日本型IR規則を読み解くポイント、ゲーミング法制協議会の美原融氏に聞く (4/4)

大谷イビサ(JaIR編集部)

規制とはマーケットと対話することで作っていくもの

玉置:パブコメの受付はすでに締め切られてしまいましたが、今後規則はどのようになるのでしょうか?

美原:通常こうした規則はマーケットと対話してから決めるものなので、困ったもんですよ。シンガポールも、アメリカも、規則は段階的に作っています。1年くらいかけて少しずつ作っていくので、わかりやすいし、市場からのリアクションも反映できる手順となっています。だから、結果的にはよいものができあがります。

日本のカジノ管理委員会も段階的に作っているはずなのですが、30回以上の会合をしたにも関わらず、内容は一切明かされていません。膨大な内容に対して、1ヶ月以内にパブリックコメント出せというのはやや乱暴ですよね。マーケットとの対話はしないという意思表示かもしれないし、アンフレンドリーなのは確か。

玉置:美原さんから見てもそうなのですね。

美原:いやあ、「こんなのいきなり出されてもわからない」「読むのだけでも大変」というみなさんのリアクションの方が普通です。外国人のために2~3週間かけて翻訳しますので、パブコメと言っても対話の時間はとても短い。

しかも、国会議員がからむ汚職事件があった関係で、(政府関係者は)事業者との接触にとても慎重です。議事録もすべてとって、国会に提出できるようにしなければならない。透明性という観点ではいいと思いますが、正直公務員はみんなビビってしまいますよね。外国人も「以前から知っているはずなのに、全然話してくれない」と嘆いていましたよ。

玉置:普通のやりとりもできないと。

美原:区域認定が決まれば、ある程度対話も進むと思いますが、現時点での競争状態においては、民間の意見でバイアスを受けたくないという意思があるのかもしれません。わからないでもないですが、先ほど話した100円のチップの持ち出しをカメラでチェックするのか?という話と同じく、やや現実から離れた側面も存在していることは事実です。対話が進まなければ、理解が進みません。

市場との対話が必要(美原氏の資料から抜粋)

玉置:今後の規則の方向性について、最後にまとめをいただけますでしょうか?

美原:今回の規制案はIR整備法ができてから4年もかかっています。なんでこんなにかかったのか?という感想がある一方で、内容的には包括的で、精緻にできているのは間違いありません。ただ、どこまでやるかという適用範囲や深さ、そしてどのように執行していくのかはまだ不透明なところもあります。こういったところは実際に運用してから決まる部分も多いので、現場や利害関係者の声を得て固まっていくモノだと思います。

なにしろまだカジノ自体ができていません。区域認定を経て、免許が交付されて初めてできるもの。事業者が選定されてから、具体的な議論が進むと思います。ですから、これが最後ではないし、すべてではない。時間をかけて、ゆっくり議論しながら、内容を詰めていくというスタンスで見ていくべきだと思います。