IRのキラーコンテンツ「eスポーツ」とはなにか? JeSUの浜村氏に聞く (2/3)

大谷イビサ(JaIR編集部) 写真●曽根田元

eスポーツに立ちはだかっていた法規制の課題 年内には解消へ

―今まで日本でeスポーツがメジャーにならなかったのはなぜでしょうか?

浜村:日本の課題は法規制ですね。まず景品表示法では、メーカーの商品である課金ゲームで高額な賞金を提供するところが問題になっていました。そのため、有料パッケージや課金額によって強さが変わるタイトルに関しては、賞金額の最大が10万円を超えられないという課題がありました。そこで、JeSUが消費者庁に問い合わせ、JeSUが認定するプロライセンスを持っているゲーマーや、実績がある選手を招待するという形に関しては、仕事の報酬としての賞金が認められるという見解を消費者庁から得ています。

JeSUのWebサイト

関連:eスポーツに関する法的課題への取組み状況のご報告(https://jesu.or.jp/contents/news/news_0912/

また、賭博罪に関しては、選手から集めた参加料を賞金に使うと賭博とみなされます。これに関しても関係省庁と議論を重ね、集めた参加料はあくまで運営にのみ使い、賞金は協賛から集めれば問題ないという判断を得ています。

―では、法規制面での整理はかなりクリアできたんですね。

浜村:ただ、もう1つ残っているのは風営法の規制です。

たとえば韓国のPC房のようにゲーミングPCを並べた練習場を用意しても、ゲームをやって、お金をとるのであれば、(ゲーセンと同じ)風営法の届け出が必要になります。また、選手が登録料を支払って、試合するというのも普通のスポーツでは当たり前のようにやっていますが、eスポーツだとゲームをやって、お金をとっているとみなされて、やはり風営法の届け出が必要です。風営法がらみの規制があると、上場企業も投資に尻込みしてしまいますよね。

ただ、最近は管轄している警察庁が理解を示してくれるようになってきているので、こうした状況は今年中には整理がつくのではないかと思っています。法規制の課題にめどがつくと、選手人口が増え、街のあちこちに練習場ができ、大会を目指す人がさらに増えることになります。大会の視聴者が増えれば、地元リーグや大学リーグ、プロリーグなどがどんどんできて、他のスポーツと同じ環境になるのではないかと思います。

―世界的にはオリンピック前提に強化選手を育てようという国もあります。

浜村:確かに中国や韓国は国を挙げてeゲームの強化に乗り出しています。ただ、中国はゲームという産業自体が生まれてまだまだ日が浅いし、使うゲームは国が指定したりします。一方の韓国は1990年代に国策でネットインフラを一気に普及させた経緯があります。受験戦争も激しいので、大人が学習用にパソコンを買い与えたら、子供たちはゲームをやりはじめ、いきなりオンラインゲーム大国になったんです。この結果、eスポーツが一気に台頭し、90年代の後半にはすでにeスポーツ専用のチャンネルができたりしています。

日本にはeスポーツの選手を支える環境がありません。海外はプロスポーツとして国やスポンサーが選手を支えているのに、日本はアマチュアスポーツの延長上でサポートしているに過ぎないので、当然大人になったら就職して辞めてしまいます。

-日本は追いつけるのでしょうか?

まだ追いつけると思っています。というのも、日本はゲームをプレイするという環境が歴史的に長かったからです。たとえば、日本にはゲーセンがありましたよね。ストリートファイターの対戦台とかがあって、ゲーマーたちはゲーセンで遊び、いわゆる「格闘技ゲーム大国」と呼ばれるまでになりました。

―ブラジルの子供たちが小さいときからサッカーになじんでいるのと同じかもしれません。

浜村:そうそう。日本の子供たちは、HPやMPなどのゲーム用語が普通に日常で交わされていますよね。それくらいゲームは自らのDNAとして組み込まれています。だから、ちょっと支えてあげれば、きちんと他国に打ち勝つことができるはずなんです。実際、十年以上実績のあるIESF(International eSports Federation)という国際eスポーツ団体の世界大会において、日本は昨年世界チャンピオンになってます。資質はあるんです。

新型コロナウイルスで多くの人たちがeスポーツを観るように

―新型コロナウイルスはeスポーツになにか影響を与えましたか?

浜村:まずはライブでやろうとしたeスポーツがことごとく中止になったり、延期になりました。リーグ戦を予定していたのに、スポンサーが集まらずに延期したというところもありました。大会が開けなかったというのはもちろん悪い影響です。

一方で、いい影響もあります。たとえば、海外のフィジカルスポーツリーグは、リアルの試合ができなくなったので、試合をeスポーツ化して、オンライン配信したんです。日本人選手でも、錦織圭選手や八村塁選手がプレイしましたよね。そうしたら今までまったくeスポーツを観なかった人が、いきなりeスポーツを観るようになりました。特にNBAで八村塁選手が出た試合はネット配信されたので、日本でもけっこう観た人が多かったようです。

―確かに周りでも観た人いました。

浜村:今までeスポーツの認知度が上がらなかったのは、スポーツうんぬんという議論よりも、eスポーツを観る人がそもそも少なかったんです。でも、いったん観てくれたら面白さもわかります。好きと嫌いの前に、無関心と無理解があるので、視聴者が増えて先入観をとっぱらえたことは、今回のコロナがもたらせたメリットとして、とても大きかったと思います。最新の「ウイニングイレブン」は、リアルの試合を同じくらいのグラフィックになっていますし、15分で終わるのでeスポーツの方が面白いという人もいますね。

しかもウイイレとかは、リアルサッカーの戦略がそのままeスポーツに活きるんです。わりと有名な話ですが、アジア大会で金メダルをとった相原翼君は、以前は7点取ったら、8点取られるみたいな叩き合いのようなサッカーをやっていました。でも、元日本代表の秋田豊さんがカウンター攻撃を教えたら、守備力も勝率も上がったんです。やはり戦略とゲームはリンクするんです。

―逆にリアルスポーツも、センサーを付けたり、データ解析したりして、ゲーム化していますよね。

浜村:最近だとサーフィンも海に行かないで、VRゴーグル付けて姿勢を保ったりしていますね。ボブスレーもリアルのコースを見に行けないので、映像をとって、車に載って体重のかけかたを覚え込むらしいです。いずれにせよ、スポーツもフィジカルとバーチャルの境目がどんどんなくなっています。