<IR用語集・基礎知識> ベトナム

JaIR編集部

北は中国、西はラオス、カンボジアと国境を接する多民族国家。人口は約9,467万人(2018年・越統計総局データ)、面積は日本の約9割にあたる32万9,241㎢。第二次世界大戦以降、フランスから独立するために勃発したインドシナ戦争、分断された南北統一を巡り、共産主義陣営(旧ソ連)と資本主義陣営(アメリカ)の介入で激化したベトナム戦争と長年苦境が続いたが、豊富なエネルギーや鉄鉱資源を持つ同国は近年継続的な経済成長を記録。各国が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける2020年においても、+2.8%の成長を遂げると世界銀行が予測している(2020年6月時点)。
 
その一因として、1986年に導入されたドイモイ政策がある。以前は他国からの無償援助に依存した社会主義国家であったが、同政策により、国民の生活に必要な産業への投資と社会主義政策の緩和が始まった。アメリカの経済制裁が解除された1994年には、首都ハノイから車で約2時間のドーソン岬に、ベトナム初のカジノ「ドーソン・リゾートホテル&カジノ」が開業。2020年現在は9つの施設が稼働中だ。大半が小規模なものだが、2013年開業の「ザ・グランド・ホートラム・ストリップ(以下グランドホートラム)」、2019年開業の「コロナ・リゾート&カジノ(以下コロナリゾート)」は、大型IRと呼べる。カナダのアジアン・コースト・ディベロップメントが運営するグランドホートラムへは、ベトナム最大の商業都市・ホーチミンから車で約2時間半で、ゴルフ界の大御所であるグレッグ・ノーマンが監修したゴルフコースも備える。
 
一方、オランダのアップフィニティ・ゲーミング・マネジメントが運営するコロナリゾートは「初めて自国民に開かれた」カジノで、ホーチミンから飛行機で約1時間のフーコック島にある。これまでカジノに入場できるのは、21歳以上(一部18歳以上)の外国人のみだったが、各施設赤字計上だったため、2017年に政府が規制を緩和。試験的に3年間(3年後に政府が再度検討)、自国民の指定カジノでのプレイを許可した。その指定カジノが同施設と、北部ヴァンドンで開発中の未オープンの施設。ただし条件があり、21歳以上で、過去3カ月間の月収が1,000万ドン(約47,000円。ベトナム人の平均月収は約27,000円)あったことを証明すること、24時間あたり100万ドン(約4,700円)の入場料を支払うことが求められる。
 
そのほか、古い町並みが世界遺産に登録されている中部の海辺の街・ホイアンでは、香港のサンシティ・グループが大型IR「ホイアナカジノ」を開発中(2020年6月28日一部開業、グランドオープンは2021年)。国の経済成長率の推移とともに、カジノ市場の拡大も期待される。