【新型コロナのIRへの影響レポート】韓国 9月15日版 (2/2)

二上葉子

外国人向けカジノは8月収入減、国内向けのカンウォンランドは閉鎖中

 韓国の賭博規制当局によると、2019年の外国人専用カジノの売上高は1兆4,500億ウォン(約1,297億円)で、2018年の1兆6,300億ウォン(約1,458億円)と比較して前年比10.9%減であることが、9月8日に報告された。規制当局である国家賭博管理委員会は、業界の財務状況をまとめた数値表をオンラインで公開したが、前年比で変動した理由についてのコメントの掲載は無かった。2019年の現地通貨ベースで判断されている。

 韓国の外国人向けカジノは、2019年に韓国の全ギャンブル売上高(非ゲーミング施設を含む)の6.4%に寄与し、2018年の同セグメント寄与度から0.9%減となった。16か所の外国人専用カジノの来訪者数は、2019年中に323万人、2018年の約284万人の訪問数と比較し13.9%増であった。

 韓国国内で外国人専用カジノ4か所を運営する最大手のパラダイスの8月カジノ収入は、173億ウォン(約15.4億円)との発表があり、前月7月の173.9億ウォン(約15.5億円)と比較して0.5%減で、前月とほぼ同等の水準を保った。8月カジノ収入の前年同月比では、2019年8月698億ウォン(約62億円)から75%減。今年8月のテーブルゲーム収入は前月比横ばいの154億1,000万ウォン(約13.7億円)、2019年8月の657億4,000万ウォン(約58億円)近くと比較すると76.6%減少した。

 パラダイスと日本のセガサミーホールディングスとの合弁事業であるパラダイスシティ(仁川)では9月1日に、従業員の新型コロナウィルス感染が判明し、1日から3日までを閉鎖することを発表した。その後も閉鎖を延長していたが、9日に施設を再開した。経営陣は当初ゲームエリアの閉鎖期間を「無期限」としたが、公式HPで再開情報が更新された。「地元当局との緊密な協議で」高強度、精密検疫を実施し、さらに、「追加感染の拡大を防ぐために、業務委託の従業員を含む全従業員が新型コロナウィルス検査を受け、陰性の結果を受けた従業員だけが職場復帰を許可された」と掲載されている。

 感染の詳細については明らかにされていないが、同施設のアートパラディソホテル、屋内プール、サウナ、フィットネスセンター、プレイステーションゾーンなどの非ゲーミング施設と、少なくとも1人のスタッフが体調を崩したとされるレストラン「インペリアル・トレジャー」を含む一部の飲食店は閉鎖されたままとなる。

 外国人専用カジノを運営する大手のもう1社、グランドコリアレジャー(GKL)は、グループ全体で、7月売上高は141億ウォン(約12.7億円)で前月比14%増を報告していたが、8月のGKLの売上高は再び減少し、8月は127億6,000万ウォン(約11.4億円)で、前月比10%減となった。カジノ売上高は前年同月は530億ウォン(約47.4億円)に比べ、76%減となった。

 国内向けのカンウォン・ランド(江原ランド)は、政府による防疫措置「レベル2」の施行でソーシャルディスタンスを規制するため、8月23日の午前10時から閉鎖となった。当初、閉鎖は8月29日午前6時までの予定であったが、全国的に感染者が急増し、警戒レベルが引き上がったことにより、さらに閉鎖期間が延び、現時点では9月21日午前6時まで閉鎖となっている。保健当局からの継続的なアドバイスと、新型コロナウィルスに関する国の状況を確認した上で再開を行う。
 
 現地報道によると、江原ランドは第2四半期に455.6億ウォン(約4.5億円)損失を計上した。8月11日の報告では、最新の四半期決算は、2020年の第1四半期の1,561億ウォン(約13.8億円)損失から改善されている。同社は、2020年上半期の1日平均のカジノ売上高に基づいた値として、8月23日午前10時から9月7日午前6時までの期間でカジノの損失額は188億ウォン(約16.8億円)となる予想を、韓国証券取引所への報告している。


自然豊かなカンウォンの風景、奥に見えるのがカンウォンランド
 

新たなIR開発の動き

 カジノ運営会社モヒガン・ゲーミングが韓国で開業を予定している大規模IRプロジェクト「インスパイア」について、アジアのカジノ産業メディアGGRAの取材に対し、同社は開業日を2022年後半に「絞り込んだ」と語った。この計画は、韓国の首都ソウルに近いインチョン(仁川)に位置し、20年間にわたり複数フェーズにわけ、総額50億ドル(約5,309億円)の資本が投じられると言及されている。

 一方でコリアタイムズ紙によると、この計画は4つのフェーズで開発され、最終的なものは2031年までに完成する予定とも報じられている。2022年後半の開業計画は、「より厳しく新型コロナウィルスに準拠した建設プロセスと、ゲストと従業員のため、より安全な環境を作るための設計変更を反映する」とモヒガン社の広報担当者はコメントしている。

 新型コロナウィルスの影響で厳しい状況が続く観光業であるが、9月1日の閣議決定によると、2021年観光部門の政府予算は1兆4,859億ウォン(約1,329億円)で前年比10.1%の増額となった。この増額について、「新型コロナウィルス以降、新しい生活を生きていく国民の安定した文化生活のために新規事業を積極的に発掘し、観光・文化芸術・スポーツなどの新型コロナウィルスで被害を受けた業界の早期回復をサポートする予算を大幅に反映した」という説明がなされた。2021年の観光振興予算の増加が、韓国IRにどの程度の影響をもたらすかは未知数だが、現在実施中の国内宿泊需要喚起キャンペーンの利用状況を含め、注視していく必要がある。


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