<IR用語集・基礎知識> マネーロンダリング

JaIR編集部

「資金洗浄」を意味する言葉で、麻薬取引、脱税、粉飾決算などの犯罪によって違法に取得した資金の出所を偽装するための行為を指す。架空の金融口座に転々と送金を繰り返すなど手口は様々。1989年、マネーロンダリング防止のための政府間機関となるFATF(金融活動作業部会)がパリで設立され、世界規模で対策が強化されている。しかしながら、2018年のUNODC(国連薬物犯罪事務所)の調査によると、世界で毎年8000億ドルから2兆ドルものお金が洗浄されているといい、2001年のアメリカ同時多発テロを実行したアルカイダも、このマネーロンダリングによって資金を得ていたとされる。日本でも、2020年の検挙数が597件(マネーロンダリングが疑われる取引の届け出の受理件数でいうと43万2202件)と、その例外ではない。

特に、一度で多額のお金を動かすことが可能なカジノはマネーロンダリングの温床となりやすいため、世界各国のIR及びカジノ施設も、FATF勧告に基づき運営されている。FATF勧告は、主に免許制度、取引時確認等疑わしい取引の届出、内部管理体制の整備を国や事業者に求めているが、諸外国ではさらに

・背面調査による事業者、従業者からの反社会的勢力の排除
・入場者からの反社会的勢力の排除
・施設の構造、設備基準
・公正なゲーミングの実施
・一定額以上の現金取引の届出
・カジノ行為区画外へのチップの持ち出し規制
・施設内の警戒、監視

と幅広い対策が実施されている。これらのほか、日本では

・顧客の指示を受けて行う送金先を本人の口座に限定
・顧客間でのチップの譲渡規制(親族間は除く)
・自己評価と監査の結果をカジノ管理委員会に報告

という独自の対策も追加し、マネーロンダリング防止に取り組むことになっている。また、諸外国では、カジノ事業者とVIP顧客の仲介役を担うジャンケットと呼ばれる代理人・事業者がいるが、過去に海外において、ジャンケットを利用してのマネーロンダリングが疑われる事例が発生している。そのため、日本型IRではジャンケットの活動は大幅に制限されることになっている。

なお、諸外国ではオンラインカジノにおいても出金時の限度額や手数料、出金条件などの特有のルールが定められており、これもマネーロンダリング対策の一環とされる。

■参考URL
カジノ管理委員会によるマネーロンダリング対策
https://www.jcrc.go.jp/policy/regulatory/money.html