【新型コロナのIRへの影響レポート】韓国 9月15日版 (1/2)

二上葉子

 世界中で新型コロナウィルスの影響を受けて、各国では出入国制限や都市封鎖がなされてきたが、制限の緩和が始まっている。しかしグローバルな移動は制限されており、見通しは厳しい。日本型IRビジネスレポート(JaIR)では、統合型リゾート(IR)がある主要な地域の新型コロナウィルス関連の動向を配信。ラスベガスマカオシンガポールに引き続き、今回は韓国の最新状況をレポートする。

インチョンの高層ビル群
 

8月下旬に第2波発生、防疫レベルを一時引き上げ

 韓国の新型コロナウィルス感染者数は、9月14日時点では、新規感染者が106名、死亡者が4名、感染者合計は3,146名で、これまでの感染者累計は22,391名、回復者18,878名、死亡者は367名である。8月中旬まで感染拡大を抑制できていたが、8月下旬に感染者が急増、一時は1日の新規感染者が300人台となった。現在は緩やかに減少し始めているが、新規感染者が100人台が続き、予断を許さない状況である。

 感染者急増を受けて、8月30日には韓国・首都圏での防疫レベルが「レベル2」から「レベル2.5」に引き上がった。「レベル2」では、カラオケ店、ナイトクラブ、ネットカフェ、ビュッフェなど「リスクが高い」と判断された会場を閉鎖しなければならず、50人以上の屋内集会や100人以上の屋外イベントは禁止。「レベル2.5」ではさらに、レストランやその他の飲食店(パン屋、フランチャイズコーヒーチェーン等)の営業制限と、屋内スポーツ施設やいわゆる「塾」の教育施設閉鎖を義務付けている。ソウル市内では8月24日からマスク着用を義務化、細部の指針も9月10日に強化された。それらの効果もあり、その後、感染者の減少がみられたため、ソウルでの「レベル2.5」は9月13日に終了。飲食店は営業時間制限のない通常時のサービスを再開、屋内スポーツ施設も再開された。首都圏の幼稚園、小学校、中学校は9月20日まで閉鎖され、21日から登校再開となる予定。現在は、引き続き全国で「レベル2」の規制をおこなっている。

 国内の旅行需要喚起策として宿泊・外食クーポンを発行するキャンペーンがスタートし、8月17日を臨時公休日として設定したが、8月の感染者増加によりクーポン発行の一時的な中止、公休日の外出自粛を呼びかけることとなった。キャンペーン自体は現在も行われている。

 韓国政府は、感染症対策を強化するため、韓国保健福祉部所属の疾病管理本部を中央行政機関の「疾病管理庁」に格上げすることを決定。疾病管理庁は、次官級をトップとする、定員1,500人規模の外庁で、9月12日に発足した。同庁は、感染症政策の策定・実行に独自の権限を行使することができる。感染症の流入・発生動向を24時間体制で監視する総合状況室と、感染症情報を収集・分析して予測する危機対応分析官を新設し、対応にあたる。新型コロナウィルスの医療政策に関しては、反発する医師らもおり、全国でストライキも発生。8月26日には約3,500の医療施設が休診となった。対策強化の一方で、現場の混乱が生じる事態となっている。


一時「レベル2.5」に引き上げられていたソウルの街
 

7月の訪韓客は約6万人、渡航規制が続く

 韓国観光公社が9月14日発表した韓国観光統計資料によると、7月に韓国を訪れた外国人は6万1,012人で、前年同月の144万8,067人に比べて、95.8%減少したことがわかった。国別にみると、1位がアメリカからの訪韓客で1万1,922人、2位はフィリピンから10,166人、毎年最多の入国者数を占めていた中国からの訪韓客は、3位の9,738人と大幅に減少した。日本からの訪韓客はわずかは755人であった。韓国では、引き続き、すべての入国者は入国から3日以内に診断検査を受けることとなっている。

 現在も、「海外入国者に対する防疫管理方案フローチャート」(6月12日設定)に基づき、自宅隔離、政府指定施設隔離、能動監視が行われている。この隔離と能動監視は、14日間実施される。なお、韓国に対して入国禁止措置を取った151の国・地域のうち、韓国は90の国・地域に対するビザ免除措置を暫定的に停止しており、日本も3月9日以降含まれている。