メルコやギャラクシー第2四半期決算発表、カジノ見本市G2Eアジアは来年に延期
IVS制度再開という明るいニュースがあった一方で、IRオペレーターや関連会社の第2四半期決算は、検疫緩和以前の結果であるため、厳しい発表が続いた。メルコ・リゾーツは、第2四半期の収益発表で、パンデミック影響により第2四半期3億6,800万ドル(約389億円)の損失を計上したことを報告。2020年第2四半期の総営業収入は、約1億7590万ドル(約185億円)で、前年同期の14億6,000万ドル(約1,543億円)から88%減少した。同社はリリースにて、「営業収入の減少は、主に新型コロナウィルスの流行により2020年第2四半期のインバウンド観光は大幅に減少、全てのゲーミング事業および非ゲーミング事業の業績が軟化したことによるもの」とコメントした。厳しい状況は続く一方で、CEOのローレンス・ホー氏は、日本のライセンスを取得するため「揺るぎないコミットメント」を持っていると述べた。
ギャラクシー・エンターテインメント・グループ(GEG) は、2020年第2四半期と上半期の決算発表を行い、第2四半期純収益は前年比91%減の11億5,300万香港ドル(約159億円)、 調整後のEBITDAは、2020年第2四半期はマイナス13億7,000万香港ドル(約189億円)で、前年同時期は43億3200万香港ドル(約596億円)だった。グループ上半期の純売上高は62億2,300万香港ドル(約857億円)で、前年比76%減と大幅に落ち込んだ。決算後、ルイ・チェ・ウー会長は、日本でのIR計画を継続することにも触れた。
マカオのカジノホテル「ポンテ16」に出資するサクセス・ユニバース・グループは、上半期の連結損失が、約1億2,000万香港ドル(約16.4億円)から1億5,000万香港ドル(約20.5億円)の範囲で計上される見込みを発表した。前年上半期は4億8,700万香港ドル(約67億円)の連結利益を計上していた。上半期の予想損失は、主に「2020年はじめの新型コロナウィルス発生により、ポンテ16事業体に関連する『相当な損失』をグループが負担したことによるもの」と、香港証券取引所への報告書で述べた。ポンテ16のカジノは、SJMホールディングス(SJM)のサブライセンスで運営している。
マカオ初のテーマパーク「マカオ・フィッシャーマンズ・ワーフ」を運営し、2つのゲーミング施設と3つのホテルを併設するマカオ・レジェンド・デベロップメント・リミテッドも、新型コロナウィルスの影響で上期の損失が拡大したと報告。2020年上半期の連結決算で、前年同期の約10億7,500万香港ドル(約147億円)の損失に対し、約49億香港ドル(約670億円)の損失を計上すると予想した。上半期の損失が358%近く増えたのは、パンデミック対策としてマカオ当局が課した「社会的遠距離措置と旅行制限」による「大幅な減収」が主な原因であると述べた。マカオのゲーミング施設はSJMのサブライセンスで運営しており、同社はマカオ以外に、東南アジアのラオスでサヴァンレジェンドホテルとカジノを運営している。
カジノゲームメーカーでカジノ運営会社でもある香港企業パラダイス・エンターテイメントは、2020年上半期は、1億900万香港ドル(約14.8億円)の損失で、製品売上高89%減と発表した。同社はマカオでは2つのサテライトカジノを運営しており、マカオのギャラクシーエンターテイメント・ライセンス下のカジノワルド、SJM ホールディングス・ライセンス下のカジノカムペックパラダイスを管理。しかし同社のカジノワルドの契約は2月29日に満了し、同社は更新も延長も要求しておらず、同社は2019年通期決算時に、今年2月末でのカジノワルド運営を停止したと記述した。
サンシティ・グループ・ホールディングスは、2020年上半期は前年同期の12.5億元(約192億円)の損失に対し、約1.08億元(1,560万米ドル。約16.6億円)の損失を計上すると予想していると述べた。同社は8月28日に決算発表を予定している。
