【新型コロナのIRへの影響レポート】ラスベガス 7月6日版 (1/2)

二上葉子

 世界中で新型コロナウィルスの影響を受けて、各国では出入国制限や都市封鎖がなされてきたが、徐々に制限の緩和が始まっている。日本型IRビジネスレポート(JaIR)では、IRがある主要な地域の新型コロナウィルス関連の動向を配信。シンガポールマカオ韓国に引き続き、今回はラスベガスの最新状況をレポートする。


カジノ再開後、IR施設での衛生対策が問われている


カジノ再開拡大するも、IR施設で新型コロナ感染者発生

 ラスベガスでは5月29日にフェーズ2に移行し、6月4日にカジノが再開したが、その後も施設再開が順次拡大している。

 シーザーズは、6月4日再開初日にシーザーズパレスとフラミンゴ・ラスベガスをオープン。その翌日にハラーズ、12日にザ・リンク、18日にパリス・ラスベガスを再開した。パリス・ラスベガスのエッフェル塔では再開を記念し、6月30日まで毎晩30分ごとに新しいライトショーが開催された。

 MGMリゾーツは6月4日に、ベラージオ、ニューヨーク・ニューヨーク、MGMグランド、ザ・シグネチャーをオープン。6月25日にルクソール、ザ・ショップス、7月1日にマンダレイベイ、フォーシーズンズ、アリアの施設を再開した。ルクソールホテルにあるHyperX・eスポーツ・アリーナは6月25日に再開。メインアリーナで毎週のeスポーツトーナメントを限定的に開催、7月からは新しいオンライン形式を取り入れる。

 また、6月4日再開時に見送られていた、ベラージオとシーザーズパレスのポーカールームは、6月19日からオープン。州の賭博管理委員会のガイドラインに従って、各テーブルには最大6人のプレイヤー制限とされ、すべてのテーブルにプレキシガラスが設置された。再開が遅れたポーカールームは、現在アリア、ゴールデンナゲット、ザ・オーリンズ、サハラ・ラスベガス、サウスポイント、ザ・ベネチアン、MGMグランド等がオープンしている。

 ウィン・ラスベガスでは、6月29日から、ストリップ地区のIR再開後初となる、ビュッフェ形式での飲食提供を開始している。従来のように個人が自分で食べ物を選ぶのではなく、オンラインで予約し2時間以内に好きなメニューを注文できるシステムを用いて安全性を担保する。ゲストは携帯電話のアプリから注文でき、スピーディーなサービスが可能となった。また、ウィンは、医療従事者、警察官、消防士が対象となる1泊無料宿泊キャンペーンを6月30日まで実施した。

 以上のように再開施設が増える一方で、IR施設での新型コロナウィルス感染者も発生。ラスベガス再開からの1週間で、ベラージオのメイフェアサパークラブ、フラミンゴ、シーザーズのレストランなど、少なくとも4か所で7人の陽性反応が発生し、その一部施設は閉鎖となった。さらに、サハラのノースサイドカフェは、3人の従業員が陽性を示したため閉鎖された。

 

ネバダ州ではマスク着用が義務化、カジノでの安全対策違反を検査

 ネバダ州全体での新型コロナウィルス感染者数は、7月6日時点の新規感染者は491人、感染者累計は22,930人、死亡者は537人である。5月下旬には100人台であった新規感染者が、フェーズ2移行後の6月に急増、7月2日には新規感染が985人にまで達している。入院患者数も6月は増加。しかし、ICUや人工呼吸器での治療が必要な重篤患者の増加は見られていない。

 フェーズ2移行後の感染拡大を受けて、ネバダ州のシソラック州知事は、公共の場でのマスク着用の義務化を発表。この発令は6月25日午後11時59分に発効となり、これを受け、MGM、ウィン、シーザーズのラスベガスの各施設ではフェイスマスクポリシーを更新した。さらに6月29日、シソラック知事はフェーズ2の延長を発表した。7月末まで復旧計画のフェーズ2が維持される。

 マスク着用については、6月4日のカジノ再開時、館内ゲストのマスク着用は「必須」ではなく「奨励」されただけであった。そのため、例えばシーザーズ・パレスでは顧客の80%がマスクを着用していなかったと推定される。その後、6月17日、3回目となる安全衛生方針の更新ポリシーを更新し、テーブルゲームのマスク着用が義務化された。オペレーターは独自に館内ゲストへのマスク着用プロモーションを実施している。

シーザーズではマスク着用の会員を対象に、スロットマシン無料プレイ20ドル(約2,000円)を期間限定で配布

 ネバダ州ゲーミング・コントロール委員会は、6月4日にカジノが再開されて以来、委員会の検査官が7,400件以上のギャンブル施設の検査を行い、111件の健康と安全に関するポリシー違反を発見したと7月1日に発表した。なお、委員会は守秘義務を理由に、違反の詳細や場所を公表していない。

 委員会の執行部チーフのジェームズ・テイラー氏は「緊急指令021の第35項(シソラック州知事の令)で理事会に与えられた権限に基づき、理事会は24時間365日、ゲーミングライセンス取得者が理事会の安全衛生方針を遵守しているかどうかを監視している」とコメント。議長のサンドラ・ダグラス・モーガン氏は、「連邦法、州法、地方法、または健康安全ポリシーに違反した場合、ネバダ州ゲーミング委員会規則5.011の違反となり、違反したライセンシーに対して理事会が懲戒処分を下す可能性がある」と述べた。

  さらに、ネバダ州産業関係局は、より厳格なマスク規制が実施されて以来、調査を実施。ネバダ州労働安全衛生局(OSHA)の職員は法令順守の継続的な取組みをおこなっており、産業関係部のリリースによると、その一環として、ゲーミング施設での調査も実施されている。違反が発見された場合には、書面による通知と自主的な法令順守が求められ、OSHA職員によるフォローアップ訪問がおこなわれる。それでも違反が発見された場合は、警告とペナルティの通知が出される可能性がある。

 従業員の感染対策に関しては、7月6日に、シーザーズ・エンターテインメントとラスベガス・サンズが、フェイスカバー着用が雇用条件であると掲示。シーザーズのトニー・ロディオCEOは 「仕事中にマスクを着用しないことは、解雇の理由になる」と述べた。ウィン・リゾーツは「スタッフの違反はない」とコメントし、MGMリゾーツも自社の従業員に対して改めて新しい健康と安全のプロトコルを喚起する社内キャンペーンをおこなっている。

 このようにオペレーターは各社厳格なガイドラインに従って運営しているが、一方でラスベガスの調理師組合は、危険な労働条件を理由に大手オペレーター相手に訴訟を起こしたと、6月29日に発表した。組合はストリップ地区やダウンタウン地区のホテルやカジノで働く6万人の労働者を代表している。陽性者を出した場合、労働者への適切な警告、保護、隔離がおこなわれていないとし、企業が敷地内の消毒を適切に実施していないと主張している。