安倍首相辞任表明でIRに大きな影響

JaIR編集部

 安倍晋三首相は28日、記者会見で辞任の意向を表明した。2012年12月に第2次安倍政権が発足、連続の在任日数が24日で2,799日となり、歴代1位となっていた。2018年7月27日に特定複合観光施設区域整備法(IR整備法)を公布するなど、統合型リゾート(IR)の日本での実現を大きく進めてきた政府の首班の辞任は、現在、新型コロナウィルス感染症の影響で停滞しているIRのスケジュールにも大きな影響があるとみられる。


内閣広報室の中継より
 

政府の基本方針策定公布の時期に注目、大きく遅れるか

 8月26日に国会閉会中審査として開催された衆議院内閣委員会で、IRについて、「基本方針、区域整備計画の認定申請時期を、いつまでに出す」という事は決まっていないと政府は答えており、一貫してスケジュールは出していない。2021年1月4日~7月30日に予定されている、自治体からの特定複合観光施設区域の認定申請の受付期間について変更は考えていないとしている。しかし、安倍首相が辞任を表明したことから、次期首相が決まり、組閣するまでは、IRに限らず、多くの分野で停滞が予想される。自民党は、臨時役員会で、安倍首相の後任を選ぶ総裁選挙の在り方や日程について、二階幹事長に一任することになった。来月1日に開く総務会で正式に決定する方向で調整を進めているが、次期内閣の目途は立っていない。

 IR候補地として名乗りを上げている横浜市の林文子市長は、8月20日の記者会見で、IRの進捗について、以下のように答え、8月に予定されていたIRの実施方針の公表を延期することを表明した。

「国との話し合いについて、私が要請に行くことはしていませんが、IRについて国の基本方針も出されていない中で、赤羽国土交通大臣も情報収集をして、地方自治体と話合いをしていると仰っていますが、我々も担当の方とは、密に話合いをしています」
「手を挙げられた大阪市、長崎県、和歌山県はRFPの書類提出期限まで進んでいましたので、大阪市はご承知のとおり半年延期をしました。長崎市は、4月末に予定していましたが延期をしました。それから、和歌山県はRFPの書類提出期限を10月に延期したように、それぞれが延期をはっきりされています」
「今、横浜市である程度参加したいという意思がある方と、ずっと話合いをしていましたが、ご承知のようにラスベガス・サンズ社のように、今回はなしにするということはまだない状態です。そのような環境の中にあって、私自身も横浜市、神奈川県下の感染状況を考えても、そのような側面もあり、我々(横浜市)のように立候補した都市としての事情もあり、それから、国もかなり深く考えていると思います」
「そのようなことを含めて、やはり、まず8月(の公表)は無理であると判断しました。今後(については)、国はまだ発表されていませんので、はっきりした方針が出ていませんが、それを伺い、私達の計画を練り直していかなくてはならないと(思います)。国も私達の考え方であるとか、世界的な経済状況を見て、色々と検討をしているのではないかと思っています。国からはっきりした説明はなく、基本方針をお出しにならない。私達も実施方針が出せませんということだけではありません」

 IRの開業時期についても、林市長は、以下のように、2年ぐらいは遅らせたいと話している。
「例えば、大阪市は非常に先行して手を挙げられていて、積極的に進められていました。大阪市の松井市長はやはり2年ぐらい遅らせたいと発言されていた中で、私自身が収集して聞いている情報では、やはり予定どおりの開業が難しい、2年程度開業が遅れるのではないかとの感触を持っています」

 大阪府の吉村洋文知事は8月24日、「新型コロナウイルス感染症のため、IRに関する作業は休止状態。オンラインによるコミュニケーションでは困難な部分があり、前回の提出期限延長発表後に議論は進んでいない。ただし、府市、MGMとも前向きな意欲は維持している」と従来の意見を繰り返した。大阪府・大阪市IR推進局が6月23日、提案審査書類(RFP)の提出期限について、「現時点において国の基本方針が策定されていない」ことと、「新型コロナウイルス感染症の影響を見極めていく必要があること」等を踏まえて、「当面の間延長する」ことを発表したが、その後、予定は発表されていない。


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