【新型コロナのIRへの影響レポート】ラスベガス 10月26日版 (2/2)

二上葉子

米国カジノ業界全体では7月にようやく収益増へ

 アメリカカジノ全体では、9月に発表されたアメリカの商業ゲーミングの7月収益は、過去3ヶ月間(4~6月)の合計を上回った。7月収益は前年同月比23.9%減ではあるものの、3ヶ月連続で劇的に改善し、収益は28.3億ドル(約2,983億円)。アメリカ全体では7月中に32軒の商業カジノが部分的に再開し、それでも7月末時点で50軒の商業カジノは閉鎖されたままだった。

 カジノ収益は改善傾向ではあるものの、ホスピタリティ業界全体を見ると停滞が続く。10月には、アメリカ二大政党提携により、アメリカ国内のホスピタリティ業界を支援する法案が提出された。米ゲーミング協会(AGA)の社長兼CEOビル・ミラー氏は、これを支持する声明を発表。今回の法案について「ラスベガスのストリップ地区のような市場で、収益の大部分を占める会議やコンベンション、ゲーミング業界が従業員を維持し、ゲーム以外のビジネスの要素を急成長させることが可能になる」と述べた。

 ネバダ州厚労省(DETR)が発表した統計によると、州全体の経済は新型コロナパンデミックに伴う閉鎖とレイオフからの回復を続けており、雇用の回復傾向が続いている。8月雇用統計(9月発表)によると雇用の推移は4か月連続の増加となったが、、昨年同時期から比較するとレジャー・接客業が15.9%減、その他サービス業が10.8%減となり、IR産業の雇用は依然回復していない。

 

今後のカギは旅客数の回復、大統領選の影響は?

 ラスベガスのマッカラン国際空港のフライト回復が、今後のラスベガス復活のカギを握ると言われているが、クラーク郡局によって10月22日公開されたデータによると、マッカラン国際空港の9月搭乗者数は170万人で、8 月の173万人からはわずかに減少となった。また、2019年9月に430万人の乗客数であったことと比較すると、前年比61%減となった。

 マッカランの最も乗客数が多い航空会社であるサウスウエスト航空の9月は63万4456人、2019年9月の140万人の旅客数から56%減。サウスウエスト航空のマイク・ヴァン・デ・ヴェン最高執行責任者は、「前年比で大幅に減少しているにもかかわらず、ラスベガスはここ数カ月の(全米の路線の中で)明るいスポットの1つだった」とコメントしている。

 例えば、ニューヨーク州は、9月15日にネバダ州を他の5州とともに、新型コロナ旅行勧告リストから解除した。これにより、ネバダ州は、ニューヨーク州間の渡航における14日間検疫が不要となった。主要都市との往来が、安全性を保ちながら増えることが望まれる。

 このような状況下で、マッカラン国際空港では、9月より1,300万ドル(13.7億円)の改修プロジェクトが始動している。具体的には、Cコンコース(最も乗客数の多い、サウスウエスト航空の拠点)の改修工事で、改修は2021年夏に終了する予定。この改修はもともとフライト需要に合わせて対応力を高める目的で予定されていたが、新型コロナの影響でフライトが大幅減便となり、当初の想定とは異なる中での改修となっている。


前年比6割減の利用にとどまるマッカラン国際空港


 11月3日のアメリカ大統領選は最終盤を迎えているが、IRオペレーター企業では、ラスベガス・サンズの会長兼CEOであるシェルドン・アデルソン氏とその妻のミリアム・アデルソン氏は、ドナルド・トランプ大統領の再選を目指す政治行動委員会(PAC ; Political Action Committee)に多額の寄付を行っている。アデルソン夫妻は8月25日から9月25日までの間に3回、それぞれ1,250万ドル(約13億円)ずつ寄付、選挙戦ラストスパートの10月には7,500万ドル(約79億円)を寄付し、政治行動委員会(スーパーPAC)において最大の寄付者となった。アデルソン氏は昨年に比べて総資産はダウンしているが、フォーブス誌の「フォーブス400、2020年、アメリカで最も裕福な人々」で19位にランクインしている。企業としては、ラスベガス・サンズ、ウィン・リゾーツがトランプ氏を支持し、スーパーPACに寄付を行っている。選挙戦の結果は、アメリカのIR企業の国外でのビジネスにまで影響を及ぼす。


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