自民党総裁選の日程が決定、3候補が出馬表明

JaIR編集委員・玉置泰紀

 自民党は2日、安倍晋三総理大臣の後任を選ぶ総裁選挙について、今月8日に告示し、14日に両院議員総会を開いて投開票を行う日程を決めた。また、この日、自民党と立憲民主党が会談し、総裁選挙が14日に行われることを踏まえて、16日に臨時国会を召集し、その日に総理大臣の指名選挙も行うことで合意した。2日の段階で、岸田文雄・自民党政務調査会長、石破茂・元自民党幹事長、菅義偉・官房長官が出馬表明をしているが、IR(統合型リゾート)についても、7月までに出る予定で遅れている基本方針のタイミングなど、次期首相・内閣に大きく影響される。


 

総裁選3候補のIRへのスタンスは

 菅義偉・官房長官は2日の記者会見で、「国難にあって政治の空白は決して許されず、一刻の猶予もない。国民が安心できる生活を1日も早く取り戻すために、なすべき事は何か、熟慮した」として出馬を表明した。菅氏は、特定複合観光施設区域整備推進本部(IR推進本部)の副本部長を、赤羽一嘉・国土交通大臣とともに務めている(本部長=安倍晋三・首相)。菅氏は、衆議院神奈川2区選出の当選8回で、71歳。派閥には属していない。横浜市会議員を二期務め、1996年の衆議院選挙で初当選した。2012年、第2次安倍内閣で官房長官に就任して以来、安倍総理大臣を支えてきた。IR候補地の中では、地元が横浜であることから横浜市の林文子・市長とは近い。また、日本維新の会代表である、大阪市の松井一郎・市長ともパイプが太いと言われている。
 
 当然、2018年に公布されたIR整備法には中心的に関わってきた。今年に入ってからも、1月のテレビ番組では、秋元容疑者の汚職事件に関し、「日本が世界の人々に来ていただく観光先進国を目指す上では(IRは)必要だ。今回の事件とは明らかに次元が違う」と話しており、7月下旬の会見でも「IRは我が国が観光先進国になるのに極めて重要な取り組み」と繰り返している。
 
 岸田文雄・自民党政務調査会長は1日、「国民のため、国家のため、私のすべてをかけて戦いに臨んでいきたい」と出馬を表明。岸田氏は、衆議院広島1区選出の当選9回で、63歳。自民党の第4派閥、岸田派の会長を務めている。IRについては、自民党政調会長として2018年、IR整備法の政治決定部分を了承した。
 
 岸田氏は、2019年9月、シンガポールのリゾート・ワールド・セントーサを視察。産経新聞などによると、記者団に対して、「日本のIRの議論はカジノに費やされている。多くの家族連れが世界中から集まっている姿をみることでイメージは変わる」と語り、「日本に合ったIRを作っていかなければならない」と述べた。また、懸念される依存症対策については「与党として後押しすることで国民の不安を解消することが大事だ」と強調した。
 
 石破茂・元自民党幹事長は1日、「国民の納得と共感のもとに政策を実行することが課せられた責任であり、総力を挙げて積極果敢に取り組みたい」と出馬を表明。石破氏は、衆議院鳥取1区選出の当選11回で、63歳。自民党の第6派閥、石破派の会長を務めている。IRについては、会見で、「カジノの是非よりも、コロナ禍において、実現可能なのかということは冷静に分析する必要がある」としつつも、「幹事長時代、シンガポールの施設をかなり長い時間かけて視察した。不正対策や安全性の対策を徹底していた。カジノを否定するつもりはない」と話した。
 
 石破氏は1月、朝日新聞などによると、IR汚職事件について、記者団に対し「報じられているような問題の解明が急がれる」とし、「IRの意義をもう一度確認し、国民に広くご理解をいただく。審議を通じ、明らかにすべきことは明らかにしていかなければならない」と話している。
 
 3候補とも、基本はIR整備法は進めていくとみられるが、過去の言動には多少の違いもあり、首相指名を受け、内閣を組閣する中で、今後の対応が見えてくるだろう。


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