【新型コロナのIR影響レポート・基本方針確定後】日本 1月20日版 (2/2)

JaIR編集委員 玉置泰紀

【北海道】鈴木知事が2021年のIR認定申請見送りを表明

 北海道の鈴木直道知事は14日、道議会の、食と観光対策特別委員会での質疑に関して、「今回の(国が示した)申請期間では、充分な検討期間が確保されたものとは言えない」と言明し、改めてIR(統合型リゾート)誘致の見送りを表明した。今後も、新たなインバウンドの一つとして検討は続けていくことも強調をした。
 
 北海道議会の特別委員会「食と観光対策」で14日、観光振興監より、IRについて、新型コロナ感染症の拡大の中、世界経済の動向や事業者の環境などから、政府が基本方針で示した、自治体からのIR区域整備計画(IR事業者と共同)の国へ認定申請期間(2021年10月1日から2022年4月28日)に間に合わせるのは難しいという答弁があり、その後の鈴木知事の定例記者会見で、今回の申請を見送るのかという質問に対し、「今回の(国が示した)申請期間では、充分な検討期間が確保されたものとは言えない」、「しかし、新たなインバウンドの可能性の一つとして、北海道らしいIRコンセプトは追及していき、取り組みを進めていく」と回答した。

 明確に、申請をしないとは発言していないが、「充分な検討期間が確保されたとは言えない」と繰り返し発言しており、今回の認定申請は見送ったと思われる。

 鈴木知事は2019年11月29日に一度、修正される前の認定申請期間で見送りを表明しており、今回、基本方針が明らかになって9か月申請期間が後ろ倒しになったことから動向が注目されていたが、決断を下した形だ。JaIR(ジャイア)のインタビューに対して、候補地である苫小牧市の岩倉博文市長は「これからの北海道を考えたとき、できるだけ早く新しい装置を作ることが必要だと考えています。その1つがIRです。ぜひ知事には『ご英断をお待ちしています』と伝えたいです」と、期待を語っており、見送りを表明後、岩倉市長は道庁で知事と会談した後、「我々も少し驚きながら状況の推移を見守ってきた」とし、7年後の再挑戦という話には「民間事業者はそこまで待ってくれない」と語り、動きを見極めたいとしている。


北海道庁が公開している北海道知事定例記者会見(令和3年1月14日)より


■関連サイト
北海道鈴木直道知事定例記者会見 動画(令和3年1月14日)※IRに関する質問は1時間12分頃~
https://www.youtube.com/watch?v=NKlDFt__ixE&feature=youtu.be

統合型リゾート(IR)苫小牧市
http://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/kanko/resort/rizoto/

■関連記事
北海道・鈴木知事が2021年のIR認定申請見送りを表明 
https://jair.report/article/547/
 
9ヶ月の遅れは追い風か? 苫小牧は北海道IRをあきらめない
https://jair.report/article/546/

 

【東京都】小池知事は基本方針決定を「国として観光政策を進めるという判断」と認識

 政府の基本方針発表後の記者会見で、東京都の小池百合子知事は2020年12月、「政府がIR整備の基本方針を閣議決定しました。申請を9カ月遅らせるという内容ですけれども、東京都として今後の対応を教えてください」という質問に以下のように答えた。

「はい、国がIRの整備に関する基本方針を閣議決定したということをベースとしてのご質問かと存じます。このことについては、決定したことについては聞いておるところでございます。また国として観光政策を進めるという判断の下での今日の決定ということと認識をいたしております。 また、都とすれば、メリット、デメリットの両面がございますので、今回示された基本方針も踏まえて、引き続き総合的な検討を行っていくという視点に変化はございません」

 東京都は、2018年に「東京ベイアリアビジョン(仮称)の検討に係る官民連携チーム」の設置をしており、3回のワーキンググループを経て、昨年10月に最終提案「東京ベイエリアTowards2040 11カラーズ;未来創造域のデザイン」が提出されている。この11の提案のうち4番目が「MICE、IR、トランジットツーリズム」で、「世界に向けて『ここにしかない』ベイエリアツーリズムを展開する」として、イメージパースとともに、「東京の国際競争力強化『稼ぐ東京』のためにMICE、IR施設を整備して、国内外から人を集める」と謳われている。

 関連した動きでは、東京都は2020年12月、有明の東京ファッションタウンビル西側に所有する土地をテレビ朝日、コナミホールディングスなどに売却することを発表している。

 テレビ朝日は国際会議などに使う多目的ホールやイベントスペース、制作スタジオとして活用する予定で、2024年12月開業を目指す。

 コナミホールディングスなどは、取得した土地で、研究開発の拠点やスタジオなどを想定している。有明地区に隣接する青海地区はIRの候補地とも言われており、東京ベイアリアビジョン(仮称)での相乗効果も期待できる。
 
2020年12月18日の小池百合子・東京都知事の記者会見


■関連サイト
東京都港湾局ホームページ 特定複合観光施設に関する調査分析報告書
https://www.kouwan.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/announcement/irchosa.html


 

【愛知県・名古屋市】河村・名古屋市長はナガシマリゾート周辺押し

 名古屋市の河村たかし市長は基本方針決定前の2020年12月14日に行われた市長定例記者会見で、「IRの基本方針が今週にも閣議決定される見通しらしいんですが、それによると、誘致自治体の申請受付を来年10月から始めるということですが、2年前に、(三重県の)ナガシマリゾート周辺の整備を提案されたという流れがあるんですけれども、現状どうなってるんですか」との質問に対して以下のように答えている。

「まあ、それどこじゃにゃあ、まあ、一言で言うとそういうことだね。 コロナの事もありましてということですけど、まあ名古屋市のほうがええと思ってますけど、やっぱり三重県ですので、やっぱり木曽岬町さん、それから桑名市さん、それから三重県さん、三重県知事、あの辺がやっぱりよしという気持ちになってもらわないといかんもんでこれ。 ちゃんと電話しといたんだよわし、言っておきますけど」と答えている。

 愛知県は状況に変化はない。2019年12月に、「特定複合観光施設区域整備の事業可能性の検討に係る意見募集」(RFC)を告知しており、募集期間を、2020年2月から5月末までに延長、その後5月29日に報告書を公表している。

 募集実施の概要は、検討対象地は、中部国際空港(セントレア)のある空港島の県有地など約50ha。愛知県はこれまで、「MICEを核とした国際観光都市」の実現を目指した調査研究を2017年からスタート、2018年には調査結果の報告、これに基づく民間事業者からのアイデア募集も行われている。RFCは政府のIR整備法に基づく意見募集。

 民間事業者へのヒアリングからは、以下のような意見が出ていた。

・会議場、展示場、ホテル、エンターテインメント施設を一体で整備することで、MICE施設の機能が最大限発揮される。MICEが開催されない時のホテル稼働率確保のため、エンターテインメント施設・機能が重要。

・当地域ならでは観光資源の魅力向上、地域連携、交流機会創出などによるMICE誘致促進が必要。

・MaaSなどの最先端技術の積極的導入していくべき。

・次世代型サービスが展開される場として位置づけ、スタートアップ企業などを呼び込む機会を創出すべき。

 
■関連サイト
愛知県ホームページ「令和元年度国際観光都市機能整備調査事業について」
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/chiho-sosei/1kokusaikankou-toshi.html