<IR用語集・基礎知識> クルーズ船によるカジノ

JaIR編集部

日本人にも人気のコスタクルーズ(イタリア)、ゲンティンクルーズライン(香港)など、船籍がカジノ合法国で、観光を目的とするクルーズ船では、エンターテイメントの一つとしてカジノが提供されることが多い。ただし、訪問先の国の領海上(12海里=22.224km)、あるいは寄港中にカジノを提供する場合は、訪問先の国の法律に従う必要がある。訪問先がカジノ違法国であれば、船上のカジノエリアを一時的にクローズするなどの対応を行う。

船上でのカジノ提供は、もともと法律の抜け道として生まれたものなので、それぞれの国においてしばしば議論の対象となるものの、2016年、ベトナムではダナン市寄港中のカジノ営業が許可されたり、韓国では自国籍の船が外国人専用カジノを備えられるようになったりと、緩和の動きも多く見られる。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響で世界的に運航中止状態に陥り、アジアのクルーズ業界を牽引してきたゲンティンも持ち株ほぼ全てを融資の担保として差し出すなど、各社苦境を強いられている。

過去には、これらカジノを備えるクルーズ船とは別に、特定地域への観光を目的とせず、いかなる国家の主権も及ばない公海に向かって顧客にカジノをさせるためだけに航行する「カジノ船」(ギャンブル船)も盛んであった。主に、まだほとんどの州でカジノが違法とされていた1920~1940年代のアメリカで行われ、「Gambling Ship(邦題:海の密室)」(1933年)、「Mr. Lucky」(1943年)といった映画の題材にもなっている。アメリカでは、1949年の連邦賭博船法によって、領海・公海問わず米国籍船舶上のギャンブル行為は禁止されたが、1991年に米国籍クルーズ船競争法が制定され、米国籍船舶上のギャンブル行為は公海においてのみ許容された。さらに1996年には、米国賭博船法が成立し、カジノ船の管轄権は連邦政府から州政府に移管することが定められた。

しかしながら、もともとほとんどの国において3海里(5.556km)であった領海の範囲が、1994年の国連海洋法条約によって12海里(22.224km)に拡大。カジノ船の運航できる範囲も狭まり、その数は徐々に減っていったが、2000年代以降も香港などで栄えた。

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