<IR用語集・基礎知識> マレーシア

JaIR編集部

タイから南に伸びるマレー半島と、南シナ海を挟んで東に浮かぶボルネオ島の一部(ブルネイ王国、インドネシアと領土を分け合う)から成る。人口は約3,200万人(2017年・マレーシア統計局データ)、面積は日本の約9割弱にあたる33万㎢。イギリスからの独立、シンガポールとの分離などを経て、1965年に現在のマレーシアが形成されて以降、豊かな天然資源の活用、電機・電子産業を中核とした製造業の促進などによって、着実に経済成長率を伸ばす。
 
同国は主にマレー系、中国系、インド系から成る多民族国家だが、カジノに対する考え方は、この多民族国家という特性の影響を受けている。国民の61%がイスラム教徒なので、政府としては基本的に、カジノは推進していない。しかしながら、残りの非イスラム教徒にとっては教義に反するものではないため、一部のギャンブル行為は「一般賭博施設法」(1953年制定)の基に容認されている。21歳以上の非イスラム教徒および外国人は、政府が指定した施設でのみ、入場無料でカジノを楽しむことができる。
 
2020年現在、国内でライセンスが与えられているのは1施設で、政府としては今後も新たな付与は行わない方針だ。その唯一の大型IRが、首都クアラルンプール(羽田空港から約7時間半)から車で約1時間の山あいの高原にある「リゾーツ・ワールド・ゲンティン(ゲンティンハイランド)」(1971年開業)。カジノ以外のホテル、ショッピングモール、ゴルフ場などのエリアは、イスラム教徒でも入場可能。マレーシアの年間平均気温は約27℃で、一年中常夏の国として知られるが、同施設は標高1,700mに位置するため、冷涼な気温の中で快適に過ごせる。
 
運営会社は「ゲンティン・マレーシア」で、ゲンティングループとしてはシンガポール(セントーサ)、フィリピン(マニラ)、アメリカ(ニューヨーク)などでも大型IRを運営する。マレーシアの南側に位置するシンガポールとは、2本の橋で結ばれていて往来が簡単なため、自国でなくシンガポールの施設を訪れるマレーシア人も多い。マレーシアでは、ライセンスは四半期毎に更新することになっているが、実際には数十年にわたり継続、今日に至るまでゲンティンの独占状態となっている。

ゲンティンハイランドには今後、21世紀フォックス(2019年にウォルト・ディズニー・カンパニーが買収)と提携した屋外テーマパークもオープン予定。なお、同計画は、2018年に意見の相違による訴訟問題に発展したが(ゲンティン対21世紀フォックス&ウォルト・ディズニー・カンパニー)、2019年に和解契約を交わし、再起動となっている。