどったホテルの建設を提案していました。


　さて、今回はラスベガスを中心に展開し、日本型IRの様々な局面で見え隠れしてきたアメリカの主要オペレーター5社を見てきましたが、次回はマカオを中心に展開する中国系のオペレーターを見ていきたいと思います。