<IR用語集・基礎知識> カンボジア

JaIR編集部

タイ、ラオス、ベトナムに囲まれた東南アジアの国で、日本の約2分の1に相当する面積18.1万㎢と、人口1630万人(2018年IMF推定値)を有する。アンコールワットなどの遺跡群、手つかずの自然、昔ながらの情緒を残した街並みといったイメージが強いが、一方で外貨獲得の国策としてカジノ産業が盛んな国でもあり、2019年には、政府から発行されるカジノライセンス数が過去最高の163に達した。ただし、1996年に施行された賭博禁止法により、カジノに入場できるのは「外国人のみ」となっている。
 
首都プノンペンでは、香港株式市場上場のナガコープ社が、国内最大規模のIR「ナガワールド」を運営している。同社はカンボジア国内で、1995~2065年の超長期的なカジノライセンス、さらに2045年までプノンペン半径200㎞における独占運営権を保有。2019年には長崎県内のIRイベントに登壇し、日本進出に対する興味を示したが、その後に長崎県が開始したRFCには参加していない。プノンペンは上海から飛行機で約4時間で、ナガワールドの顧客も主に中国からの旅行客。同施設の総訪問客数は2017年に120万人を突破し、現在は同年11月にオープンした「ナガワールド2」に続いて「ナガワールド3」を建設中だ。
 
地方では、タイとの国境に位置するポイペト、ベトナムとの国境に位置するバベットが、小さなカジノタウンとして有名。しかしながら、カンボジアでのカジノは合法ではあるが、強い規制基盤が欠如しているため、課題は多い。その一例として、南部のビーチリゾート、シアヌークビルが挙げられる。かつては“第2のマカオ”として中国資本のカジノが続々と進出し、国内の半数強もの数がここに集まったが、やがてホテルやアパートの個室などで行われるオンラインカジノが激増。業者にとって通常のカジノより儲けが大きく、政府の規制も緩かったために中国人犯罪の温床となり、マネーロンダリングや違法カジノの横行に加え、殺人事件、集団詐欺、拉致監禁などが頻発する事態となった。
 
カジノ業者以外にも、不動産開発業者やレストラン、マッサージ店、カラオケ店など様々な企業が中国から進出し、シアヌークビルの大半のビジネスが中国の資本によって運営されるという状況に。カンボジアの地元住民は家賃の高騰で街を追われ、中国政府にとっても、中国本土からの資金流出が問題となった。そんな中、2019年、カンボジア政府は国内オンラインカジノの全面的禁止に踏み切ることを決定し、2020年に施行。結果、シアヌークビルに乱立していたカジノのほとんどが破産し、数万人の中国人がカンボジアを出国することとなった。発展途上な法律の整備に、今後も注目が集まる。