自治体のIR整備計画申請期間がスタート 審査項目と配点も発表

JaIR編集部

 観光庁は、2021年9月30日に、「特定複合観光施設区域整備計画の認定申請手続、認定審査に関する基本的事項」について発表した。2020年12月18日付の「特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針」(以下「基本方針」)に基づき、本日10月1日から、候補自治体による「特定複合観光施設区域整備計画」(以下「区域整備計画」)の認定のための申請を受け付ける。受付期間は、2022年4月28日まで。

観光庁作成のIR開業までのスケジュール
 

区域認定審査のプロセスと配点が示される

 9月30日の発表では、 「認定審査のプロセス」と、審査委員会において評価を行うための「項目ごとの配点」について具体的に示された。認定審査のプロセスに関しては、「IR整備法第9条第1項の規定に基づき認定の申請のあった区域整備計画について、基本方針第4の7に定める認定審査の基準に基づき、審査を行う」とある。

 具体的には、下記の審査段階を経ることとなる(以下、観光庁発表をJaIR編集部にて項目分けした)。
 
・ まず、申請のあった区域整備計画について、基本方針に定める要求基準に適合するものかどうかの確認を行う。

・要求基準に適合しない場合には、認定を行わない。

・要求基準に適合する場合には、基本方針に定める評価基準に従って、審査委員会が評価を行い、その結果を国土交通大臣に報告する。

・国土交通大臣は、審査委員会の審査の結果に基づき、認定を受けることとなる区域整備計画の数が3を超えない範囲内で、優れた区域整備計画を認定するものとする。

 ・なお、審査委員会の評価に当たっては、申請者による審査委員会へのプレゼンテーション実施を予定しており、これら認定審査に係るプロセスの詳細については、区域整備計画の申請を行った者に対し、別途通知する。


 まずは、提出書類による確認が行われ、要求基準が適合した場合に、審査委員会が評価を行う。書類での審査に加え、審査委員会へのプレゼンテーションも実施が予定され、これらの審査結果に基づき、最大3か所が区域認定される。

 審査委員会は、既に2021年7月20日に設置されており、委員長の竹内健蔵氏(東京女子大学現代教養学部教授)、委員長代理の山内弘隆氏(武蔵野大学経営学部特任教授、一橋大学名誉教授)、委員6名の有識者で構成されている。観光庁によると、審査委員会での率直な意見交換や意思決定の中立性を確保するため、区域整備計画の認定に関する審査委員会の会議は公開しない。ただし、認定審査の透明性を確保する観点から、審査委員会における認定審査の結果及び評価の過程は、区域整備計画の認定後速やかに公表するとしている。
 
  また、今回、審査委員会において評価を行うための項目ごとの配点が示された。審査は1000点満点で、各項目の評価基準と配点は下記の通り。

 IR全体のコンセプトに関しては、「他国の成功事例の模倣ではなく、独自性を有するものであること」が評価基準として示され、建築物のデザインに関しては、「地域の新たな象徴となり得るような先進性や他には見られない魅力」が求められている。かつ、「周囲の景観や環境と調和したものであること」の条件も満たす必要がある。
 

 MICE施設に関しては、まず「最大規模のMICEに対応できる」こと、「十分なスケールを有すること」が求められている。さらに重要な国際会議に相応しい高度なクオリティも求められ、「施設の使い勝手がよく、上質で洗練された内装」「水準の高い飲食サービス」などが条件となる。「MICEの誘致」「企画及び運営に必要な体制、ノウハウ」を備えていることも求められている。


 IR施設内の「魅力増進施設」と「送客施設」はそれぞれ配点が50点と高い。「魅力増進施設」に関しては、「国際的に最高水準のエンターテインメント性を有する公演、展示、イベント等」の提供が求められ、「日本の伝統、文化、先進技術、四季折々の自然などの様々な魅力」を「これまでにないクオリティで発信」することが評価に繋がる。「送客施設」に関しては、「ショーケース」機能、サービス手配を一元的に行う「コンシェルジュ」機能が条件となる。計画された事業の「実施体制、及びノウハウ」もポイントになる。
 

 「宿泊施設」や「レストランなどの飲食サービス」に関しては、国際競争力を有する高い水準が求められる。「観光旅客の来訪及び滞在の促進に寄与する施設」の項目では、「外国人旅行客をはじめとした幅広い人々が楽しむことのできる観光資源」であることが重要視される。
 「カジノ施設」に関しては、「IR区域全体のコンセプトと調和」がポイントとして挙げられ、「他の施設とバランスの取れた規模、デザイン、及び配置」が求められる。カジノの施設自体の配点は20点で、他の項目に比べると高くはない。

 「IR区域が整備される地域」に関しては、国際空港や国際港湾、鉄道ターミナル駅などからのアクセス、輸送力が問われる。都道府県等が実施する「交通アクセスの改善、インフラ整備、MICE誘致、観光振興」などの施策が効果的に円滑に実施されることも配点対象となる。

 また、経済的、社会的な効果も問われる。「観光への効果」として、IR区域への国内外からの来訪者数、観光客の増加件数・人数が大きく見込まれることが求められる。「地域経済への効果」では、「来訪者による旅行消費額の増加額や伸び率」「地域における雇用創出」「初期投資」などが見込まれることも求められる。また、政府の観光戦略の目標達成における貢献も求められる。以上の項目を、説得力のあるデータを用いて精緻に推計して示す必要があり、各項目が50点という高配点となっている。

 「事業の安定的・継続的かつ安全に実施できる能力及び体制」については、4項目に分けられる。まずは、IR事業者やその構成要員の遂行能力、役割分担と連携を示す必要がある。そして、財政面での安定、業績が下振れした場合も適切に応し、「長期的に事業を継続できること」がポイントとなる。また、防災や新型コロナウイルス感染症を踏まえた感染症対策についても項目として挙げられている。さらに、地域における合意形成、地域における良好な関係構築も重視される。これらの4項目も各50点と高配点である。

 カジノ事業に関しては、「収益の活用」と「カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除等」の項目がある。カジノ収益に関しては、IR開業後も長期的に世界中の観光客を引き付けることのできる「魅力的な施設やコンテンツを継続的に創り出す」ために活用されることが求められる。カジノの有害な影響の排除の項目に関しては、すべての評価項目が25あるうち、最も高い配点である150点となっている。カジノ施設やIR区域内の適切な監視や警備、ギャンブル依存症対策等が確実に講じられていることが、全体において最も重視されていることがわかる。
 これまでに、大阪府・市、和歌山県、長崎県がIR誘致を目指し、事業者を選定している。大阪府・市は、MGM・オリックスのコンソーシアムを選定。和歌山県は、クレアベストニームベンチャーズ株式会社及びClairvest Group Inc.のコンソーシアムと基本協定を締結。長崎県はカジノ・オーストリア(CASINOS AUSTRIA INTERNATIONAL JAPAN)と基本協定を締結した。各地で整備計画の準備が進んでいる。


■関連データベース
観光庁・特定複合観光施設区域整備計画の認定申請手続、認定審査に関する基本的事項を公表
https://jair.report/archive/594/

観光庁が、特定複合観光施設区域整備計画に係る様式集、認定申請の手引きに対する質問への回答を公表
https://jair.report/archive/593/

■関連記事
観光庁がIRの区域整備計画を審査する委員会を設置
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MGM・オリックスのコンソーシアムが大阪IRの事業者として選定
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長崎県がカジノ・オーストリアと基本協定を締結 総事業費は3500億円
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和歌山県がIRの優先権者クレアベストと全国の候補地の中で初めて協定を締結
https://jair.report/article/702/