SDGsに関わる背景に、ギャラクシー時代の学びあり
玉置:さて、知事選を経て横浜IRがキャンセルとなり、ギャラクシーをお辞めになって以降、岡部さんはSDGsに関わるようになったとお聞きしています。ここまでの経緯を教えてください。
岡部:先ほどからお話ししてきた通り、IRに関しての考え方は、自分の中でもずいぶん変わってきました。2011年当時は長引く不況から脱却するための方策としてのIRとして捉えてきたのですが、その後インバウンドの成長に貢献できる装置というストーリーとなり、ギャラクシーでの仕事を経て、IRにSGDsの考え方、要素がさらに必要だと考えるようになりました。SDGsって、日本でちょっとした流行のようになっている印象ですが、このSDGsを地で実践するのが、まさにIRだと思っています。
玉置:IRとSDGsがどのようにして結びつくのでしょうか?
岡部:IRというのは地域における大規模な集客施設なので、必然的に二酸化炭素を大量排出しますし、エネルギーも大量消費します。人が集まるのはいいことですが、当然それによるマイナスもあります。地域の自治体、住民は一番そこを気にしますよね。こうした環境負荷の課題を乗り越えていかないと、IRは地域だけでなく、世界から見ても単なる迷惑施設になってしまいます。
玉置:なるほど。確かボストンでも、IRに対する住民の支持が得られた1つの理由は、IRができることで、長年懸案だった河川の汚染や交通渋滞の課題が解消するからだったはずです。
岡部:まさにそういうところで、IRとSDGsは関係してくるのです。
ギャラクシーには「IRのライセンスは社会からいただく」という「ソーシャルライセンス」という考え方があります。そのため「責任あるゲーミング」「地域からの調達・購買」「地域の中小企業との共存」「コンプライアンス」「地域社会への教育支援」など9つの項目から構成されています。そしてSDGsにつながる「持続可能な環境整備」が含まれています。この考え方は日本でIRを実現するための基本的なスタンスになると考えています。
玉置:IRというある種突出してユニークな施設が地域となじむためには、こうした考え方が必要なのかも知れません。
岡部:IRは民設民営の事業ですが、国が事業者を認定するわけですから、地域の企業やコミュニティの納得感を得るために、こうした公共的な考え方が特に必要になります。まして、このコロナ禍に、SDGsという観点が重視されているので、IR事業者はいかに地域社会と共生しながら経営を持続的に成長、安定化させるという重要なミッションを課されています。
経営者となってSDGsの考え方を持てない経営者はこれからのグローバル社会では相手にされなくなる。どんな活動をするにせよ、SDGsを踏まえて、企業経営を練っていく必要があると考えています。欧米とは違って日本では経営の中枢にCSO(Chief Sustainable Officer)という役職に就く人もまだ少ない状態ですし、今のブームが去ったときにSDGsがきちんと根付くかも不安が残ります。まさに持続的に進めなければならない活動だと思い、個人的にフォーカスしているところです。