IRのキラーコンテンツ「eスポーツ」とはなにか? JeSUの浜村氏に聞く (3/3)

大谷イビサ(JaIR編集部) 写真●曽根田元

eスポーツとベッティングの相性とは?

―フィジカルスポーツだと、米国ではスポーツベッティングが解禁されつつありますが、eスポーツのベッティングに関してはどうでしょうか?

浜村:eスポーツとベッティングは決して遠い距離にあるものではないと思います。実際、プロチームが勝ち上がって優勝を勝ち取るみたいなリーグであれば、ベッティングは成立します。

ただ、eスポーツはリーグ戦より、トーナメント戦が多い。でも、アマチュアの選手は情報がないので、賭けようがないんです。16歳のアマチュアがいきなり優勝して3億円の賞金をゲットするみたいな世界なので、ベッティングしようがない。

実際、「ストリートファイターV」で争うCapcom Cup 2017で公式世界王者となったMenaRDというドミニカの選手は、まったく無名だったので、どんなキャラクター使うかもわからず、どんどん勝ち進んでしまいました。将棋の世界ではありえない、プロとアマチュアが戦って、アマチュアが勝ってしまうみたいなことが、eゲームではありえます。

―eスポーツとベッティングの関係はどうお考えですか?

浜村:賭けたら面白いとは思います。なぜならゲームなので、絶対に勝てない組み合わせにはしないからです。

圧倒的に強いキャラクターを作ったら、誰もがそのキャラクターを使うので、なんにも面白くない。でも、ゲームなので、「すごく速いけど、力がない」とか、「スタミナはあるけど、当たり判定が弱い」といった感じで、さまざまなキャラクターが存在するので、組み合わせの妙でいくらでも面白くなるんですよ。

たとえば、ウイイレ(サッカー)やパワプロ(野球)などのゲームは球団からライセンスを取得して、チームを構成するので、リアルのチームの強さが反映されます。リアルの試合で強いソフトバンクや巨人は、ゲームでもやっぱり強いのです。でも、eスポーツでは、「強いチームは三試合のうち一試合しか使えない」といった、どっちも勝ちやすいルール設定をします。1対1だけでなく、チーム戦を組み合わせて、先にポイントをとったほうが勝ちとか、ゲームを面白くする方向にルールが設定されます。だから、一発逆転とか、大穴の優勝と言うことはよくあるし、ルール設定はフィジカルスポーツより全然やりやすいはずです。

―仕組み的にフェアにしやすいということですね。逆に選手はどんなルールが来ても、対応できないといけないので大変ですね。

浜村:そこは練習しかないですね。キャラクターやチームを複数使えるようにするとか、あらゆる状態をシミュレーションする必要があります。あとはコンピューターとだけ対戦しても強くなれません。人間と対戦し、相手の癖を読み取るのが重要なので、相手のデータをどれだけ持っているかがとても重要になります。

―一方で、フィジカルスポーツと違って、プログラム的に不正を仕掛けるということも可能なので、ベッティングに向かないという声もありますね。

浜村:いわゆるチート行為ですね。海外では確かにいろいろ問題起こってます。韓国では八百長で追放される選手も出ています。

ただ、チート行為って原理的には可能なのですが、リアル大会でキャラクターが異様に速いとか、ヒットポイントの削られ方が低いとか、観れば必ずばれます。チートアプリも不正検出アプリもありますが、目視するのが一番早いと思います。

日本でIRができる頃にはeスポーツは産業として華開いているはず

―今後、eスポーツがメジャーになるためにはなにが必要になるのでしょうか?

浜村:やっぱりスター選手が鍵になると思います。IRもそうですが、やはり興行で人を集めるのって、やはりスター選手ですよね。錦織圭選手や大坂なおみ選手がいなかったら、日本のテニスって興行的に成功しない。eスポーツも同じだと思います。

―コンテンツに関してはどうでしょうか?

浜村:グローバルではMOBA(Multiplayer Online Battle Arena Video Games)の流行が一気に来ています。MOBAはスーパーマリオのようなソロプレイーメインではなく、各人がキャラクターを持って、チームで得点をとっていくみたいなゲーム。代表的な「DOTA2」は一大会の賞金が36億円にまで跳ね上がっています。

中国でもメジャーなMOBAは3億人以上が遊んだというくらい流行っています。先日テンセントが発表したSwitchとスマホで遊べる「ポケモンユナイト」というタイトルが出たら一気にブレイクするかもしれません。日本ではまだMOBAはマイナーですが、これが出ると、本格的なeスポーツで使われるゲームをみんなが遊ぶことになります。ピカチュウ使いとか、カビゴン使いとかが集まってチーム戦が一気に盛り上がって、eスポーツの選手人口の拡大に寄与すると思います。

―今後の国際大会の予定についても教えてください。

浜村:来年、タイで「2021 Asian Indoor and Martial Arts Games」というアジアオリンピック評議会が開催するインドアゲーム大会が開催されるのですが、そこでeスポーツが正式種目に決まりました。おそらく日本チームが金メダルをとれる大会になります。

2022年にはアジア大会で正式種目になる可能性が高くて、2025年の関西・大阪万博でもeスポーツの大会が計画されています。そして、2026年のアジア大会は名古屋になるので、かなり盛り上がると思います。2028年のロサンゼルスオリンピックで世界大会で正式種目になり、2032年のオリンピックが札幌になってeスポーツで金メダルがとれたら最高ですね。

ラグビーだって、日本でワールドカップやったことで、一気に認知度上がりましたよね。金メダル選手が出れば、eスポーツの認知度はさらにアップします。いずれにせよ、2025年以降の動きが鍵になってきます。

―IRもちょうどその時期にできるはずです。

浜村:IRができる頃には、選手人口の拡大や目指すべき大会ができて、産業として華開いてくるはずです。ファンだけが観る者ではなく、一般の人たちが観るようになり、ふらっとIRに来た人が「あのスター選手出てるから観てみよう」と大会を楽しむようになるといいのかなと思います。

2020年8月18日 初出時、本文中の「League of Legends」の大会賞金額が32億円と記載しましたが、ゲームタイトル名は「DOTA2」の誤りで、賞金額も約36億円でした。文中の一部の表現も改めました。お詫びし、訂正させていただきます。本文は修正済みです。


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