ホテル売却による再編
7月のエルドラド・リゾーツ社とシーザーズ・エンターテインメント社の合併後、シーザーズ・エンターテインメントはストリップ地区の資産を売却すると述べてきたが、10月に入り具体的な動きが始まっている。シーザーズ・エンターテインメントとVICIプロパティーズは、所有するラスベガスの「ハラーズリノ」をCAIインベスティメンツ関連会社に4,150万ドル(約43.8億円)で売却を決めた。この取引は今年1月に発表されていたが、今回の取引の収益は75%をVICI、25%をシーザーズ・エンターテインメントに分配する。同施設は取引後、アパートやオフィススペース、非ゲーミングホテルと複合施設開発に生まれ変わる予定。
続いて、シーザーズは、保有する「バリーズ」のブランドを、ツイン・リバー・ワールドワイド・ホールディングス社に売却。財務条件は開示されていない。業界関係者は、最終的にシーザーズがラスベガスストリップでバリーズのカジノを売却する可能性があると見ている。シーザーズの広報担当者は、今回の取引がストリップ地区の資産売却に結びつく可能性があるかどうかについてコメントを避けたが、同社は「ツイン・リバーが全米でバリーズブランドを強化する取り組みを行うことで、バリーズ・ラスベガスの知名度が上がるだろう」とコメント。取引の一環として、シーザーズはストリップのホテル・カジノでのバリーズブランドの使用を維持する永久ライセンスを持つことになる。
エルドラドとの合併によるシーザーズ資産売却は新型コロナ以前からの規定路線だが、他のリゾートでは新型コロナの影響による売却検討の話も出ている。トロピカーナ・ホテル・アンド・カジノは9月17日に再開となったが、親会社のペン・ナショナル・ゲーミングはリゾートの買い手を探している。旅行需要が回復しないことから、当初予定していた9月1日再開予定から17日へ遅らせていた。他のカジノホテル同様の安全プロトコルで、カジノエリアは床面積の半分営業制限が敷かれ、プールとスパは限定的再開となっている。同施設での大規模な集会、トーナメント、抽選会、パーキング、コンベンション、宴会、ライブエンターテインメントなどは今回の再開に含まれない。なお、トロピカーナ・ラスベガスは、10月15日から828人の労働者を解雇すると発表した。
10月26日のブルームバーグでの報道によると、ラスベガス・サンズが、ラスベガスのベネチアン、パラッツオ、サンズ・エクスポ・コンベンション・センターの売却を模索していることが判明した。価格は合計60億ドル(約6269億円)規模。ラスベガス・サンズは、「極めて初期段階の交渉であり、何も確定していない」としている。売却が実現すれば、ラスベガス・サンズは、ラスベガスで保有するIR施設は無くなり、ビジネスはマカオとシンガポールに集中することとなる。回復の遅れているラスベガスからの脱却というシナリオも現実味を帯び、今後の進展が注視される。
新型ホテルの開業
売却されるホテルもある一方で、新しいホテルの開業や発表が続いている。10月28日に新オープンする「サーカリゾート&カジノ」、2021年1月15日にグランドオープンの「ヴァージン・ホテルズ・ラスベガス」、2021年夏開業の「リゾート・ワールド・ラスベガス」、10月中旬にコンセプトが発表されたばかりの「アタリ・ホテル」。スポーツベッティングやeスポーツをテーマとした、新しいタイプのホテルもあり注目されている。●サーカリゾート&カジノ
10月28日オープンの「サーカ・ラスベガス」は、ダウンタウン地区で40年ぶりの開発施設となる。9月下旬、カジノ施設としてネバダ州ゲーミング管理局からライセンスを認可された。ラスベガスでは初めて21歳以上という年齢による入場制限のあるカジノホテルとなる。グランドオープン1週間前には、「ガレージマハル(車送客サービス)」と呼ばれるライドシェアポイントがドライバーに公開された。
