順次施設が再開するも、ライブエンターテインメントの再開時期は未定
今後のIR施設再開の主なスケジュールだが、シーザーズは、6月5日にはハラーズ・ラスベガスの営業を再開し、ハイローラー展望台(観覧車)もオープン。MGMは、6月11日にエクスカリバーを再開予定だ。また、ウィンの場合は、カジノ再開以前の5月29日に、ネバダ州の緩和フェーズ1の規定に沿い、カジノフロアを横切らずにアクセスできる施設内の5つのレストランを再開していた。シーザーズによると、4日に再開したシーザーズ・パレスとフラミンゴの両施設ではカジノと宿泊施設、ダイニング、屋外プールの利用が可能になったが、ライブエンターテインメント、バー、スパ、ビュッフェ、バレットパーキング(駐車代行)を含むサービスはすぐには再開されないという。
MGMでは、再開したベラージオなどでも施設内の一部レストランはいまだ休業中である。また、チケット制のエンターテイメントの再開時期は未定。CEO兼社長のビル・ホーンバックル氏は、「ホテルのラウンジでは、何らかの形で限定的なエンターテイメントを行うことができるが、今はチケット制のイベントは禁止」であるとしている。シルク・ドゥ・ソレイユもすぐに復活することはないが、「うまくいけば、年末までには戻ってくることができるだろう」という。T-モバイル・アリーナのイベントは2021年まで戻らない可能性を示唆。現在休業中のルクソールでの定期ショーを場合によっては、別の開業中の施設で再開する可能性についても述べた。
長期的な回復はコンベンションが鍵、短期的には抗議デモ激化の影響懸念も
ネバダ州のスティーブ・シソラック州知事はカジノ再開に際し、「ネバダ州は最高の旅行先であり、これからも訪問者を温かく歓迎する場所であり続けるだろう 」とアピールした。再開初日に駆け付けた客は地元客だけでなく、飛行機や車で遠方からカジノ目当てに訪れた客もいたが、長期的な回復には時間を要する。カジノ閉鎖中の4月のラスベガスへの訪問者は、前年比97%減の約11万人で過去最低を記録。ホテルの稼働率はわずか1.7%であった。コンベンションは無開催だったため参加者0人で、ラスベガスの4月の旅客数は96%減というこれ以上ない厳しい状況であった。6月に入ってからは、当初の予想以上に需要があるため訪問者数は増加する見込みだ。
ラスベガス観光局取締役会(LVCVA)とネバダ州ゲーミングコントロールボードは、コンベンション開催が今後の大きな課題であると指摘。サンズとMGMの四半期決算報告書の中で、幹部は長期的なコンベンションの予測が好調であることを示し、LVCVAの社長兼CEOであるスティーブ・ヒルは、「2021年は過去最大のコンベンション予約数を記録する」と述べたが、2020年の残りの期間の開催の見通しは不明である。現在、州知事のガイドラインでは、大規模な集会開催は50人までと制限されている。
コンベンションが開催されるMICE施設自体だけでなく、MICE需要で成り立っていた周辺の店舗も再開の目処が立っておらず、MICE周辺産業も大きな見直しが必要となる。今後のコンベンションの動向が街全体に大きな影響を及ぼす。ネバダ州を代表する財政・経済専門家の一人であるラスベガスのアプライド・アナライシス社のジェレミー・アグエロ氏は、ラスベガス経済全体が回復するには3年かかる可能性を示唆。ラスベガス訪問者の16%はMICEによる客であるとし、回復の遅れを見込んでいる。
また、サントラスト・ロビンソン・ハンフリー社のゲーミングアナリスト、ジョナス氏はコンベンション参加の空路での訪問者が減り、当面は自動車での比較的近いエリアからの観光客が大半を占めるという予想を示した。しかし、「継続的な『抗議デモ』が、この客層を取り戻す助けとはならない」ともコメントした。
ミネアポリスでの死亡事件に対する抗議デモがアメリカ各地で激化しているが、ラスベガスではカジノ再開より3日前の6月1日夜、カジノ・ホテルのサーカス・サーカス近くで抗議デモ隊との衝突により、警官が銃で撃たれる事件が起きた。抗議デモの影響を懸念し、ウィンではアンコールとウィンの施設再開時間を0時1分から10時に変更するという対応をとった。発砲事件後もストリップ大通りでは連日抗議デモがおこなわれている。カジノ再開日の4日は100人未満の規模にとどまったが、市民の間には、新型コロナウィルス感染の危険に加え、デモ隊衝突に対する不安もあるため、激化の状況次第では旅行客回復に影響があると見られる。
<出典サイト>
Las Vegas Review-Journal https://www.reviewjournal.com/
Yogonet https://www.yogonet.com/international/
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