<IR用語集・基礎知識> インディアン・カジノ(先住民部族カジノ)

JaIR編集部

アメリカ先住民の居留地内で、自治権を持つ部族がインディアン・ゲーミング規制法のもとで運営しているカジノ、宝くじ、ギャンブル事業全般を指す。

現在、アメリカ連邦政府が法的に承認する先住民の部族は574が存在し、部族は「保留地」と呼ばれる居住地を約束されている。保留地は35州にわたり300カ所以上分布し、保留地は連邦・州の管轄から除外され、部族の自治権が認められている。

1800年代の強制移住政策により、住み慣れた豊かな土地から、資源の枯渇した土地へと移動させられた先住民は、長らく貧困問題にさらされてきた。だが、保留地では州の税制や法制度の適用外となることを利用し、1960年代頃からたばこ産業など各種の非課税ビジネスに乗り出す部族が現れ始めた。その中で、1970年代にフロリダ州のセミノール、カリフォルニア州のカバゾン、モロンゴなどカジノを設立する部族が現れ、インディアン・カジノが全米に広がった。

各州法による厳格な規制の下、民間企業による「商業カジノ」が運営される一方で、当時の先住民の保留地では無制限のゲーミングが行われており、規制する必要が出てきたため、連邦政府が新たに制定したのが、1988年の「インディアン・ゲーミング規制法」であった。規制法では、インディアン・カジノの収入の7割を部族に還元することが規定され、各部族の福利厚生等に使われることとなった。

規制法前には100部族がカジノ産業に従事していたが、制定後は規制があることで、インディアン・カジノの運営権利が守られる側面もあり、先住民カジノ参入数が増えた。現在では全部族の約半数以上にあたる251部族がカジノ産業に携わっている。居留地内の小規模のカジノ施設から、ホテルやショッピングモール、映画館等併設した複合施設を保有する部族もおり、現在、全米29州約500カ所のインディアン・カジノが運営されている。2020年度時点で、インディアン・カジノのカジノ総ゲーミング収入(GGR)は278億ドル(約3兆1,793億円)に達し、アメリカでの商業カジノの総ゲーミング収入を超す売り上げを記録している。

先住民の中には、豊富な資金力でアメリカ国内外の商業カジノ産業に進出するケースも見られる。フロリダのセミノール族は、2007年に世界的に著名なレストラン、ホテル&カジノチェーンの「ハードロック・インターナショナル」を買収し、世界に進出した。このように成功を収める部族がいる一方で、カジノを運営していない部族との間で経済格差が広がり、新たな問題となっている。