ストリップ地区の北部で最も高い建物となるホテルタワーの運営は12月開始となる見込み。777室の客室を備えたホテルタワーや展望スポット、3層のスタジアムスイム「アクアシアター」には6つのプールが建設される。ここにはスポーツベッティング向けのテレビスタジオが設置され、同時に最大3つの放送が可能となる設計。世界最大級のスポーツブックとして発表されたこの施設には、1,000席の視聴者席が用意され、サーカブランドのフットボール関連イベントも行われる予定だ。
オープンに先駆けマーシャルリテールグループとのコラボとなる2つの商業施設が公開された。商業施設は年中無休24時間営業となる。同ホテルは、メジャーリーグシリーズ期間中に全米で大規模なCMを開始。CMではCEO兼創設者であるデレク・スティーブンス氏が自らナレーションを務め、このプロジェクトのビジョンとラスベガスへの情熱を語り、ラスベガスが常に新しいものを生み出し続けることを称賛する内容となっている。
●ヴァージン・ホテルズ・ラスベガス
JCホスピタリティ社が運営する「ヴァージン・ホテルズ・ラスベガス」は2021年1月15日にグランドオープンされることが発表された。同施設は、以前ハードロックホテル&カジノが所有していたスペースを利用する。新たにモヒガン・ゲーミング&エンターテイメントが運営する6万平方フィート(5574平方メートル)のモヒガン・サン・カジノが入る予定である。ストリップ地区のこの複合施設には、カジノの他、多機能イベント用の芝生付き5エーカー(およそ6,000坪、2万234平方メートル)の砂漠景観のプールオアシス、4,500人を収容するライブや音楽用のエンターテインメントシアター、650人収容のショールーム、12軒の飲食施設が入居する。
●リゾート・ワールド・ラスベガス
ゲンティンのラスベガス初進出となるIR「リゾート・ワールド・ラスベガス」は、2021年夏にラスベガス・ストリップにオープンする予定。同ホテルの特徴は、施設の外壁の巨大LEDスクリーンだ。アメリカで最も大きい LEDスクリーンの1つで、施設オープンに先駆けて、ウェストタワーにある10万平方フィートのLEDスクリーンが、15日に全面的にライトアップされた。同施設には、3つのホテルが含まれ、ヒルトンとの提携で、ヒルトン、コンラッド、および超高級な「クロックフォーズ」ブランドの客室が設置されるという。
10月24日時点の発表では、「私たちは約75%完了しています。そして、来年の夏にオープンする予定です」と、リゾート・ワールド・ラスベガスのスコット・シベラ社長は述べた。続けて、「私たちは少し減速しましたが、止まることはなく、今は完全な勢いに戻っています。今週だけでも、少なくとも約3,500人の建設作業員が現場にいます」とコメントし、シベラ社長は、2021年夏のオープニングに向けてまだ順調に進んでいると語っている。開業日の明確な発表はまだない。
●アタリ・ホテル
GSDグループは、建築・デザイン会社のゲンスラー社との提携で、初めてとなる2つのホテルを、ラスベガスとアリゾナ州フェニックスにオープンする。10月にラスベガスのホテルのコンセプトが発表され、アメリカのビデオゲーム会社として有名なアタリ社をインスパイアしたホテルとなることがわかった。この「アタリ・ホテル」には、eスポーツスタジオ、アタリのゲーム場、会議室やイベントルーム、コワーキングスペース、レストラン、バー、ベーカリー、映画館、ジムが含まれる予定。オープンの日程は今後発表される。
GSDグループのマネージングパートナーであるシェリー・マーフィー氏は、「アタリが残したイノベーションの遺産のように、アタリ・ホテルズはホテルのあらゆる面に仮想現実を取り入れ、ゲストに没入感のあるホスピタリティとゲーム体験を提供します」と述べた。ラスベガスには、敷地内にカジノ施設とeスポーツスタジオが設置される予定。