【新型コロナのIRへの影響レポート】マカオ 6月30日版 (1/3)

二上葉子

 世界中で新型コロナウィルスの影響を受けて、各国では出入国制限や都市封鎖がなされてきたが、徐々に制限の緩和が始まっている。日本型IRビジネスレポート(JaIR)では、IRがある主要な地域の新型コロナウィルス関連の動向を配信。今回はマカオの最新状況をレポートする。

ウィン・マカオ、MGMマカオなどが並ぶ
 

6月26日まで78日間は感染者ゼロ、感染者の大半はマカオへの帰国者

 マカオ現地の新型コロナウィルス感染者数は、4月9日以降、新規感染者ゼロが78日間続いていたが、6月26日に累計46人目の感染が確認された。感染者はフィリピン・マニラから帰国したマカオ居民で、妻とともにマニラから香港へ国際線を利用、香港からはマカオ政府が在外居民の帰還用に特別運航する高速フェリーを利用していた。マカオ到着後は政府指定ホテルで14日間の隔離検疫中であったため、市中への感染はないと見られる。高速船を使用した濃厚接触者は全員が隔離検疫をおこない、検査は陰性であった。
 
 マカオでの感染者累計46人だが、内訳は輸入性症例が44人、輸入関連性症例が2人。5月19日までに45人が治癒し退院済みで、死亡例はゼロだ。マカオ入国には、2週間の隔離検疫が基本となっているため、マカオ現地の市中感染は完全に抑えられている。

マカオの高速フェリー乗り場
 

6月のGGRは前年比97%減、今年の最低値を記録

 マカオ政府の発表によると、5月のGGR(総ゲーミング収入)は前年同月比93.2%減の17.6億マカオパタカ(約138億円)。6月のGGRは前年同月比で97.0%減の7億1,600万マカオパタカ(約93億円)となり、前月から59.4%減である。6月は、4月GGRの7億5,400万マカオパタカ(約101億円)をさらに下回り、今年に入って最低値となった。

 マカオへの訪問者は4月は11,000人(前年比99.7%減)、5月16,133人(前年比99.5%減)という壊滅的な結果であった。4月のホテルやゲストハウスの平均稼働率は12.9%と過去最低を記録し、5つ星ホテルだけに絞ると、稼働率は6.6%とさらに悪化。統計局によると、5月は、中国本土からの訪問者数は14,793人(前年比99.4%減)で、インバウンド訪問者のうち、16,062人は中国との内陸の検問所を経由して街に入った。空路で到着した訪問者はわずか71人だった。現在も、香港や中国本土との間を結ぶ観光フェリー運行は停止したままだ。

 

マカオのゲーミング業界に人事の動き、オペレーター3社は株式配当無し

 マカオのゲーミング業界では人事に動きがあり、6月11日には、マカオ賭博検査調整局(DICJ)は新局長にアドリアーノ・マルケス・ホー氏が就任すると発表。マカオ科学技術大学出身のホー氏は、司法警察の犯罪捜査官を歴任し、2012年に賭博関連経済犯罪部部長、2014年から6月まで長官室顧問を務めていた。

 各オペレーターの人事にも動きがあり、各社ともウィズコロナ、アフターコロナで難しい舵取りとなるが、経営体制を強化して臨む。MGMチャイナでは、5月29日に2008年から同社を率いたグラント・ボウイ氏のCEO退任が報じられたのち、6月2日に、MGMチャイナが2名の経営トップ交代を発表。新たに、ヒューバート・ワン氏が、MGMチャイナの社長兼最高執行責任者に就任。ケネス・フェング氏が戦略・最高財務責任者に就任した。 

 SJMは、5月26日にスタンレー・ホーが逝去し、パンジー・ホーが後を継いだが、さらに6月11日、ゲーミング・ホスピタリティ部門COOにフランク・マクファデン氏が就任すると発表した。主にグランド・リスボア、ホテル・リスボア、ポンテ 16、ハイアライのカジノを担当する。

 また、6月23日、サンズ・チャイナは、2024年までウィルフレッド・ウォンCEOが続投することが発表された。当初取締役会で承認した任期より1年の延長となる。

 各社の株式配当に関しては、新型コロナウィルスによる財務上の影響に対処するため、マカオのカジノオペレーターの一部、具体的にはメルコ、ウィン・マカオ、サンズ・チャイナは、今年は株の配当を推奨しないことを決定した。一方、MGM チャイナは、5月29日、1株当たり0.083香港ドル(0.01米ドル、1.08円)の最終配当金の支払いを発表。主な受益者は株式の55.95%を所有するアメリカのMGMリゾーツで、MGM リゾーツ社は最終的な配当手続きで約1億7,650万香港ドル(約24億円)を得ることになった。