注目を集める長崎IRに参加登録をした5グループ、特徴と戦略は?  (1/2)

JaIR編集委員 玉置泰紀

 長崎県は12日、九州・長崎特定複合観光施設(IR)設置運営事業にかかる事業者の参加登録をした5グループを発表した。登録事業者はこれから、3月1日までに、第一次審査書類を提出し、この審査で5グループから3グループに絞られる。結果発表は3月中旬。第二次審査書類の受付期限は6月まで(予定)となっており、審査結果の公表は8月(予定)で、ここで長崎IRの事業者が決定し、都道府県・政令市から国へのIR区域整備計画の認定申請を、10月1日~2022年4月28日に行う。一次審査は300点満点で、主に運営能力と財務能力のチェックになっている。

 長崎IRの特徴としては、九州地域戦略会議との連携があり、同会議下部組織の九州IR推進プロジェクトチームでの検討を踏まえ、長崎県の中村法道知事から提案された「九州IR推進協議会(仮称)」の発足が同会議全体で承認されており、長崎県が2020年4月に発表した「九州・長崎IR基本構想」では、半径1,500km圏内の人口が10億人を超える立地を活かして、長崎に留まらない九州観光戦略の達成が謳われている。立地的に、中国や韓国に近いアジアのハブとして九州、そして日本全体に波及していく観光拠点としての強みが注目されている。

 今回、IRの各候補地の中でも飛びぬけて多い5グループが手を挙げ、注目が高まってきている長崎IR。参加登録された各グループを見てみよう(以下、五十音順)。

① オシドリ・コンソーシアム
② カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン
③ カレント・グループ
④ NIKI Chyau Fwu(Parkview) Group
⑤ ONE KYUSHU
長崎IRの予定地は、佐世保のハウステンボスと隣接するエリア ©ハウステンボス/J-19501
 

個性も様々な5グループのコンセプトや会社情報をまとめて紹介


【オシドリ・コンソーシアム】

 オシドリ・インターナショナル・デベロップメント合同会社は、香港の総合金融サービス会社オシドリ・インターナショナル・ホールディングス(香港証券取引所上場)を親会社に持つ、長崎県佐世保市の統合型リゾート開発を目的として設立された日本法人。オシドリ・インターナショナル・デベロップメント合同会社の会長兼社長兼CEOのアレハンドロ・イエメンジアン氏は、MGMリゾーツの元社長及びMGMスタジオの元CEOで、IR事業に豊富な経験を有し、IRのデザイン、設計、運営を総合的に行う。

 1月28日には、統合型エンターテイメント・リゾート(IER)の総合開発を世界各地で展開するモヒガン・ゲーミング&エンターテイメント(本社:米国コネチカット州アンカスビル、CEO:マリオ・コントメルコス氏、以下モヒガン)とパートナーシップを締結したことを発表。モヒガンは統合型エンターテイメント・リゾート開発企業。代表施設には米国コネチカット州アンカスビルの「モヒガン・サン」、韓国インチョンの「インスパイア」(工事中で、2023年始めに開業予定)、カナダ・ナイアガラの「カジノ・ナイアガラ」などがある。コネチカット、ニュージャージー、ワシントン、ペンシルバニア、ルイジアナの米国各州と北アジア、カナダ・ナイアガラの世界各地で統合型エンターテイメント・リゾートを所有、開発、運営している。

 会長兼社長兼CEOのイエメンジアン氏は、「オシドリは、アジア最高のIRとして、リゾートをつくるだけではなく、IR事業を通じて、長崎・九州に対する社会的責任を果たすこと、IRを起爆剤として、新しい社会を地元の皆さんと一緒につくることを自らのルールとしている」、「長崎地域の豊かな文化と多様性を強調することを目指し、このプロジェクトが九州全域にポジティブな影響を与えることを期待しています」などの発言をしている。

・コンセプト
これまでの発表の中では、明確な長崎IRのコンセプトは示されていない。オシドリの会長兼社長兼CEOのイエメンジアン氏は「長崎地域の豊かな文化と多様性を強調」することを目指すと発言している。

【カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン(CAIJ)】

 カジノ・オーストリア(CA)は、1934年にオーストリア政府により設立された国営IR事業者で、カジノ・オーストリア・インターナショナル(CAI)は100%子会社。オーストリア政府は34%の株を持っている。

 CAは、多くのカジノやロトくじ、宝くじ、オンラインゲーミングなどを運営しており、子会社CAIは、スイス(ルツェルン)、オーストラリア(ケアンズ)、セルビア(ベオグラード)、ベルギー(ブリュッセル)の4か所でカジノリゾートを運営しており、世界35か国に300か所のカジノプロジェクトを展開している。CAIの日本支社、CAIJの社長は林明夫氏。林氏は、再生医療分野で株式会社TESホールディングスとバイオス株式会社の代表取締役も務めている。

 2020年2月開催の九州でのイベントにて、CAIは、建築家の隈研吾氏との協業を発表した。ハウステンボスの世界観と調和したヨーロッパ型の街並みとともに、”湯治場”を思わせる和風の空間も共存する空間を考えていくとしている。

・コンセプト
スクラップ&ビルドではなくストック&リノベーションの開発を目指すとしており、元々オランダの景色や建物を精密に再現したハウステンボスに作られるIRであることから、候補事業者の中で唯一のヨーロッパの事業者であり、ウィーンやザルツブルグでの実績やオランダでの実績などをもとに、東洋と西洋文化の融合を謳っており、真の「和洋折衷」を目指すとしている。

 
シュロスクレスハイムのカジノ・オーストリアが運営するカジノ・ザルツブルク、クレスハイム宮殿。Matthias Kabel CC BY 2.5