<IR用語集・基礎知識> プレミアムマス

JaIR編集部

カジノ市場では、カジノでの賭金に応じて顧客層を大別して戦略を図っており、従来、VIP(ハイローラー)とマス(大衆)に顧客を区分してきた。しかし近年、VIPとマスの中間に位置する顧客層が増加し、カジノ経営に大きく影響を与える存在となっていることから、VIPとマスの中間層を指す言葉として使用されている。

プレミアムマスは、超富裕層であるVIPほどの資金力のない富裕層や中間層の上位で構成される。VIPに比べて層が厚く、安定的な顧客となっている。とりわけ中国では新興富裕層であるプレミアムマスの増加が顕著であるため、マカオシンガポールといった中国人顧客割合の高いIRにおいて、非常に重要なターゲットとなっている。

2013~2015年にかけて、中国政府が汚職撲滅を進め政府幹部への監視を強化した影響で、マカオやシンガポールではVIPの売上高比率が大きく減少したが、一方で、プレミアムマスの中国の若い新興富裕層による売上は増大した。今後も中国のプレミアムマスは増加傾向で、また東南アジア諸国でのプレミアムマスも増加することが見込まれる。

プレミアムマスの特徴としては、洗練されたデザインや質の高いサービスを好み、また、カジノ以外に観劇や食事なども積極的に楽しむ傾向がある。マカオの最新型IRでは、プレミアムマス層をターゲットとする方針を明確に打ち出す施設もある。

プレミアムマス層のカジノでの掛金額に関しては、各オペレーターで標準となる定義はないが、おおよそ1回のベットで2000~3000ドル(約21~32万円)ほど賭けられる顧客層を差す。掛金だけで見れば、VIPルームでゲームをする人たちと同程度の額を使用している場合もある。

マカオでは、2021年末に起きた大手ジャンケット事業者「サンシティ」トップの逮捕を発端に、ジャンケットのVIPルームが大量閉鎖となったことも影響し、今後は事業者直営のVIPルームやさらにはプレミアムマス中心へと移行することが予想される。

日本型IRのカジノではジャンケット事業を認めていないため、IR事業者の直接顧客の富裕層、あるいは国内外のプレミアムマス層を取り込むことが重要となる。カジノ以外の面も重視するプレミアムマス層を惹き付ける、質の高いコンテンツやサービスの提供が求められる。