また、新型コロナウィルス感染拡大が、マカオのカジノライセンスを巡る訴訟にも影響を及ぼしている。ラスベガス・サンズ(LVS)は、マカオのカジノライセンスを巡る訴訟の裁判延期を要求していたが、マカオ司法裁判所によって2021年への延期が認められた。この訴訟は、台湾の起業家マーシャル・ハオ・シーシェン氏が率いるアジアン・アメリカン・エンターテイメント(AAEC)による、2002年にLVSがマカオのカジノライセンスを落札した際の契約違反疑惑に起因する損害賠償請求で、数十億米ドル規模の訴訟である。もともとは2020年9月16日に裁判開始予定だったが、LVSにより2021年6月16日への延期が要求され、マカオ司法裁判所は延期に合意した。
MGMチャイナは、8月6日にグラント・ボウイ氏がCEOを退任し、経営トップが交代。また、非常勤取締役として、親会社のMGMリゾーツの政府担当上級副社長アイシャ・カンナ氏が就任した。
新しい話題としては、日本のゲーム機器企業セガサミークリエイションが、新しいジャックポット・スロットマシン「ボルケーノ・リンク」シリーズをマカオで初導入することを発表した。黒崎正弘常務取締役は、マカオでの「フロアプレゼンス」の向上に伴い、同社が「革新を続け、新しい機能やゲームテーマを業界に提供し続けることが重要」であると述べた。セガサミークリエイションは、日本のセガサミーホールディングスの一部門であり、パラダイス社とともに韓国のカジノリゾート「パラダイスシティ」にも出資している。
マカオでの大規模イベントは延期の動きが見られる。例年開催されているカジノ業界の見本市グローバルゲーミングエキスポ(G2E) Asiaは2020年の開催を延期し、来年5月25〜27日にヴェネチアンマカオのコタイエキスポで開催すると発表した。主催者リードエキシビションズ、中国の最高執行責任者であるジョセフィン・リー氏は、「今年、お客様、出展者、地方自治体と協議して、これらのプログラムを安全に実施するためのあらゆる選択肢を検討しましたが、最終的には2021年に延期することが最善の策であると判断しました」と伝えた。
2020年上期GDP大幅減も、他に比べて市場回復は早いとの予測
マカオ市の統計・国勢調査局(DSEC)によると、マカオの第2四半期のゲーミングサービスおよびその他の観光サービスの輸出は、前年同期比でそれぞれ97.1%、93.9%減少し、マカオの国内総生産(GDP)が67.8%減となった。また、マカオのゲーミング部門の正社員の6月平均収入は、ボーナスを除いて23,200マカオパタカ(約30万円)で前年比5.5%減。6月のディーラーの平均収益は前年同月比7.6%減の19,270マカオパタカ(約25万円)となった。第2四半期末のマカオゲーミング業界の正社員数は57,459人で、前年同期比381人の減、ディーラー数は前年同期比131人増加したものの、前四半期比で115人減少となった。以上のようにマカオのゲーミング業界全体は2020年前半、非常に厳しい結果となったが、それでもグローバルの動きで見れば、今後中国本土からの観光客獲得が予想されるため、他の地域に比べて回復が早いと見られている。格付け企業のフィッチは、2020年のラスベガス、マカオ、シンガポールの市場全体のゲーム収入はそれぞれ約60%、70%、65%減少すると予測。同社は、「マカオはフィーダー市場(主要供給市場)に近いことから回復が強く、ラスベガスとシンガポールはフィーダー市場の航空便依存度が高いことから回復が遅くなる」と予想していると述べた。
フィッチはまた、長期発行デフォルト格付けで、ラスベガスサンズに「BBB-」、MGMリゾーツ・インターナショナルとMGMチャイナに「BB-」をつけた。パンデミックが「国際および国内の観光を妨げ続けている」とした上で、グローバルなカジノオペレーターとして、「より困難な回復軌道」を乗り切るための「強力な流動性」があると述べている。
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